第70話

来なかった高級車
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2026/02/22 21:00 更新
家の角を曲がる。

私は、そっと足を止めた。
あなた
……
まず見るのは、家じゃない。

その手前。

道路脇。

電柱の影。

曲がり角の向こう。

黒塗りの高級車が停まってないかどうか。

じーーーっ。

……ない。

右も、左も、ない。

エンジン音も、黒服も、サングラスもいない。
あなた
……ふぅぅぅ……
その場でしゃがみ込む。

よかった。

ほんとによかった。

太宰さんの「家の前楽しみにしといてね〜」が脳内で再生される。

楽しみにできるわけないでしょ。

心臓に悪い。

もう一回だけ確認する。

道路。

静か。

ご近所さんの洗濯物が揺れてるだけ。
あなた
……来ないじゃん
ぽつり。

疑ってごめんなさい、とは言わない。

だってちょっと怖かったし。

でも、まあ。

結果オーライ。

玄関のドアを開ける。

いつもの匂い。

いつもの音。

靴を脱いで、廊下を歩く。

変わらない。

なにも。
あなた
……はぁ
やっと肩の力が抜ける。

飛行機は飛ばなかったし、

温泉は行けなかったけど、

それより何より。

“何も起きなかった”。

それが一番ありがたい。

スマホを見る。

特に新着なし。

太宰さんからも連絡はない。

……まあ、ないよね。

なんだったんだろう、今日。

空港閉鎖。

霧みたいな天気予報。

高級車かもしれないっていう謎の恐怖。

全部、少しずつ変。

でも。

今は静かだ。

窓の外を見る。

夜の横浜。

普通。
あなた
……今日はもう寝よ
考えても分からないことは、寝るに限る。

部屋に入って、布団に潜り込む。

天井を見上げる。

静か。

あんなに焦ってたのが嘘みたい。

目を閉じる。

すぐに、意識が沈んでいく。

窓の外。

ほんのわずかに。

白いものが、流れ始めていることに。

私は、気づかなかった。
少なくてごめんなさい💦

更新頻度戻せるように頑張ります🙇‍♀️

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