第17話

動機
142
2026/04/01 09:09 更新
みかside
放課後 帰り道





彼女との帰り道。

2人で、初めて一緒に帰る、それなのに。

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あなた
みかくん…大丈夫ですか…?
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んっ?…ああ、ごめんなあ、大丈夫やで。
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(あかんあかん。あなたの下の名前ちゃんが一緒に帰ってくれてる大事な時間やのに、ぼーっとしてた。)

彼女への恋心を確信した今、彼女が他のアイドルとどんな会話をしているのか、どんな関係性なのか。

気になって気になって、仕方が無かった。

影片みか
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(明日も他のアイドルのレッスン入ってるんやろか…?)
あなた
みかくん、やっぱり疲れてるんじゃないですか…?
今日は帰ったらゆっくり休んでくださいね。
いつもより静かなおれを心配して、彼女は声を掛けてくれる。
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ん…あなたの下の名前ちゃん、おおきに……♪

おれが笑って返事をすると、彼女はほっとしたように表情を和らげ、少しだけ何か言いたげにこちらを見た。

影片みか
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あなたの下の名前ちゃん…?どうしたん?
あなた
みかくん、さっき言ってた私に相談したい事って…
影片みか
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…ん?ああ…。
そういえばそんなこと、咄嗟に口に出したような。


正直、今すぐ改まって相談したいことなんてない。

彼女と2人で帰るために取り繕った、ただの嘘だった。
あなた
斎宮さんのこと、ですよね?
まだ本調子じゃないですもんね…。
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……。そうやねん。おれが用意したご飯は何とか食べてくれてるんやけど、話しかけても返事なくてなあ。

おれは咄嗟に彼女に話を合わせた。

危なかった。先に話題を振ってくれて助かった。

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別に、お師さんに無理して元気出してほしいわけやないけど、ちょっと寂しいんよな。

もちろん。嘘ではない。

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だから、おれがもっと頑張らな思って。
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外部のアルバイトも詰め込んだし、隙間時間もダンスと歌の練習してなあ。家帰ったら家事とか裁縫とかしてたんよ。

これはちょっと嘘。

予定をパンパンに詰め込んだのは、彼女のことを考えないためだったのに。



おれはバレない程度に、嘘を吐いてしまった。

あなた
やっぱり…そうでしたか。
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……
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おれな、1人じゃなんも出来へんねん。
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Valkyrie、守りたいんやけどな。

これは、本当の、本当。


自分の中の嘘と本当を見分けるように、ひとつひとつ心の中で確かめていた。






あなた
…みかくん。

彼女は優しく、おれの名前を呼ぶ。

あなた
1人じゃ何も出来ないっていうけど、みかくんは逃げずに努力できていますよね。
あなた
怖くても、苦しくても、ちゃんと向き合ってる。それだけで、本当にすごいです。
あなた
みかくんは、一番強い人だと、私は思います。
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あなたの下の名前ちゃん…。
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(こんな優しい子に嘘吐いてまうおれに、そんな言葉かけてくれるんやね。)
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ありがとなぁ…でも、おれほんとにそんな大した人ちゃうよ。
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…おれ、強ないし。ほんまは、めっちゃ怖いもん。
お師さんいつ戻ってくるんやろって、毎日思っとる。
あなた
だから、みかくんは1人じゃないから。
私もいるから、いい加減他人に頼ることを覚えてください。

そう言いながら、彼女は頬っぺたをぷくっと膨らました。

影片みか
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(かわいい…)
おれは思わず彼女の顔に手を伸ばし、その膨らんだ頬に触れてしまった。


彼女は少し驚いたように、それでいてどこか照れたような反応を見せる。

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…なあ、あなたの下の名前ちゃん。
なんで、おれがしんどい時、いつも来てくれるん?

もしかして、特別、だったりしないだろうか。

ほんの少し。本当に少しだけ、期待を抱いて彼女に問いかけた。

あなた
それは……みかくんが、またValkyrieとしてステージに立つために頑張っているからですよ。
あなた
そんなみかくんをサポートするために、私も出来ることはしたいです。
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(……そう、よなあ。)

彼女がおれを支えてくれているのは、おれがアイドルだから。

そんなことは分かっていたはずなのに。



一度抱いたわずかな期待は、あっけなく打ち砕かれた。



おれの手の中で微笑む彼女はとても輝いて見えて。

彼女は、アイドルであれば、おれ以外にも全く同じ笑顔を向けるのだろう。


アイドルであれば、相手に寄り添った優しい言葉をかけ、平気でお節介を焼ける。そういう子なのだ。

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(ああ、嫌や。嫌やなあ…。)
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(どうしたら、ずっとおれの傍に居てくれるん…?)

胸が、ちくちくと痛い。

おれのこの手を、彼女から離したくなかった。

あなた
みかくん。私もValkyrieが復活出来る方法、一緒に考えさせてください。
みかくんがValkyrieとしてステージに立てるように、サポートします。
そう言った彼女の目は、真っすぐで。

おれの歪んだ心が見透かされてしまいそうで、胸が落ち着かなかった。

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あなたの下の名前ちゃん、ありがとな。
…明日から、またレッスン頼めるやろか?
あなた
もちろんです。一緒に頑張りましょう!

少しでも多く。

少しでも長く。

彼女に会いたいと思った。



おれの動機は、もう__
「Valkyrieの復活」という純粋な目的だけではなくなっていた。

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