みかside
放課後 帰り道
彼女との帰り道。
2人で、初めて一緒に帰る、それなのに。
彼女への恋心を確信した今、彼女が他のアイドルとどんな会話をしているのか、どんな関係性なのか。
気になって気になって、仕方が無かった。
いつもより静かなおれを心配して、彼女は声を掛けてくれる。
おれが笑って返事をすると、彼女はほっとしたように表情を和らげ、少しだけ何か言いたげにこちらを見た。
そういえばそんなこと、咄嗟に口に出したような。
正直、今すぐ改まって相談したいことなんてない。
彼女と2人で帰るために取り繕った、ただの嘘だった。
おれは咄嗟に彼女に話を合わせた。
危なかった。先に話題を振ってくれて助かった。
もちろん。嘘ではない。
これはちょっと嘘。
予定をパンパンに詰め込んだのは、彼女のことを考えないためだったのに。
おれはバレない程度に、嘘を吐いてしまった。
これは、本当の、本当。
自分の中の嘘と本当を見分けるように、ひとつひとつ心の中で確かめていた。
彼女は優しく、おれの名前を呼ぶ。
そう言いながら、彼女は頬っぺたをぷくっと膨らました。
おれは思わず彼女の顔に手を伸ばし、その膨らんだ頬に触れてしまった。
彼女は少し驚いたように、それでいてどこか照れたような反応を見せる。
もしかして、特別、だったりしないだろうか。
ほんの少し。本当に少しだけ、期待を抱いて彼女に問いかけた。
彼女がおれを支えてくれているのは、おれがアイドルだから。
そんなことは分かっていたはずなのに。
一度抱いたわずかな期待は、あっけなく打ち砕かれた。
おれの手の中で微笑む彼女はとても輝いて見えて。
彼女は、アイドルであれば、おれ以外にも全く同じ笑顔を向けるのだろう。
アイドルであれば、相手に寄り添った優しい言葉をかけ、平気でお節介を焼ける。そういう子なのだ。
胸が、ちくちくと痛い。
おれのこの手を、彼女から離したくなかった。
そう言った彼女の目は、真っすぐで。
おれの歪んだ心が見透かされてしまいそうで、胸が落ち着かなかった。
少しでも多く。
少しでも長く。
彼女に会いたいと思った。
おれの動機は、もう__
「Valkyrieの復活」という純粋な目的だけではなくなっていた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。