教室のセカイ
私は教室のセカイで、一歌に基礎からギターの
弾き方を教えてもらっていた。
一歌の言う通りに指を押さえ、コードを鳴らす。
心地の良い和音が教室に響いた。
志歩が私達のところに歩み寄りながら声をかけてきた。
自分のギターを見つめながらそう言う。
笑顔で一歌はそう応えた。
咲希も穂波も嬉しそうに微笑む。
みんなにそう返して、私は再びギターに視線を落とす。
そう言って、一歌達は楽器の準備に取り掛かる。
ここに居たら邪魔になるかと思い、
私は曲のフレーズを口ずさみながら、教室を出た。
屋上
ガチャッ
重い屋上の扉を思いっきり開けた。
そこには一面に広がる星空と、心地の良い夜風が
吹く幻想的な風景が広がっていた。
静まり返った屋上に、私の足音が響いている。
私は屋上のフェンスの前に立ち、イヤホンを片耳に
付けて、曲を再生した。
今回、一歌達と演奏するのは「needLe」。
このセカイが生まれたと同時にできた、
一歌達の想いが詰まった曲。
サビの爽やかな曲調と、前向きな歌詞が心に響いて、
すっかりお気に入りの曲になっていた。
曲を流しながら、運指を確認する。
でも前よりは、かなり弾けるようになってきた。
イヤホンから流れるメロディを口ずさむ。
ふいに、背後から誰かの声が聞こえた。
そう、そこにはリンちゃんとレンくんが立っていた。
困惑する頭を整理しながら、思考を巡らせる。
おそらく、ミクちゃん達と同じで、このセカイの
バーチャル・シンガーといったところだろう。
他のセカイにもリンちゃん達がいますなんて
口が裂けても言えない。
レンくんがそう尋ねた瞬間。
ガシャン!
屋上の扉が勢いよく開いた。
屋上に来たのは、咲希だった。
リンちゃんは私に無邪気な笑顔を向ける。
照れながらもそう返す。
ギターとスマホを手に、屋上の入り口へ向かう。
咲希がいたずらな笑みを浮かべながら、
レンくん達に手招きをしながら私の横を歩く。
咲希の後を追うように走ってくるリンちゃん。
朗らかな表情を浮かべて、後に着いてくるレンくん。
そんな私達の声は、澄んだ夜空に溶けていった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。