第3話 800,000人突然死
それから数週間、僕の心はどんどん重くなっていった。デスノートの力が、僕の手の中で暴走していることに、完全に気づいていた。あの日、美月が言った言葉が何度も頭の中をぐるぐる回る。
「あなたがその力をどう使うかを選ばなきゃいけない。デスノートを使うことで得られるものと、失うもの。」
でも、選べなかった。選びたくなかった。その力を使ってしまったからこそ、もはや止めることができないと思った。
そして、その恐怖が現実になった。
ある日、朝のニュースで目にした衝撃的な速報。僕が、完全に信じられないものを目にした。
「速報です。現在、世界中で約80万人が突如として命を落としました。すべての死因は心臓麻痺とされています。これまでに確認された地域は、日本をはじめ、アメリカ、ヨーロッパ、中東など、ほぼ全世界に及びます。原因は不明で、専門家による調査が続いています。」
その瞬間、僕は完全に凍りついた。80万人。信じられなかった。まさか、こんなことが起きるなんて。
「これ、まさか…僕が…?」僕は手が震えるのを感じながら、テレビの画面をじっと見つめた。
美月が隣に立っていた。僕が震える手でテレビのリモコンを握りしめているのを見て、彼女はその手をそっと取り、静かに言った。
「大地…これはあなたのせいじゃない。」
「でも…これは…明らかにおかしいよ。80万人なんて、ありえない。僕が使ったノート…それが原因だって、もうわかってる。」
美月は僕の顔を真剣に見つめていた。そして、少しだけ間を置いて、静かに言った。
「あなたがもし、それを使ったことを後悔しているのなら、今すぐにでも止められるはず。ノートを捨てることもできる。けれど、もしそれを使うことで、自分がどんな結果を招くかを覚悟しているのなら…その先に何が待っているのかを、しっかり見極めるべきよ。」
その言葉に、僕は言葉を失った。後悔している。確かに、僕は後悔している。でも、もう止められないのかもしれない。
あの日から、デスノートの力は加速していた。次々と名前を書いたわけではない。ただ、ある「流れ」ができてしまったような感覚があった。名前を書いたわけでもないのに、なぜか人々が次々と死んでいく。それが、まるでノートが自分で意思を持ち、何かを導いているかのようだった。
その後、警察と国際的な組織が調査に乗り出したが、どんなに調べても、その原因は全く掴めなかった。全世界で共通の心臓麻痺の発生、それが同時に起きるなんて、ただの偶然では片付けられない。
そして、僕はその事実を知った。
「大地、あなたが関係しているかもしれないということを、誰かが気づいたかもしれない。」
美月が言った。その言葉が、僕の背筋を凍らせた。警察が調査を進める中、ある筋の情報が明らかになってきた。それは、心臓麻痺が単なる自然現象ではなく、ある暗示的なパターンがあったということだ。
80万人という規模、しかもそれが全世界で発生したこと。それに加えて、心臓麻痺という死因。その全てが、デスノートの存在を示唆していた。
警察の捜査員が、デスノートに関する情報を掴み、秘密裏に調査を始めているという噂が広がってきた。僕が使っていたそのノートが、ついに世界を揺るがす事件に繋がってしまった。
「今すぐにノートを捨てるべきだ。」美月が言った。「あなたがこれ以上、それを使うことで、誰かが命を落とすことを選んでしまう前に。」
その言葉を聞きながら、僕は震える手でポケットからデスノートを取り出し、ただじっと見つめた。もし、今すぐにでもノートを破壊したとして、もう元には戻らないだろう。それでも、今、僕にできることはそれしかないのだろうか。
その時、僕はふと気づいた。美月の目には、深い悲しみと覚悟が宿っているように見えた。もしかすると、彼女はこの瞬間、僕を試しているのかもしれない。
「選ぶのは、あなたです。大地。」美月の声が響いた。
その時、僕は決心した。デスノートを捨てるのか、それとも使い続けるのか。どちらを選ぶにせよ、僕の人生はもう戻らない道に進んでいることを、深く理解した。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。