ドンッッと机を叩く音が部屋中に響く。
ポートマフィア本拠地の最上階にある会議室に集まる人々が音を鳴らした張本人に視線を集める。
ポートマフィア前首領が何故此処にいるか、会話内容から察せられるだろう。
首領の“ 太宰治 ”が突如姿を消し、前首領の森鴎外の元に手紙が来たからである。
ポートマフィアの首領が消える事は横浜の安全にも影響が有る。
その為、武装探偵社を巻き込んでの捜索となった。
その為の何回目か分からない会議が始まろうとした時、太宰治の右腕として支えていた中原中也と森鴎外の論争が始まってしまった。
苛つきを一切隠そうとしない中原にその場の全員が溜息を吐いた。
太宰治が失踪してからずっと此の状況で捜索が進んでいなかった。
最近になって日本全土を捜索し終え海外を視野に入れ乍らも再捜査を始めようと会議をしようと本日全員が集まったのだ。
一瞬目を輝かせた中原だが、その期待はすぐに裏切られ大きく溜息を吐いた。
此れが会議といえるのだろうか。
そんな疑問が中島敦と谷崎潤一郎の脳内に浮かんだ。
だが、そんな発言が出る訳では無く心の奥で密かに思うだけであった。
此の状況を見事に静めたのは泉鏡花の発言だった。
一人を覗き泉の方に視線を集めた。
ただ、泉は誰とも目を合わさず真っ直ぐ前、ただ一点をずっと見つめていた。
暫くの沈黙の後、泉が声を発した。
座っていた椅子から立ち上がり胸を張っている太宰は姿を暗ます前とは別人の様に変わっている。
マフィアの象徴の漆黒とは違い皺一つ無い茶色の長外套を肩に掛け紺鼠のハイネックに白いズボンを合わせた服を身に纏っていた。
片耳に髪を掛け、サングラスを頭の上に置いてある。
驚きのあまり声が出ない、周りの顔を一人を除きしっかりと見ながら太宰は頷いた。
嗚呼、懐かしいなと森鴎外は中原が太宰を追いかける光景を見送った後、固まっていた人達を現実へと引き戻し此れからと太宰からの御土産を開けようと会議を進めた。
終わる頃に中原が息を切らし太宰を逃さないと言わんばかりに両手両足を縄で縛り横抱きで現れ再度周りが現在を受け止められず現実逃避に走ったのは別の話である。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!