明日、殺される。
村の人たちは、本当にあたしを殺すだろうから。
…そう言われて、おとなしく殺されるやつが、どこにいるのだろう?
嘘だと信じたかった。
でも、いつまでも現実から目を背けたらダメだから。
逃げていては、何も始まらないから。
あたしは、みんなと一緒にこの村を出ようと思う。
見切りを、つけなければ。
馬鹿みたいにすがっていても仕方がない。
荷物なんて無いにも等しいから、いつでも行ける。
みんなは、もちろんとあたしの手を取ってくれた。
騒がしい、周りの声で目が覚める。
父が母を怒鳴りつけていた。
いつものことか。
とため息をつく。
でも、それも今日が最後。
どうせ殺すつもりなんだから、いなくなっても変わらないでしょ、なんて思う。
父が『昼過ぎになったら裏山に来い』と言っていた気がするが、よく覚えていない。
興味なかったし、どうでもよかった。
あたしは足早にいつもの山へと入っていった。
あたしの周りに来た水の様子が少し変だ。
いつもと違い、ソワソワしている。
おかしいと思い、なにがあったのか聞いてみた。
〈逃げて、早く〉
〈殺されちゃうよ!〉
〈死なないで!早く身を隠して〉
〈こっち!こっち!〉
〈走って!わたくし達の隠れ家まで〉
そう訴えた。
あたしは言われるがままに走り出した。
みんなの言っていた隠れ家はそう遠くない場所にある。
息を潜めて、時間が過ぎるのを待っていた時、父に裏山に来いと言われていたのを思い出した。
その時の違和感を、たぶん一生忘れないと思う。
とりあえず、外に出る。
出た先にあった光景。
父が横にいた。
右手に、剣。
左手に、みんな_水の妖精の死体を持って。
父が…いや、父親だった人が、剣を振り下ろす。
父親だった人は、村でそこそこ剣が強いと言われていた。
あぁ、でも…。
ポツポツと雨が降り出した。
でも、普通の雨じゃない。
あたしが作った酸性度の高い雨。
降れたらどうなるんだろうね。
おとーさん?
父だった人が苦しんでいても、なにも思わない。
父が、父だったものの塊になってから、あたしは能力を解除した。
そのまま、村の方に戻った。
村の人達は突然降ってきた酸性雨に戸惑っていた。
何人かは死んでいて、その中に母もいた。
けど、その人達はみんなあたし達を殺してきた人達。
でも、その後が不思議だった。
父と母が死んだからずっとご飯はないと思っていた。
結論から言うとあたしはお腹もすかせないし、殴れることもない。
村の人はいつも気まずそうな顔をしていたのに、だんだん活気があふれるようになった。
あれ以来山には行っていない。
行けば、ただ流れていく何も無い時間が消えてしまいそうで、怖かったから。
今更、行っておけばよかったなんて思っても、遅いよね…。
ごめんね、___。
あたしの、せいで…。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。