第48話

第三十八話 開かずのロッカー・続
2
2026/03/29 03:53 更新
【次の日】
教室に入ってきて、1番目に声を上げたのは、星野だった。
星野
星野
ねぇ…なんで、?
木村
木村
嘘…
田中
田中
これ…昨日の…
山川
山川
な、なんであるん?!
源
まじ気持ち悪いって…
教室の端。
普段は何もないはずの場所に、
見覚えのある、古びたロッカーがぽつんと、
まるで当たり前のように佇んでいた。
中田
中田
は…?どういうこと?
六村
六村
誰か持ってきた?
長谷川
長谷川
え…わざわざそんなことする?
田中
田中
ちょっともう…朝からやめてよ…
星野
星野
ていうか…他の人達は気にならないのかな…?
教室にいる他の生徒達は、
特に気にしている様子がなかった。

それが余計に気持ち悪かった。
木村
木村
みんな…見えてるよね…?
六村
六村
そこから確認しなあかんのかよ
山川
山川
いや見えてるやろ!!流石に!
中田
中田
じゃあなんで誰も何も言わないの?
中田
中田
おかしくない?絶対
田中
田中
たしかにそうよね、
田中
田中
誰か一人ぐらい『何あれ?』ってなってもよくない?
木村
木村
か、確認してみよ?
木村
木村
ねぇ山田!
山田
山田
何?
木村
木村
ねえ、あのロッカー、見える?
山田
山田
何?ロッカー?
山田
山田
見えるけど
木村
木村
え、おかしいと思わない?!
田中
田中
そうよ!いきなり現れたのよ?!
山田
山田
え…
山田
山田
いきなりも何もずっとそこにあるでしょ
中田
中田
え…
山川
山川
はぁ、?
源
どういうこと…?
山田
山田
変なの…
長谷川
長谷川
ねぇまじでどういうこと?
六村
六村
いやわからん
六村
六村
実は気づいてなかっただけで本当はずっとあのロッカーがここにあったとか?
星野
星野
やめてよ怖いこと言うの!
木村
木村
でも明らかにやばいよね…
田中
田中
そうよね…
一同が騒然としている中、授業開始のチャイムが鳴る。






キーンコーンカーンコーン…







教師に、いつも通り先生が入ってくる。
他のクラスメイト同様、特になにも反応することなく、
いつも通り授業を始める。
数学の先生
〜〜〜が〜〜〜であるからして…
星野
星野
先生もいつも通りだよね…(小声)
田中
田中
ね、ねぇ…(小声)
田中
田中
ロッカー、ちょっと開いてきてない…?(小声)
中田
中田
え…そんなわけ…
中田
中田
…………ほんとだ…(小声)
山川
山川
おいやめろよそういう事言うの…(小声)
源
もう帰りたいお…(小声)
六村
六村
まだ1時間目やで






休み時間。


みんな自然と、
ロッカーの前に集まっていた。


昨日よりも、なんだか嫌な雰囲気をまとったロッカー。

扉の隙間が、妙に黒く見える。
六村
六村
これどうするん
田中
田中
どうするって…
山川
山川
見んかったことにしようや…
星野
星野
そうだよ、そうしよ!
長谷川
長谷川
それが一番良いと思う




木村
木村
…開ける?




全員が、一斉に木村を見る。



星野
星野
え…?
木村
木村
もしかしたら、中になにかあるかも…
中田
中田
昨日と同じじゃないの?
田中
田中
そうよ、もう見たわよ…?
木村
木村
でも中身、変わってるかも…
六村
六村
そんなことある?
星野
星野
き、きむたく…やめとこ?ね?
木村
木村
大丈夫だよ
木村
木村
それに、このままにしておくのも嫌だし…





少しの間、沈黙が続いた。








中田
中田
…ねぇ、
中田
中田
昨日の名札、まだ入ってるのかな…
田中
田中
それ確認するの、だいぶ勇気いるわよ…
星野
星野
見たほうがいいのかな…?
山川
山川
気になるけどそんなん見たくないって…
源
それな






また少し沈黙が続いた。






木村
木村
………開けるね
星野
星野
え、開けるの…?
山川
山川
いやいやいややめとけって
木村
木村
大丈夫だよ
六村
六村
信用できないランキング1位の"大丈夫"やな
木村
木村
ソンナコトナイヨ


木村が、ロッカーの取っ手に手をかける。 




その瞬間。
田中
田中
待って…
田中の声で、全員が止まった。


中田
中田
どうしたの?
田中
田中
それ…
田中
田中
鍵ついてない?
全員
え?


昨日は、鍵なんてついていなかった。

少なくとも、誰も見ていなかった。


でも今、取っ手には確かに、
小さな銀色の鍵がぶら下がっていた。



しかも。
中田
中田
ねぇ…
中田
中田
その鍵についてるキーホルダー、私のやつ…



鍵についていたのは、中田の好きなキャラクターが映っているアクリルキーホルダーだった。


いつも中田のカバンについているキーホルダーと同じ。







いや、同じじゃなくて、それそのものだった。
中田
中田
え…これ、昨日までカバンに…
中田が慌てて自身のカバンを確認する。


カバンを見るなり、顔色が変わった。
中田
中田
………ない
田中
田中
え…?
山川
山川
ちょ、まじやめて??
源
気持ち悪…
六村
六村
回収されてんやん
長谷川
長谷川
その言い方やめて
田中
田中
ねえもうほんとに無理…
木村
木村
と、とりあえず開けるよ…?
星野
星野
ちょ、ちょっと待って…
星野の制止をよそに、木村が鍵を開ける。


カチッ。


やけに軽い音がした。

そして、ゆっくり扉を開ける。
   

中に入っていたものは、昨日とは少し違っていた。


名札やノートはそのまま。


でもその手前に、
新しいものがいくつか増えていた。
田中
田中
これ私のハンカチ…
星野
星野
こ、これ私のヘアゴム!
山川
山川
これ俺の鏡やん…
源
これ俺のくし…
六村
六村
あ、イヤホン片方こんなとこにあった
長谷川
長谷川
え、そのシャーペン…
みんなの私物が、手前に置かれていた。
田中
田中
昨日から増えてる…
木村
木村
うん…
山川
山川
これ誰が入れたん…?
六村
六村
ロッカーが回収したんかな
源
すぐそういう事言う!
長谷川
長谷川
そもそも誰か、なの?
田中
田中
鳥肌たってきた…




ロッカーの奥には、昨日のノートもあった。

木村が、ゆっくりそれを手に取る。




星野
星野
見るの…?
木村
木村
………うん



ページをめくる。

昨日見たときは、みんなの名前が書いていた。


でも今日は、
名前の横に何かが書き足されていた。
星野
星野
え…
山川
山川
なに…?
木村
木村
これ…日付…?
一人ひとりの名前の横に、
それぞれ違う日付が書かれていた。
源
何この日付…
中田
中田
………私の、いつ?



木村が黙る。


ノートを見つめたまま、答えない。
中田
中田
……ねえ
中田
中田
日付、何日
木村
木村
…………
中田
中田
キムタク
木村
木村
…………








木村
木村
………今日
全員
え?

中田の名前の横に書かれていた日付は、
"今日の日付"だった。



しかも、その横には、
薄く丸が付いていた。
中田
中田
は…?
田中
田中
いやいやいや
田中
田中
ちょっと待ってよ…
星野
星野
何それ…
山川
山川
どういうこと…?
六村
六村
今日って何?
長谷川
長谷川
何の日付?




その時。





『返して』






全員が、一斉に顔を上げた。
木村
木村
…え?
星野
星野
今の…誰…?
源
…聞こえた?
山川
山川
ばっちり聞こえたって…
六村
六村
ロッカーの中からやん
田中
田中
しかもこの声…
その声は、昨日帰り際に聞こえた、





中田の声によく似た、あの声だった。
中田
中田
…っ


中田が一歩後ずさる。

その瞬間だった。



バタンッ!!!!




ロッカーの扉が、勢いよく閉まった。


木村の手が挟まりかけて、
全員が短く悲鳴を上げる。
木村
木村
っ…、!
星野
星野
キムタク!!
木村
木村
だ、大丈夫…
田中
田中
は、挟まってない?
山川
山川
なんで急に閉まったん?!
源
誰も触ってないよな?!
六村
六村
勝手に閉まったんやろ
田中
田中
もう嫌よ!なんなのこれ!
星野
星野
…中田?




中田の顔色は、真っ青だった。


目線が、ロッカーに釘付けになっている。


その日の放課後。






中田がいなくなった。



最初は、ただ先に帰っただけだと思っていた。



でも、



カバンは教室に残っていて、
スマホも机の上に置いたままだった。


先生に聞いても、
担任の先生
担任の先生
中田?今日は来てないでしょ?
としか言われなかった。



田中
田中
おかしい…
星野
星野
いや、きてたよね…?
山川
山川
朝からずっと一緒やったやん……
源
先生何いってんの…?
六村
六村
え、
長谷川
長谷川
な、何?
六村が、教卓のうえにあった出席表を指さした。

そこには、今日の出欠が書かれていた。


中田の名前の所だけ、
赤いペンでこう書かれていた。


























『転校』












田中
田中
は…?
星野
星野
いや今日も普通にいたじゃん…
山川
山川
そんな急に…
田中
田中
しかも本人から何も聞いてないじゃない!
長谷川
長谷川
どういうこと、?
六村
六村
六村
六村
もっと意味分からんのがある




そう言って、六村はゆっくりと後ろを指さした。

教室の後ろ。


あのロッカーの扉についていた古い名札は、

中田の名前から変わっていた。


そこに書いてあったのは、






 

 



























『木村』という名前だった。

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