赤葦京治side
最悪だ。こんな肝心なことを忘れるなんて。
いつもよりも余裕がなかった。初めての出来事に、気が動転していたこともあるかもしれない。
けど、敵が死んだかどうかの確認を怠るなんて。
マフィア失格だ。
どうしよう、もしもこれで町に被害が出たら……
というか、普通の人は腹を撃たれて片腕がない人間を見たら通報するはず、そこであいつが俺たちのことを話したら……
俺らは、確実に……
嫌だ、せめて国見と孤爪だけは……
あいつらは今日の依頼に関わっていない、俺らのことを知らないということにすれば……!
ああ、どうすればいいんだ……!!
……月が、綺麗だ。
俺はそっと、動かない国見の手を握る。
深夜の病室に響く機械音。国見の呼吸は、日に日に浅くなっている。
なあ、もう死んじまうのか?
やり残したことがあるんだろ?
まだ、金田一たちとも日向とも会ってねぇじゃねぇか……
もう、涙も出ない。
外が騒がしい。何かあったのか?
そんな時、スマホに通知がきた。
俺は病室を出て、入口へと向かった。
走りながら、赤葦さんに電話をかける。
受付に行くと、案の定あいつがいた。
——腹にあるはずの傷が、消えていた。
アイツは叫びながら国見の病室の方へと向かう。
クソ、場所は把握済みかよ……!!
男は刃を国見に向ける。
こんなこと、とっくに慣れてんだよ。
俺はすかさず、近くにあったペットボトルを男の手目掛けて投げた。
男は、国見の横に置いてあった銃と面を手に取る。
それは、こいつの……!
バキッ
国見のお面は、男に踏まれて、割れて壊れた。
途端、怒りが体中から込み上げてくる。
俺は男の上に乗り、刃物を取り上げて首に向ける。
病院に来た月島が俺を引きはがし、角名さんが男を取り押さえる。
止まれない。
こいつに対する負の感情が湧き出て、もう制御が効かない。
ただただ、国見のこの世で一番大切な物を壊したこいつに、腹が立つ。
国見の病室を通りすがる時、小さな声でそう言った。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!