「ん?どしたのみかさちゃん、なんか怖い顔して…」
松田さんがたじろぐ。
「え、そんな怖い顔してました?」
私は慌てて自分の顔を触る。確かに緊張してたけど。
「うん、すごい眉間にシワ寄ってた。どうしたの?」
私はふうと一度深呼吸をし、目の前を見つめる。
「竜崎のリクエストのケーキを作るんですが…」
「うん?」
「ショートケーキなんです!」
そう、私は以前竜崎に言ったことがある。ショートケーキなどは、飾り付けがすごく苦手だから作らない、と。それを面白がってるのか、それとも単純に本当に食べたいのか。竜崎はしつこく私にショートケーキを要求した。ずっと断ってた私だが、ついに折れて今日、チャレンジするのだ。
「そういえばショートケーキって見たことないね!苦手なの?でも、スポンジ綺麗じゃない!」
目の前にはすでに焼かれたスポンジ。確かに、久しぶりに焼いたにしては比較的綺麗に焼けたと思う。
「……問題は、飾り付けです」
「え?」
「すっっごく苦手なので」
「ええ。でもいつかのフルーツタルトとか凄く綺麗で…」
「フルーツ並べるのと生クリームは全然違いますから。……集中します。」
精神統一!
私は腕まくりをしてとりかかった。
「…………」
出来上がったのを見て、自分自身停止している。
仕事をしていた松田さんがそんな私に気づいたのか、ニコニコ顔で近づいてきた。
「あ、終わったの〜どんなかん…」
話し途中で止まる。
「…………」
フォローの言葉もでないようだった。
「完成しましたか、みかさ」
遠くから竜崎がちかづいてくる。そして私の手元を見て、目を丸くした。
「これは、……また随分個性的な仕上がりですね」
がくっと頭を落とす。
いやほんと、不器用なんですって。言ったのにぃぃ!!
他の捜査員の人たちが、なんだなんだと集まってくる。隠しようもないそれが次々人の目に晒される。
「……みかささんの意外すぎる一面だな」
相沢さんが言う。
「いや、ケーキは見た目じゃない、味だ。な?」
と夜神さん。
そんな中竜崎はじっとケーキを見つめ、次に私の顔を見た。
「みかさ…」
「言ったでしょう、飾り付けはほんと苦手なんです…!リクエストだから作ったんですから!竜崎責任持って残さずちゃんと食べてくださいよ!」
恥ずかしさで死にそうな私は、顔を熱くして八つ当たりする。すると竜崎はポツリと、呟いた。
「…たまりません」
竜崎の言葉に、みんながは?と彼を見た。
「いつも完璧なあなたがこんな弱点…可愛すぎますずるいです最高です、残すわけありません、誰にも一口もあげず全て食べ尽くします」
「そ、そうですか…」
「とにかくあなたが可愛すぎて私は苦しいです、ケーキだけではなくあなたを食べたくてしかたがな」
「竜崎その口閉じてもらっていいですか」
「これがギャップというものでしょうか、あなたの意外な一面を見ました。不器用なあなたがたまらなく愛しいです、困りました我慢できません、もうこの場で押し倒」
「閉じなさいって!」
隙なくペラペラ話すのを必死に止める。周りでみなさんが呆れたようにして竜崎を見ていた。
私は引き出しからフォークを取り出してケーキに刺す。
「言ったからには残したら許しません!どうぞ!」
ホールのケーキを竜崎に手渡した。常人なら決して食べきれない量の。竜崎は受け取ると、本当に嬉しそうに口角を上げて笑った。
……なんで、こんな失敗作そんなに喜んでるの。
「松田さんあげませんよ」
「な、何も言ってないじゃないですか!…ちょっと味見したかったけど」
「これは私のです、誰にもあげません」
ホールケーキを抱えながらスタスタと歩き、床にしゃがみ込みそのまま食べ始めた。
「…竜崎のみかささんへの愛は相変わらず凄いな…」
模木さんが呟いた。
言葉通り竜崎はそのケーキをペロリと平らげた。
失敗作をみんなに見られて恥ずかしかった私だけど、竜崎が喜んでくれたからまあいいか。
二度と作らないけど。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。