宵は眉間に皺を寄せて、スマホの地図を見ながら言った。
画面には赤く囲まれた山道と、そこにポツンと浮かぶ“✕”のマーク。
そう言ったのは楓。好奇心旺盛で、怖い話大好き。
口ではビビってる風だけど、目はキラッキラしてる。
小さくそう呟いたのは透子。彼女は昔から霊感が強く、時々“見えてる”ことがある。
この日も朝からずっと様子がおかしかった。
楓がふと横を見ると、春はトンネルの入口に背を向け、真顔で壁の苔をじーっと見つめていた。
宵がすかさずツッコむ。けど春はどこ吹く風で、
結局決心をしたのか、立ち入り禁止の柵を越えてトンネルに足を踏み入れた。
中は想像以上に暗くて、空気がぬるく湿っている。
壁にはびっしりと謎の落書きがあり、地面には割れた石と……なぜか赤いリボンが落ちていた。
楓がしゃがんでリボンを拾おうとした瞬間、
と透子は叫んで彼女の手を引いた。
一瞬で空気が張り詰めた。
誰も動けずにいると、トンネルの奥から「カン……カン……」と金属を叩くような音が響く。
全員が振り返る___が、そこには誰もいなかった。
楓が言った瞬間、3人の視線が春に集まる。
だが、春はうつむいたまま微動だにしない。
呼びかけに、ようやく春が顔を上げた。
その目は真っ黒で_____笑っていた。
その瞬間、地面が揺れた。
そしてトンネルの奥___“封鎖された扉”が、ギィィ……とゆっくり開き始めたのだった。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。