小さい頃の事。
私は度々家でセルロイド製の人形に話し掛けて居たが、其の仲のとある日の事だった。
私はそう人形を動かしながら話す。
すると、お兄ちゃんに話し掛けられた。
私がお兄ちゃんに言って欲しかった言葉を本人は云って呉れず何かを考え込む仕草をしたので、私はむっとしてお兄ちゃんの方を向いた。
お兄ちゃんは少し困った様に微笑んで、小さく溜め息をつき、私の頭を撫でた。
…矢っ張り、小さい頃からお兄ちゃんはずっと変わらず私の事を気に掛けて呉れてたんだな…
私は家の外の縁側に座り、昔の思い出を思い返しながら感傷に浸って、少し笑みを零した。
すると、お兄ちゃんは少し遠くから私を呼んだ。
お兄ちゃんは私の方に近付きながら、私の様子を見て不思議そうな顔をした。
お兄ちゃんは、今日家を発つ。
やりたい事が突然出来たと云う理由からだった。
私が納得出来なくて更に理由を聞くと、「あなたの下の名前を幸せにする為でも在る」と答えた。
正直理解出来無かったが、其れが私のお兄ちゃんだった。
私達は少し黙り込んだ。
お兄ちゃんの言葉に被せる様に、私は突然立ち上がった。
そして学生服のスカートのポケットから、小さな鈴をちりん、と鳴らしながら取り出す。
私は鈴をお兄ちゃんの服に付けた。
私が寂しそうな顔をして居たからか、お兄ちゃんは私を優しく抱き締めた。
人一倍冷たく白い肌も、細い体ももう感じられなく成ると思うと本当に哀しく成った。
…此れから、「あの家」で私一人だけで如何生きて行けば良いのか、そしてお兄ちゃんが何をする心算なのか。
此時の私…「自分の選択肢さえも見ようとして居ない私」には、何も分からなかった。
『Silent hill BSD.』
▶START
☑Profile
名前→フョードル・ドストエフスキー
・年齢不詳の私のお兄ちゃん。血が繋がって居ない義兄。
・私は覚えて居ないが、小さい頃に両親と出掛けていた際に道端に倒れ込んで居るお兄ちゃんを助けよう、と駄々を捏ねたらしい。其処から家族として過ごす事に成った。
・父はお兄ちゃんが本当は外国人で在る事を知ると、途端に辛く当たる様に成った。本人は気にしておらず、寧ろ私をよく庇ってお兄ちゃん特有の無言の圧で怖がらせて居た。私は其んなお兄ちゃんが好きだった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!