「いやー、いい話が聞けたよぉねぇ次は何にする?君の好きな女性のタイプとか、」
「ほらお巫山戯ははここまでにして、いい加減話せよ」
小林はシュンとした。
「もっと話していたかったのに」
ため息をついた中原は椅子から立ち上がり、右手で首をさすった。
「今から行くんだろ?長谷川泰子っつう奴によ」
中原は小林に背を向け、出口へと向かう。
「うん」
流し目に機械を見ると、とうとう不備が限界を迎えたか、遊戯は電源さえ消えている。
さほど興味を示すでもなく、その足を先へ伸ばす。
「でもどこにも行かなくて良いよ」
中原は裏脇腹に強い電流を受けた。
磁波銃。
それも中原が一瞬にして冷や汗をかき膝を付くほどの強度なもの。
市販で使われるような生易しいものではない。
初めから彼を狙い用意していたとしか思えないものだった。
「こ、ばや…手前ッ…!」
痛みで収縮した全身の筋肉が、中原の喉を締めつけた。
小林は軽やかな足取りで中原の前へと周り後ろ手を組む。
「わぁ本当にタフだね、一般人なら気絶どころか心臓麻痺を起こしたって可笑しくないのに」
中原は酸素の吸入すら困難になり不規則な呼吸を繰り返し、気を抜けば意識さえ失いかけていた。
ふふ、と息を吐く声がする。
「どういうつもりだ、って言いたいんでしょ?いやぁ君の口癖だねもう」
小林は離れた距離で中原の顔を覗き込み、面白く笑っている。
「どういうつもりか教えてあげる」
中原はふと足元を見た。
やけに綺麗だった。
こんな年季入りの遊戯場だというのに、床ばかりがイヤに汚れがない。
まるで、安上がりの舞台美術だ。
「気づいた?そう、その通り」
小林が数歩進んだ先には、時代遅れのすりガラスと木淵の扉がある。
ハリボテのような戸を横に開くと、すりガラスによって反射されていた光がまっすぐ中原へと刺した。
そしてその光を遮る人影が出来た。
とてもスラリとした、着物の女。
その傍にひたりと寄った小林は妖しく口を開いた。
「ほら、会えたでしょう?」
彼女は薄い唇の角を吊り上げた。
「こんにちは、私の羊さん」
とても良く声が通る女だった。
目鼻立ちが濃く、表の世界ならば女優など舞台映えしたことだろう。
「貴方にとても会いたかったの」
猫を撫でるような甘い声、その女こそ
「彼女が、長谷川泰子だよ」













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。