週末前の金曜日、営業部は珍しく穏やかな空気に包まれていた。プロジェクトの資料も出揃い、全員が少しだけ緩んだ表情をしている。だが悠真の胸の内は、相変わらず落ち着かなかった。
(……課長、最近、なんか距離がある……)
昼休み、藤原たちと食堂へ向かう途中、窓際に立つ城崎の姿が目に入る。背中は真っ直ぐで、凛としているのに、どこか寂しげに見えた。その横顔に無意識に足が止まる。
「悠真?」
後ろから声をかけられ、慌てて歩き出す。胸の奥がきゅっと痛んだ。
午後、城崎に呼ばれて会議室に入ると、彼は静かに資料を差し出した。
「……よくやってるな。」
「えっ……」
不意にかけられた優しい言葉に、胸が熱くなる。だが次の瞬間、城崎は視線を逸らした。
「……今度のプレゼン、藤原と一緒に行ってこい。」
「……え……課長は?」
「俺は別件だ。」
短い返事。悠真は唇を噛みしめた。すれ違う心が、また遠ざかる。
帰宅途中、夜風に当たりながら悠真は小さく息を吐いた。
(……どうして、こんなに苦しいんだろう……)
一方その頃、城崎もまた、ひとりオフィスに残っていた。机に肘をつき、掌で目を覆う。
(……距離を置く方がいいと思ったのに……こんなに会いたくなるなんて……)
二人の心は、互いを想いながら、まだ迷いの中にあった。






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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!