俺はあんまり思ってることが顔に出にくいらしい。
そんなことを言われたの後、最後に言われるのは
そんなものばっかだった。
けどこんな言葉は言われ慣れていた。
そして、小学2年生の7月頃……だったと思う。
俺は幼稚園から小学2年生までの間に3回は引っ越しをしてきた。
もう忘れているだけでもっと引っ越してたかもしれない。
親の仕事の都合上、仕方がないのはわかっていたが、
それが原因で友達が一向にできなかった。
どうせまたすぐに引っ越す。そう自分でも諦めてる節があった。
新しい学校では友達をもう作らない。
作ったところでどうせ別れることになるから。
幼いながらに硬くいじっぱりな決意を胸に
自分の席と言われた場所に向かって、席についた。
もう、作らない。
もう、友達なんか。
席に着いた。横から視線を感じる。
なんかめっちゃ見てくる。
隣の席に座っている子がめっちゃ見てくる。
何度か口を開こうとしては、閉じたりを繰り返している。
こちらから声をかけないと一生続きそうだったので、
一応声をかけてみた。
そんだけジロジロ見られたら、誰だってわかるだろ。
というツッコミをグッと飲み込んだ。
俺がなにも答えずにいると、
今度はちゃんとこの女の子から話し出した。
名前はあなたの下の名前ひらがな、っていうらしい。
予想もしていなかった話題にびっくりしていると
あなたの下の名前ひらがなは俺の手首を指さして
俺の友達を作らないっていう決意は、今思えばこの時、
あなたに話しかけてもらった時点で
粉々に消えていったような気がする。
夏休み…あまりいい思い出はない。
普通どこかに出かけたり遊びにいったりするんだろうけど
いつも飼い猫と遊んでばっかの長い休みだった。
ただ、今年はなんか違う。
隣で既にウッキウキで宿題に手をつけだしてるあなたの下の名前ひらがな。
あなたの下の名前ひらがなと話すことがしばらくできなくなることを
ものすごく悲しくなったのを覚えている。
あなたの下の名前ひらがなは家族とどこかに出かけたり
友達と遊んだりするんだろうか。
聞くんじゃなかった、と思い口を閉じると
お前は俺に嬉しいことを言ってくれたんだ。
そのたった一言がきっかけで、
ウェン以外にもアイツらと仲良くなった。
俺がよそ者すぎるだろ。
そう思うこともあったけど、皆何も気にしてなさそうで。
というより何も考えてなさそうなだった。
いつ引っ越すことになるか分からない。
いつこいつらと別れることになるか分からない。
そう思っていたのに、
みんなで遊ぶのも話すのも楽しくて、
いつの間にかそんなこと考えなくなっていった。
そして、何気ない当たり前の日常。になった瞬間
何者かが嘲笑うかのような事態が起きた。
それは、あなたと初めて話してから
約1年半が経った時のこと。
進級してクラスは変わったものの同じクラス。
今では隣ではなくなったあなたを
後ろから見てみるけれど、
何とも言えなさそうな、よくわからん顔をしている。
ずっと、俺がどっかいなくなる側だった。
だから会おうと思えば会いに行ける、みたいな……
だから次第に自分が引っ越すかもなんてことを
心配しなくなっていたのだとようやく理解する。
でも相手が引っ越したらどうだ?
新しい場所で新しい友達をつくって、
俺のことなんて忘れるかもしれない。
なんなら、他の奴らよりも付き合いが短い俺が、、
忘れられるかもなんていうのは
全然有り得るんじゃないか……?
それから、今でも記憶に残るくらいの
過去最高と言われる寒波がやってきて
身体も心も冷えきった。
冬が通り過ぎるように
あなたは俺、達の前から居なくなった。
いや、ちがうか。
最後に会ったのはバレンタインデーの日。
たまたまその日が日曜で、学校はなかった。
あなたはもう引っ越したもんだと思ってたから
家でただぼーっとしてた気がする。
でも最後に会いに来てくれた。わざわざ家にまで来て。
みんなのこと忘れない!って書いたチョコを持ってきて。
その時お前は、落し物をしたのを気づいているのだろうか。
チョコレートの紙袋に入った
“小柳ロウ”とは違う人の名前が書かれた相手への
『好き』と書かれていたメッセージカードと
その時にようやく気づいた俺の初恋を。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。