第16話

失敗
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2026/05/31 15:00 更新
「ん?どしたのみかさちゃん、なんか怖い顔して…」

 松田さんがたじろぐ。

「え、そんな怖い顔してました?」

 私は慌てて自分の顔を触る。確かに緊張してたけど。

「うん、すごい眉間にシワ寄ってた。どうしたの?」

 私はふうと一度深呼吸をし、目の前を見つめる。

「竜崎のリクエストのケーキを作るんですが…」
「うん?」
「ショートケーキなんです!」

 そう、私は以前竜崎に言ったことがある。ショートケーキなどは、飾り付けがすごく苦手だから作らない、と。それを面白がってるのか、それとも単純に本当に食べたいのか。竜崎はしつこく私にショートケーキを要求した。ずっと断ってた私だが、ついに折れて今日、チャレンジするのだ。

「そういえばショートケーキって見たことないね!苦手なの?でも、スポンジ綺麗じゃない!」

 目の前にはすでに焼かれたスポンジ。確かに、久しぶりに焼いたにしては比較的綺麗に焼けたと思う。

「……問題は、飾り付けです」
「え?」
「すっっごく苦手なので」
「ええ。でもいつかのフルーツタルトとか凄く綺麗で…」
「フルーツ並べるのと生クリームは全然違いますから。……集中します。」

 精神統一!
 私は腕まくりをしてとりかかった。



「…………」

 出来上がったのを見て、自分自身停止している。
 仕事をしていた松田さんがそんな私に気づいたのか、ニコニコ顔で近づいてきた。

「あ、終わったの〜どんなかん…」

 話し途中で止まる。

「…………」

 フォローの言葉もでないようだった。

「完成しましたか、みかさ」

 遠くから竜崎がちかづいてくる。そして私の手元を見て、目を丸くした。

「これは、……また随分個性的な仕上がりですね」

 がくっと頭を落とす。
 いやほんと、不器用なんですって。言ったのにぃぃ!!
 他の捜査員の人たちが、なんだなんだと集まってくる。隠しようもないそれが次々人の目に晒される。

「……みかささんの意外すぎる一面だな」

 相沢さんが言う。

「いや、ケーキは見た目じゃない、味だ。な?」

 と夜神さん。
 そんな中竜崎はじっとケーキを見つめ、次に私の顔を見た。

「みかさ…」
「言ったでしょう、飾り付けはほんと苦手なんです…!リクエストだから作ったんですから!竜崎責任持って残さずちゃんと食べてくださいよ!」

 恥ずかしさで死にそうな私は、顔を熱くして八つ当たりする。すると竜崎はポツリと、呟いた。

「…たまりません」

 竜崎の言葉に、みんながは?と彼を見た。

「いつも完璧なあなたがこんな弱点…可愛すぎますずるいです最高です、残すわけありません、誰にも一口もあげず全て食べ尽くします」
「そ、そうですか…」
「とにかくあなたが可愛すぎて私は苦しいです、ケーキだけではなくあなたを食べたくてしかたがな」
「竜崎その口閉じてもらっていいですか」
「これがギャップというものでしょうか、あなたの意外な一面を見ました。不器用なあなたがたまらなく愛しいです、困りました我慢できません、もうこの場で押し倒」
「閉じなさいって!」

 隙なくペラペラ話すのを必死に止める。周りでみなさんが呆れたようにして竜崎を見ていた。
 私は引き出しからフォークを取り出してケーキに刺す。

「言ったからには残したら許しません!どうぞ!」

 ホールのケーキを竜崎に手渡した。常人なら決して食べきれない量の。竜崎は受け取ると、本当に嬉しそうに口角を上げて笑った。
 ……なんで、こんな失敗作そんなに喜んでるの。

「松田さんあげませんよ」
「な、何も言ってないじゃないですか!…ちょっと味見したかったけど」
「これは私のです、誰にもあげません」

 ホールケーキを抱えながらスタスタと歩き、床にしゃがみ込みそのまま食べ始めた。

「…竜崎のみかささんへの愛は相変わらず凄いな…」

 模木さんが呟いた。



 言葉通り竜崎はそのケーキをペロリと平らげた。
 失敗作をみんなに見られて恥ずかしかった私だけど、竜崎が喜んでくれたからまあいいか。
 二度と作らないけど。

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