机に並べられた数々の書類
全て、編入のための書類だった
経歴や内申書
たくさんの書類には既に所々文字が書かれていた
どうやら、学校側が少し記入してくださったようだった
残りの空欄には、私が自分で記入しなければいけない
私は、用意されていたペンを取り、文字を書き連ねていった
私、とある1つの欄に、ペンを止めた
まだ幼かった私は、実の母親の名前すら覚えていなかった
父親が家にいることは少なく、記憶は少なかった
そんな私には、家族について記入することができなかった
他の空欄は、迷うことなく記入する事が出来、書類記入は、1つの欄を除いて全て終了した
鞄を肩にかけ、私は教室を出た。
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一人暮らしをするようになってから、私はかなり財布の紐がかたくなった
調査をしている人は、私に椅子を用意してくださり、私は園椅子に座った
掛けていた鞄を椅子に立てかけるように置くと、机に提示されたパンフレットを読んだ
差し出された写真には、赤い布の上に無数に並べられたネジがあった
わたしはそれを言われた通りに10秒間眺め、すぐに右の写真へと目をやった
変化のあった、具体的に言うと、ネジが消えていた箇所に丸を付け、調査員の方に渡した
その声の直後、パネルに連続的に数字が現れた
私はそれらを、ただ眺めていた
やがて数字が出なくなったので、ここで終了だと分かった
指定された紙に答えを書き、それも調査員の方に渡した
そして、私は何も気にすることなく、米を買ったあとに家へ帰った
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!