拝殿には、疲れた顔をするあなたが一人。
さんざん連れ回されてクタクタになっていた。
とても疲れた。
でもそれと同じくらい__
ちゃんと笑った。
今、………………。
爆笑するタガタさんと怒りをぶつけるイミゴの様子は、どこか面白くて、安心する。
あったばかりなのにおかしいな。
数日が経過した頃、
あなたは少しづつここの環境に慣れてきていた。
心做しか、穏やかな表情になっていた。
ザッ、ザッ、ザッ
太陽が真上の時間、
それまで姿が見えなかったシロとクロを捜す。
参道、手水舎
あなたやタガタと協力して探しても、
姿は一向に現れなかった。
鳥居をくぐり抜け、
こちらに走ってくる少女は顔を青ざめていた。
駆け寄ってきた少女の後ろの方には、
鳥居の足元に、大きなナニカが立っていた。
反射であなたの手首を掴んで逃げる
血なまこで俺達を追いかける化物は甲高く笑う。
狂気じみた女性の声
鋭い爪の手を伸ばされれば俺達の背をかすめた。
息を切らし、楼門をくぐったその時__
何かと入れ違いになる感覚がした。
というより、すり抜けた感覚。
瞬間的に後ろを振り返ると、
赤黒い透けた巨体で、何かがあの化物に立ち向かっている。
あのとき感じた温かさと同じ………………
あれは……………っ
意識を引き戻され、私達は拝殿に駆け込んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!