第11話

10.誰かがきっと
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2026/01/24 15:51 更新
omr
ふんふ〜ん♪
なんて、小さく鼻歌を口ずさみながら
俺の後ろを着いてくる、天使。

あぁぁぁぁ………、しあわせ……。
wki
元貴ほかに欲しいお菓子ない?
omr
えっ、僕、好きなの選んでいいの?
wki
当たり前じゃん!笑
3人でやるんだから、
3人それぞれの好きなお菓子ないと!
omr
ほんと!!
じゃあちょっとまってて!!
目を輝かせて、
小走りでお菓子コーナーをざっと物色する。

その途中で、お菓子を2つ手に持って戻ってきた。
omr
これ!!!
小さい頃からずっと大好きなの!
wki
ん。入れていいよ。
omr
へへ、ありがとう…!









会計を済ませ、外に出る。
omr
うわぁ…降りそうな感じしてる
wki
じめじめしてるなぁ
wki
急ぎめで帰ろっか
omr
……ねぇ、ちょっと、寄りたいとこある。
wki
え?まぁ、遠くないならいいけど……。



そういって元貴が連れてきたのは裏路地。

いや、路地と言えるほど広くは無い。
アパートが2棟並んでるとこの間。
omr
あ、! よかった…いた……。
ほっとしたような声を上げて、
しゃがみこんだその足元には……
wki
仔猫、?
omr
うん。お友達。ってか、仲間?笑
くりくりの可愛い目

ぴん と立った耳

全体的には黒い毛だけれど、
おでこの辺りから三角形に白が入ってる

いわゆる、ハチワレ って言われる猫。

おまけに、靴下を履いたみたいに足が白い。

もずくと同じ、マンチカンぽい…?

いやいや、それよりも気になることが1つ。
wki
なんで傘立てかけてあるの…?
omr
あぁ、これ、僕が買ったの笑
omr
ほら、雨、すごい強かったでしょ?
omr
この子まだ小さいから
あんまり濡らしちゃいけないって思って
ここ来る途中のコンビニで買った
omr
僕のも買えば良かったんだけど、
生憎、1本しか残ってなくて…笑
なんて言って、照れくさそうに頬をかく。

驚いた。

あんな大雨の中、自分よりも
この小さい猫ちゃんを優先したんだって。

自分だってびしょ濡れで、凍えて蹲ってたくせして。
wki
……かわいい、ね。この子。
omr
でしょ!まぁ、見ての通り
捨て猫ちゃんなんだけど
omr
この辺、猫の縄張りないから
猫のお友達見つけられてなくって。
omr
僕と同じで、ひとりぼっち。
wki
………、
少しぎこちない手つきで仔猫を撫でる。
その横顔は、どこか物憂げで 寂しそうだった。
omr
僕 動物飼ったことないから
撫で方よく分かんないんだよね笑
omr
まだこんなに小さいし……。
ゆっくりと俺の手を、仔猫の鼻先に持っていく。

ちょんちょん と向こうから触れてこられたら
「さわっていいよ」の合図。

そっ と 首のあたりを指でなでる。

すると、気持ちよさそうに目を閉じて
ごろごろ と喉を鳴らし始めた。
omr
え、わ、わわ……、!!
omr
……やっぱ、猫なでるの上手いね…
wki
この子が人懐っこいんだよ笑
wki
にしても、かわいいなぁ おまえ。
そのとき、ふと、ダンボールの中の缶詰に目が行った。
wki
あれ、誰かエサあげてるの?
omr
あー、それが、僕もわかんなくて。
omr
いつ来ても、
必ずエサとミルク置いてあるんだよね。
wki
へぇ〜。
なんだかんだ、みんな飼ってやれないだけで
この子のことを愛してる人がちゃんといるんだな。

元貴もその一人。
omr
とにかく、無事が確認できてよかった。
omr
さ、戻ろ。
wki
あぁ、うん。






















wki
ただいまー
bro
おお!おかえり。
なんとか雨降る前に間に合ったな。
bro
大森くん、
ちゃんと好きなの買った?
omr
はい!ありがとうございます、!
bro
そうかそうか〜
wki
……
なんだよ、お前も元貴にデレデレじゃんか。
俺の元貴なんですけど。

可愛いのは分かるけどさぁ……。
俺の元貴なんですけど。(2回目)
bro
さ!準備しよ〜
bro
滉斗、コップにコーラ注いどいて。
wki
うーい
bro
紙皿どこやったっけなぁ……、
兄貴が紙皿を取りに食器棚へ向かう。

しばらくやってないから
どっか奥の方に行っちゃってるかもなぁ。
omr
若井くん、僕もやる
wki
お、ありがとう…! じゃあ_____
bro
やべッ、!

________ パリンッ!!!!


あぁー……。またやりおった。食器割り名人。
どんだけ食器割ったら気が済むんだよ、笑
wki
まぁた割ったのー?笑
bro
やっべぇ……笑
なんて、二人で苦笑していたら
omr
……ッ、は、ふぅッ、…
wki
……もとき、?
omr
ごめ、なさ……ッ、ごめんなさい…ごめ…ッ
wki
元貴、!?
omr
ごめん、なさ…ごめんなさいッ…ごめんなさい
俯いたまま、ブツブツとひたすらに同じ言葉を繰り返す。

右手は、左の二の腕を強く掴んでいた。
wki
元貴、? だ、いじょぶ、だよ…?
omr
ごめん、なさい…ッ、ごめッ、ご、ごめんッ
俺の声なんて届いてないみたい

二の腕に爪を立てている。
くい込んで、血が出そうなほど強く、引っ掻いていた。
wki
ま、まって、待って元貴…、
腕痛いでしょ、ねぇ、ッ
触れたかった。温めてあげたかった。
でも、身体が固まっちゃって何も出来なかった。

俺みたいな不器用なやつが下手に触ってしまったら、
簡単に壊れちゃいそうで。

怖かった。 ただ、怖かった。
bro
………大丈夫。

俺より先に動いたのは 兄貴。

優しく、ぎゅっ て抱きしめてあげた。
bro
大丈夫だよ。大丈夫。
bro
ごめんね。怖かった?
兄貴は父さんに似て、俺より上背がある。
だからちょうどすっぽり収まるような感じで…。

いつもより、ずっと穏やかな声で「大丈夫だよ」って。
bro
大丈夫。大丈夫。
bro
ビックリしたね。
bro
急に大きい音立ててごめん。
bro
大丈夫だよ。
俺は、呆然と立ち尽くして、
それを見ていることしか出来なかった。

















bro
割れた食器片付けるから、
音が苦手なら滉斗と一緒に部屋行ってて。
bro
あと、腕から血出てるし、
滉斗に手当てしてもらいな。
omr
……ごめんなさい、笑…。
bro
謝らなくていーの!大丈夫だから。
wki
……行こ、?
手を引いて、俺の部屋へ招く。

重たくて暗い空気にならないように、意識する。
いや、意識してる時点で上手くいってないのは分かるけど…

生憎、俺は兄貴みたいに強くないし器用じゃない。
wki
食器が割れる音、苦手なの?
omr
……にがてって言うか…、笑
omr
よくない記憶が、頭の奥にずぅっと、
へばりついてて…、
omr
………、ッ…へへ、…笑
今にも泣きそうな顔で、へにゃり と笑う。

世界一 へたくそな、えがお。
wki
…ごめん。いいよ無理しないで。
ありがとう。


wki
えっと、腕見せてくれる、?
omr
……いいよ。何もしなくて。
wki
いや、でも血出てるし……。
Tシャツに付いてるから洗わなきゃだし。
そう言って諭し続けるも、一向に腕を見せてくれない。
まるで、何かを隠してるみたいに。

でも服に血が付いたままじゃ落ちなくなる。
早く洗わないと と思って懇願し続けると
omr
………じゃあ、1つだけ
絶対に約束して欲しいの、
と、元貴が折れた。
wki
? うん。分かった。








omr
…………絶対、に、




























omr
絶対に、嫌いに、ならないで……ッ
















wki
え、? う、うん…、?
嫌いに?腕を見せたくらいで?そんなことある?

と思い、思わず困惑したように声を発した。
omr
……絶対、だよ。
wki
ならないよ?嫌いになんて…。
omr
じゃあ、いいよ。
と、ようやくお許しが出たので
元貴が着ている半袖Tシャツの袖をめくる。
wki
……ッぇ…、?
目を疑った。でもそれと同時に、
あんなに見られるのを拒否していた理由に合点がいった。

omr
……ごめん、ね。 
こんな気持ち悪い腕、みせて……ッ






日に当たらな過ぎた
その白い肌には、


さっき、自分で抉ってできた傷の他に



打撲や切り傷、火傷やらの " 跡 " が


その痛みを、苦しみを、


俺に訴えかけるように


色濃く、くっきりと 残っていた。





wki
……、
気が付くと俺は、ミミズの様に腫れたその傷跡を、
ゆっくりと 指先でなぞっていた。

そして、こう尋ねた。
wki
……痛く、ない、?
そしたら元貴は、少し考えて こう言った。
omr
……うん。今はね。
omr
でも……痛かった、笑
omr
馬鹿だよね。自分で切ったのに…笑
自分自身を嘲笑するような、乾いた笑い。

……ダメだよ、だめだよ。そんなことしちゃ。

頑張って 頑張って、なんとか耐えてきた証なのに…、
それを、自分であざけちゃいけない。
wki
…………ッ もとき…、
俺より幾分か小さい身体を、

けれど、俺よりもずっとずっと

すごく大きいモノを背負っている身体を


抱きしめずにいられなかった。
omr
……? 若井くん、?
wki
…いっぱい、耐えたんだね。
wki
んーん…きっと今も、耐えてるんだよね、
wki
ずっと…ずーっと……
wki
誰にも、声を
聞いて貰えなかったんだね
wki
でも、いるよ。今は。
wki
今は、元貴の声聞きたい人、
ここにいるよ。
wki
ちゃんと聞く人が、
元貴の声が届く人が、




wki
…ここに、いるよ。

「なんでも喋っていいんだよ」「全部教えて」なんて
そんな無理なこと言えないけどさ、

だけど、だけどせめて……
wki
……自分を、声 を 、殺さないで聞 か せ て…。




















omr
……ッ、ぅ、ふっ…んぐッ、(泣
omr
っ、うぅぁ、ッ(泣
wki
泣いていいんだよ。
泣くのは悪いことじゃない。
wki
押し殺さなくていいから。
泣きたいときは泣くの。
omr
ッうぁぁぁっ、う、ぁぁ、!!(泣
ぴんっ と張っていた糸が ぷつん と切れたように
俺の腕の中で わぁわぁ と泣き出した。
omr
くるし、かったぁ……ッ、!(泣
omr
だれも、分かってくんなくて……ッ
だれも聞いてくんなくてぇっ、!ヒグッ
omr
ぼく、こんな……ッ、
こんなに、苦しいのにぃ!!(泣
wki
うん、
omr
みんなみんな、気づいてくれないの、!
ぼくがいないッみたいに、!!(泣
omr
ずっとずっと、さけんでたのに…グスッ

omr
" 僕はここだよ " って
ずっと、さけんでたのにぃ、!!!(泣


wki
……うん…ッ、
omr
いたいの…ッ、ずっとぉ……!!(泣
omr
外側、なおっても…ッヒグッ
こころがずっと…ッずっとぉ……、!!
 
omr
………ッ゛痛くて、痛くて…
omr
……ッくるしい、っ゛…(泣





あぁ……やっと…、やっと
wki
やっと、聞かせてくれたね…。


初めて、ちゃんと聞こえたよ。
ちゃんと伝わったよ。

俺の内側の、奥深くに。






_______ 元貴の声、ようやく、届いたよ。

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