私とテヒョンが海辺に着いたのは
人の多い賑やかな時間だった。
延々と広がる砂浜
透き通る青い海に、私は感嘆の声を上げた。
周りを見渡すと、たくさんの人が
サーフボードを持って、波に向かっていく
さっぱりした夏服に着替えたテヒョンは
背丈と同じくらいのサーフボードを支えながら
私のそばに立った。
慣れた様子で大きなサーフボードを
持ち上げたテヒョンは、私を連れて
海に向かった。
ビーチに向かうまでに
ウィンドサーフィンについては調べてきた
つもりだったけど、
思っていたよりも大きなサーフボードや
果てのない海を実際に目の前にして、
思わず及び腰になってしまった。
私は突然聞こえてきた声の方向へ
振り返った。
そこには自分の身長より
大きなサーフボードを引きずり
海から上がってくる男の子の姿があった。
男の子の隣にいるコーチは
「 彼には才能がある 」
と笑顔で褒めていた。
砂浜で待っていた母親も
私たちに気がついたようで
男の子を連れてこちらにやって来た。
強引に連れてこられた男の子
「 イヒョンくん 」 は
小さな声で抗議して、
オンマに頭を軽く叩かれていた。
申し訳なさそうな母親の手から脱れた
イヒョンくんはなぜそんなに怒るのかと
不服そうな顔をしている。
ムキになってるのがなんだか可愛くて
私は少しからかうように返事した。
テヒョンはあっという間に
サーフボードを組み立てると、呆然とする
イヒョンくんに頷いた。
その泰然とした様子は
さっきまでとはまるで別人みたいだった。
まさか、
子供と張り合ってる?ㅎ
私と男の子のオンマは目を丸くして
見つめ合った。
テヒョンはサーフボードに乗り、
フィンを高く立てた
海風を受けながら、
自在にサーフボードを操り、波を捕まえて
進んでいく
そして、
あっという間に青い波の最高点に
飛び上がった。
流れるように向きを変え
テヒョンは空中で体を回転させる。
空を横切ったサーフボードは
綺麗な半月を描きながら再び
波の頂点に戻って行った。
「 バックカット 」 の意味を
聞く余裕もないくらい
私は波に乗るテヒョンの姿に
目を奪われていた。
視線がぶつかるだけで、
純粋にサーフィンを楽しむ彼の気持ちが
伝わってきた。
素晴らしいサーフィンを見て、
自分もやってみたいという気持ちが
むくむく沸いてきた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。