覚悟を決めたノブが、小声で問に声を掛ける。
ノブの意図を理解した問は、すぐに小さく首を振った。
だが、そんなことで揺らぐノブではない。
問は不服そうに逡巡していたが、一瞬の迷いが勝敗を左右することをよく分かっていた。
それゆえ、彼はすぐに決断する。
ノブは頷く。
穏やかな笑みに、覚悟を乗せて。
刹那、2人の間に光の筋が顕現し、2人の目が若草色に光った。
次の瞬間、ノブの姿が消え、突如《体力吸収》の特殊能力者の目の前に現れる。
《体力吸収》の特殊能力者は、何も手を出せないうちにノブに蹴り飛ばされてしまう。
彼が飛ばされた壁は砕け、破片は粉となって宙を舞った。
それを見届けたノブの視界がぐらりと揺れる。
その隙を、Catastropheたちが狙っていた。
直井が咄嗟に特殊能力を発動する。
発動された異能力者は、自身が放った異能力で自分を攻撃し、倒れ伏した。
直後、直井も反動で倒れる。
乾がすぐに人間の姿に戻り、直井を支えた。
それから直井を抱き上げ、問とノブのもとに運ぶ。
ノブたちの攻撃を機に、様々なところで戦闘が始まった。
少し前の戦闘で、両者とも《無効化》の異能力は使えなくなっている。
Catastropheの攻撃を高松の《テレポート》を利用して敵に食らわせ返し、こうちゃんの《幻影》で敵を混乱させている間に須貝が素手で敵を殴り倒す。
双子の方は言が敵を《拘束》で無力化し、問が《透明化》で近づいてから攻撃するなど、完璧な連携を発揮していた。
この調子なら勝てる
伊沢がそう思ったときだった。
ほとんどが床に倒れ伏しているCatastropheメンバーを踏み越え、《催眠》の特殊能力者が姿を現した。
《催眠》の特殊能力者がつまらなそうに指を向けると、Catastropheと戦っていた須貝、高松、志賀、山上、こうちゃん、林、乾、ノブ、直井、問、言が一斉に、声をあげるとなく地面に倒れ込む。
思わず声をあげそうになった伊沢の口を、田村が素早く塞いだ。
小声で田村に諭され、伊沢は小さく頷く。
少しずつ、確かに近づいてくる足音。
伊沢は息を殺し、自らの心音が聴こえてくるのを感じながら「その時」を待つしかなかった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!