第80話

こんな俺やって、できることあんねん
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2025/09/25 09:41 更新
金城碧海side


祥生を呼び出した翔也が、すごい焦ってリビングに戻ってきた。


過呼吸を起こしかけてる翔也を見て、みんなが翔也に駆け寄った。
鶴房汐恩
どした?大丈夫?
木全翔也
祥生、が……っ
鶴房汐恩
ゆっくりでええから、落ち着いて
木全翔也
……祥生、出て行っちゃった
……は?


蓮くんが戻ってきてやっとひと段落ついたんに……。
與那城奨
どういうこと?何があったか教えてくれる?
木全翔也
……っぅ
鶴房汐恩
ちょっと怖いな、一旦座って、落ち着いて
みんなからの視線が集まることで話せなくなる翔也。


そういうの、苦手なんやろうな。


汐恩が一旦座らせて呼吸を落ち着ける。


今日は外出て疲れもあるやろうし、多少長引くかもしれんけど。
木全翔也
ふぅぅ……ごめん
鶴房汐恩
大丈夫大丈夫、翔也のペースでええから話してくれん?
木全翔也
祥生宛てに、手紙みたいなの来てて
木全翔也
見せたら、顔真っ青にして、飛び出して行っちゃって……
みんなで顔を見合わせる。


蓮くんが戻ってきたタイミングで、そんなことあるんかな。


……ってことは、そこまでしてでも逃げ出したかったってことで。


まだ祥生はトラウマから抜け出せとらんし。


嫌な記憶もまだ新しいもんで。


また前の精神状態に戻る可能性やって、十分にあり得る。
豆原一成
探しに行ってきます
與那城奨
いや、暗いし危な……
豆原一成
なに言ってるんすか
豆原一成
祥生くんの命かかってますよ?
豆の目が本気やった。


……もしまたどこかで自殺を図っていたら。


いくら蓮くんを助けて疲れてるとはいえ、黙って待つ理由はない。


でも、そんなにすぐ外に出られる気はせん。
鶴房汐恩
俺も行く
河野純喜
俺も、景瑚と
與那城奨
蓮、留守番できる?
川尻蓮
……ひとり?
白岩瑠姫
俺も待ちます、碧海は?どうする?
瑠姫くんに手を握られる。


……正直、迷った。


行ってやりたい気持ちはある。


どっかで助けられるかもしれんし。


でも、もしなんにもしてやれん上に俺が余計な迷惑かけたらどうしようって。


外は怖い。


ましてやもう暗くなって危ないことが増えとるわけやから。
白岩瑠姫
無理して今決めなくていいよ
川西拓実
じゃあ、俺は碧海が決めたら行くか決めます
川西拓実
碧海が行くなら、一緒に行こ
そういう細かい気遣いが、どうしようもなくありがたかった。


全部受け入れてくれるみんなが、ここにいる。


瑠姫くんと蓮くんは迎えには行けへんくても、待っとる。


蓮くんにあんなこと言った祥生やけど、祥生にも逃げたい現実がどっかにある。


みんなそういうもんちょっとずつ抱えて、なんとか命を繋いで生きとるんや。
みんなが探しに行っている間、なんの連絡もないことにそわそわしていた。


蓮くんもずっとスマホ握って、瑠姫くんの顔も険しい。


このままここにいたら……祥生に、何もしてやれへんのかな。


ドラマ観よ、アニメ観よって話しかけてくれる祥生の笑顔を思い出す。


俺がこんなにコミュニケーション下手くそでも、祥生は何にも嫌な顔せん。


不審がることも、遠ざけることもなく、ただ一緒に居てくれる。


祥生の言葉に、何回幸せにしてもらったんやろう。


なんも恩返しせんかったら、どこで祥生に恩返しすればええんやろう。


祥生になんかせな……。


祥生に、嫌われたくない。


焦りもあって、拓実くんの手を引っ張った。
川西拓実
ん?どした?探し行きたい?
拓実くんの言葉に、手にぐっと力を込める。
川西拓実
……ほんまに?ほんまに行きたいん?
川西拓実
怖いけど無理して行こうとかやない?
金城碧海
……っ
怖い。


確かに、怖いけど……。


それでも行かなあかんって思うんや。


どこかから祥生が呼んできとるような気がしたんや。


だから、拓実くんの目を見つめた。


人と顔合わせるんは苦手やけど。


そんなの関係なくなるほど、俺の心が強く訴えるんや。
川西拓実
わかった、一緒に行こう
拓実くんも一緒にいてくれる。


じゃあ、危ないことなんてきっとない。


ただの可能性に怯えて、目の前の恐怖に怯える祥生を放っておくことなんてできへん。


祥生、待ってて。


助けたるから。


一人やないから、頑張れるから。


こんな俺やって、できることあんねん。



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