― 勇斗の実家 ―
インターホンを押す直前。
あなたの下の名前
「……緊張する」
勇斗
「大丈夫」
あなたの下の名前
「勇斗の“大丈夫”は信用ならない」
勇斗
「なんでだよ」
あなたの下の名前
「この前も“緊張してない”って言って手汗すごかった」
勇斗
「……うるさい」
ピンポーン。
ドアが勢いよく開く。
母
「勇斗ーーー!!!」
勇斗
「うわっ」
母
「ほんとに連れてきたのね!?」
あなたの下の名前は慌てて頭を下げる。
あなたの下の名前
「は、はじめまして。本日はお時間ありがとうございます」
母
「やだぁぁ可愛い!!!」
勇斗
「母さん落ち着け」
奥から父が出てくる。
父
「おお……」
一瞬の間。
父
「本当に来てくれたんだね」
あなたの下の名前
「はい。よろしくお願いします」
母は目をキラキラさせながら言う。
母
「うち男三人なのよ!?勇斗と弟二人!」
母
「初めての女の子なの!」
勇斗
「物みたいに言うな」
母
「だって嬉しいのよ!」
弟①
「兄ちゃんが結婚とか信じられない」
弟②
「ねーちゃんって呼んでいい?」
勇斗
「早い」
あなたの下の名前は思わず笑う。
あなたの下の名前
「呼びたいなら……どうぞ」
母
「優しい……」
父
「勇斗にはもったいないな」
勇斗
「ちょっと」
母
「いつプロポーズしたの?」
勇斗
「記念日」
母
「ちゃんと考えてたのね」
父は静かに頷く。
父
「勇斗」
勇斗
「はい」
父
「守る覚悟はあるな?」
勇斗
「あります」
即答。
父は少し微笑む。
父
「なら安心だ」
母
「ほんとにありがとうね」
あなたの下の名前
「こちらこそ、温かく迎えてくださってありがとうございます」
母
「もう娘ができたみたい!」
勇斗
「気が早い」
笑い声に包まれる。
――
― あなたの下の名前の実家 ―
車の中。
勇斗
「……こっちのほうが緊張する」
あなたの下の名前
「なんで」
勇斗
「お父さん怖いって言ってた」
あなたの下の名前
「普通だよ」
勇斗
「その“普通”が怖い」
家の前に立つ。
あなたの下の名前
「大丈夫?」
勇斗
「……うん」
ピンポーン。
ドアを開けたのは母。
母
「あら」
あなたの下の名前
「ただいま」
母
「いらっしゃい」
穏やかな声。
しかし奥から、低い声。
父
「来たか」
勇斗の背筋が伸びる。
勇斗
「はじめまして。本日はお時間ありがとうございます」
深く頭を下げる。
父はしばらく黙って見つめる。
沈黙が長い。
あなたの下の名前
「お父さん……」
父
「座りなさい」
リビングへ。
重い空気。
母
「お茶どうぞ」
勇斗
「ありがとうございます」
父
「単刀直入に聞こう」
勇斗
「はい」
父
「娘を幸せにできるのか」
あなたの下の名前
「お父さん…」
勇斗は一瞬だけ息を吸う。
勇斗
「できます」
父
「根拠は」
勇斗
「覚悟があります」
父
「覚悟だけで結婚はできない」
勇斗
「分かっています」
勇斗は真っ直ぐ父を見る。
勇斗
「でも、どんなことがあっても隣を離れません」
父は目を細める。
父
「口では何とでも言える」
勇斗
「証明します」
母が優しく言う。
母
「あなた、少しは優しくしてあげて」
父
「黙ってなさい」
あなたの下の名前は勇斗の手をぎゅっと握る。
父はその様子を見る。
父
「……娘は昔から強がりだ」
あなたの下の名前
「ちょっと」
父
「弱いくせに隠す」
勇斗は小さく頷く。
勇斗
「知っています」
父
「それでも一緒にいると言うのか」
勇斗
「はい」
迷いがない。
父はしばらく沈黙し、深く息を吐く。
父
「……娘をよろしく頼む」
あなたの下の名前
「お父さん…」
勇斗は深く頭を下げる。
勇斗
「必ず幸せにします」
母
「よかったわね」
あなたの下の名前の目に涙が浮かぶ。
父
「泣くな、笑」
あなたの下の名前
「泣いてない」
父
「強がるな」
勇斗はそっと言う。
勇斗
「大丈夫。俺がいます」
父はその言葉を聞き、静かに頷く。
父
「頼んだぞ」
重かった空気が、少しだけ緩む。
母
「今日はごちそうにしましょう」
あなたの下の名前
「ありがとう」
勇斗は小さく息を吐く。
あなたの下の名前
「緊張した?」
勇斗
「死ぬかと思った」
あなたの下の名前
「大げさ」
勇斗
「でも、ちゃんと認めてもらえた」
あなたの下の名前
「うん」
勇斗
「これで正式だな」
あなたの下の名前
「うん」
二人は目を合わせる。
家族の前で、改めて実感する。
これからは、二人だけじゃない。
家族になるということ。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。