知っているのかもしれない。
知らないのかもしれない。
私にはそれがわからない。
私は、何も思い出せない。
あまりに嘯くような調子でそう言うものだから、この言葉を信じでいいのかもわからなくなる。
その響きがなんだか苦しかった。
そういってしまったのは、私も前世がどうだのいっていたからかもしれない。
確証がないのに、こんなの口にしたって意味がない。
そもそも前世なんて曖昧なものあるわけがない。
理性では全てを否定しているのに、感情が否定したくないと騒いでいる。
わかりたくて、わかりたくない。
カルド様は少し驚いた顔をなさる
あれ?私そんな変なこと言ったっけ?
この考えが変わっているとは昔誰かからも言われた。
誰だっけ?
覚えてないしまぁいいか。
なんで急に口説き始めたんだろうこの人。
怖いな・・・・。
いや、口説いてるんじゃないかも・・・?
口説いてるんじゃないとしても急に褒めてくるのも意味わからんわ。
人を褒めるのが趣味だったりするんかな。
あ〜可能性はある。
我ながらバカなことを考えているなと思った。
考えたところでなんの意味もないような気がする。
単純に言って時間の無駄。
それくらいわかってる。
私の手を取って、浜辺を歩き出すカルド様を見ていた時、潮風の匂いが鼻をくすぐった。
懐かしい。海の匂いだった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!