プレゼン当日の朝、悠真は早めにオフィスに到着していた。資料の最終チェックを終え、鏡でネクタイを直す自分に、思わず苦笑する。
(……何だよこれ。デート前みてぇじゃん。)
そんな自分を認めるのが悔しい。だが城崎の「期待してる」という言葉が、胸の奥で静かに熱を灯していた。
出発の時間、二人は社用車に乗り込む。車内は静かで、エンジン音だけが響く。窓から差し込む朝の光が、城崎の横顔を照らした。
「緊張してるのか?」
「……まぁ、少しは。」
「大丈夫だ。お前の資料はよくできてる。胸を張れ。」
その一言に、心臓が跳ねる。視線を逸らした悠真は、窓の外に赤く色づき始めた街路樹を見つめた。
プレゼンは無事に終了した。顧客の反応も上々で、最後に握手を交わした城崎の瞳は、誇らしげに光っていた。
帰りの車内、夕日が街を赤く染める中、二人は無言だった。だが、沈黙は不思議と心地よい。やがて城崎がぽつりと呟く。
「……よくやったな。」
「……あ、ありがとうございます。」
夕焼けに照らされた横顔は、あの日非常階段で見た寂しげな姿とも違う。静かで、そしてどこか優しい。
(……やっぱり、この人のこと……)
胸の奥に芽生えた予感が、赤く染まる夕空のように、静かに広がっていった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。