静かな海の中で見つけた。真っ暗な色をした花を。
「誰か落としちゃったのかなぁ?」
「わかんない…取り敢えず拾っておこうか」
人魚であるわたしの唯一の女友達、えむ。えむは常に元気で。わたしもついつい笑顔になってしまっている。
そんな彼女はわたしと同じ人形ではなくクラゲ、という魚のようだ。
前に「人型なのは珍しいんだって。そのせいか友達とかなかなかできなかったの。だから寧々ちゃんに出会えて嬉しい!」と抱きつかれた記憶がある。
そんなわたしたちが暮らす海の中。そこはお世辞でもいいところとは言えないような場所だ。
例えば、鋭いフックについた餌に釣られ命を落としたり。ゴミや温度の差で個の場所から出ていったものも居た。
わたしも生活する場所も中々見つからないため、薄暗い洞窟で暮らしている。
唯一のメリットといったら、わたしの知らない沢山のものが落ちていること。
そういえば突然、えむが捨てられた本を拾ってきたことがあった。
その中に映る絵の人々はみな足が生えていて、海の中ではない地上の建物で暮らしていた。
その日から、なんとなく思うようになった。
「人間に会いたい」
そう考えてからは常に上を見上げるようになった。時には海から顔を出し辺りを見渡したりもした。
でも、そんなことを続けていてもこんな場所では人間に会えるわけもなく。
もう諦めてしまおうかと思った時、誰かの声が聞こえた。
「…おい、お前人魚か?」
「え、」
黒のフードを深く被った少年。彼は紛れもなく人間で、手にあの時見つけた花を持っていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。