魔法局では、モナクがオーターの自室で待っていた。
することがなく、人も来ない為部屋の真ん中で跳ねている。
外では、ドタバタと足音が聞こえていた。
オーターがいない分、仕事は部下達に回る。死に物狂いで消化していた。
こんなに暇なら、オーターに遊んでもらっていた方がまだ良い、と思ってしまうようなレベルで暇である。
そんな感じで過ごすこと二時間。
モナクは突然、自分の中に電流のような何かが流れる感覚を味わった。
この感覚は……モナクは、記憶を辿る。
主人の身が危ない時に起こる、ある種のサインのようなものだ、と思い出した。
それならば、今すぐあなたの元へ駆けつけなければならない。
モナクはそう思い、窓の方へ近寄る。
しかし、窓は全て閉まっていた。
オーターが閉めていったのだ。
警戒心が強いのは良いことだが、今のモナクにとっては邪魔でしかない。
部屋の入り口の方も見てみるが、もちろん開いていなかった。
モナクは、声を上げて、部屋の前を通った人に開けてもらおう、と考える。
しかし、すぐに駄目だと諦めた。
そもそもモナク語はオーターとあなた以外には通じない。
他の神覚者とも会って、会話をしようとしたが、誰も通じなかったのだ。
それに、変に音を立てると不審者がいると騒がれかねない。
騒がれる分にはいいのだが、オーターに連絡されると困る。絶対に怒られる。
彼奴にがやがや言われるのは、意地でも避けたい。
そもそも、オーターと居るのにピンチ、ってどういうことだ。
おい神覚者、しっかりしろ。
心の中で、そう愚痴を言う。
窓をもう一度見る。
モナクが体当たりをすればガラスが割れそうかを見ているのだ。
悩んでいる暇はない。
かなり大きな音を立てるが、あなたの危機だと思えば何とかなる。
どうせ部屋に入る事は不可能なのだから大丈夫だ。
オーターに何か言われたら、あなたを危機に晒したお前が悪い、とでも言っておこう。
モナクは、勢いよくガラスに当たる。
それを数回やると、簡単にガラスは割れた。
こんなんでいいのか、と思いながらも、あなたの気配を辿る。
すると、道の真ん中で突っ立っているオーターを見つけた。
ドスの効いた、低い声がした。
悲鳴を上げようとするが、口を塞がれているので声にはならない。
何処から声が出ているのかも分からず、あなたは怯えた。
久しぶりの感覚だ。
村で虐められていた時に聞いたような口調。
昔は何とも思わなかったのに、オーターとの生活に慣れてしまった今では恐怖しか浮かばない。
どうすればいい、という言葉からして、誰かに頼まれてやっていることが伺えた。
つまり、自分は何者かに狙われている、ということ……
まず思いつくのはそれだった。
だが、オーターからは、魔法のことは外部には言っていないし、言ってはいけないと教えられている。
だから、目の前の人達が知っているはずがない。
簡単に人を殺せることを知っている。
つまり、あの事件のことも、魔法のことも知っているようだった。
何でこういう時に限って杖を持っていないのか……
簡単な魔法、それも鍵を開けるだけ、みたいなものしかないが、杖をぶん投げるくらいは出来たはずだ。
自我が何のことかはよく分からない。
だが、暴力や薬、魔法など物騒な言葉からして、自分が何をされるのかは分かった。
また足音がする。
それは段々と大きくなった。さらに近づいてきていることが分かる。
あなたは目を瞑った。元々目は隠されていて見えなかったが、反射的にそうなったのだ。
バリンッ
その時、何かが割れる音がした。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!