家の角を曲がる。
私は、そっと足を止めた。
まず見るのは、家じゃない。
その手前。
道路脇。
電柱の影。
曲がり角の向こう。
黒塗りの高級車が停まってないかどうか。
じーーーっ。
……ない。
右も、左も、ない。
エンジン音も、黒服も、サングラスもいない。
その場でしゃがみ込む。
よかった。
ほんとによかった。
太宰さんの「家の前楽しみにしといてね〜」が脳内で再生される。
楽しみにできるわけないでしょ。
心臓に悪い。
もう一回だけ確認する。
道路。
静か。
ご近所さんの洗濯物が揺れてるだけ。
ぽつり。
疑ってごめんなさい、とは言わない。
だってちょっと怖かったし。
でも、まあ。
結果オーライ。
玄関のドアを開ける。
いつもの匂い。
いつもの音。
靴を脱いで、廊下を歩く。
変わらない。
なにも。
やっと肩の力が抜ける。
飛行機は飛ばなかったし、
温泉は行けなかったけど、
それより何より。
“何も起きなかった”。
それが一番ありがたい。
スマホを見る。
特に新着なし。
太宰さんからも連絡はない。
……まあ、ないよね。
なんだったんだろう、今日。
空港閉鎖。
霧みたいな天気予報。
高級車かもしれないっていう謎の恐怖。
全部、少しずつ変。
でも。
今は静かだ。
窓の外を見る。
夜の横浜。
普通。
考えても分からないことは、寝るに限る。
部屋に入って、布団に潜り込む。
天井を見上げる。
静か。
あんなに焦ってたのが嘘みたい。
目を閉じる。
すぐに、意識が沈んでいく。
窓の外。
ほんのわずかに。
白いものが、流れ始めていることに。
私は、気づかなかった。
少なくてごめんなさい💦
更新頻度戻せるように頑張ります🙇♀️












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。