朝、リビングの空気は最初からおかしかった。
低く、でもはっきりとした亮平の声。
それに返す蓮の声もいつもより硬い。
ガチャ、とマグカップかテーブルに置かれる音がやけに響いた。
その頃、廊下の奥。
制服に着替えながら、康二が顔を上げる。
照が短く答える。
一番最初にリビングへ向かったのは、辰哉だった。
扉を開けた瞬間、言葉が喉で止まった。
亮平と蓮が向かい合って立っていた。
テーブルの上には作りかけの朝ごはん。
トーストは焼き途中、スクランブルエッグもまだ半分。
辰哉が声をかけようとした、その瞬間。
亮平がきっぱりと言った。
その声にいつもの柔らかさはなかった。
辰哉は何も言えず一歩下がる。
蓮が言う。
亮平の眉がきつく寄る。
空気が張り詰める。
その時。
まいがパジャマのままリビングに立っていた。
後ろには眠そうな大介。
まいの不安そうな目が2人を見上げる。
亮平ははっとして膝をついた。
でも、蓮は目を逸らした。
その仕草に亮平の表情が一瞬だけ曇る。
その言葉に蓮の眉がぴくっと動いた。
次々と家族が集まってくる。
高校の制服を着た翔太と涼太。
全員が異常な空気を感じ取っていた。
涼太恐る恐る声を出す。
亮平はそう言ったが声は震えていた。
蓮が呼ぶ。
亮平は一瞬黙り込み、そして静かに言った。
その言葉にリビングが凍る。
声が大きくなる。
大介がぎゅっと翔太の服を掴む。
目からぽろっと涙が落ちた。
まいともつられて目を潤ませる。
翔太がすっと立ち上がり2人の前に出た。
優しく、でもはっきり言う。
その言葉に一瞬だけ間が生まれる。
でも…
亮平が背を向けた。
蓮もそう言って椅子を引く。
亮平の声は冷たかった。
蓮も同じ温度で返す。
その瞬間。
家族の中にはっきりと線が引かれた。
誰も動けなかった。
涼太は止めたかった。
でも、いつ声を出せばいいか分からなかった。
そう思った自分を少し責めながら。
辰哉は黙って2人の背中を見つめていた。
普段、怒鳴ることもない2人の本気の衝突。
まいと大介は涙を拭けずに立ち尽くしていた。
翔太がもう一度言う。
その言葉が救いになるかどうかはわからなかった。
こうして1日目の朝から完全に壊れた。
朝しか書いてないんですけど長文なんで一旦きります。




















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!