もう梅雨のジメジメとした空気が抜け始めた7月
しかしまだ雄英高校ヒーロー科でも僅かにどんよりとした雰囲気が漂っていた
蛙吹梅雨、通称梅雨ちゃん
個性は"カエル"彼女だけは去る梅雨の余韻を楽しんでいた
私、鷹見 あなたは梅雨が好きでは無い
何故なら雨が降ると何故か犯罪発生率が下がるそれだけなら良いのだが
その代わり事務仕事に明け暮れる事になるからである
自由勝手なヴィラン達も雨が降ると何をするのも億劫らしい
公安からの命を受け雄英高校ヒーロー科に在籍していながら 世間で人気急上昇中のヒーローもこなし、更には公安の会長の座を奪うべく働いている直属ヒーローでもある
本当に、、真面目に頭が爆発してしまうかも知れない
これまで尋常じゃないキツい公安の英才教育に耐えてきたがこれまでに無いほどに予定が、仕事が詰め込まれているのだ
ま、そんな事言っていてもしょうが無いので帰りのホームルームが終わるまで元気有り余るヒーロー科の生徒達のゆるい雰囲気を眺めていた
お茶子ちゃんがスマホの画面をこちらに向けながら興奮して喋りかけて来た
何だか教室が一気に騒がしくなった
若い子は良いねぇ、、元気あってすっごい可愛い、、(しみじみ、、)
いや、私もそれは分かってるんだけどさ、、
家でのあの親バカを見てると中々良さが分からない、、
素っ気なく答えると皆驚いたように騒ぎ始めた
いや、ホークスっても父親だからな、、
父親に欲情する奴がいるか、、??ちょっとヤバい奴じゃね、、
あ、聞いてないタイプか、、
ロボットの様な動きの委員長、
座ってないのアンタだけですよ、委員長、、
横では爆豪くんが敵対するように手で爆破を起こしていた
あ、声に出てた、、?!?
やべ、優等生キャラ崩れるわ
でもマジで爆豪はカルシウム取った方がいいと思う、、イライラしすぎでしょ、、
私が笑うと爆豪は尚更目つきが悪くなって今にも爆破しそうな勢いだった
ヤダ、この子怖い、、
本当にカルシウム取りな、、???
それから鳥女はやめて?私鳥じゃない、、
お、意外な援軍 やっぱイケメンだねぇー、、
天然の気が使えるイケメン、三拍子揃ってるわ、、
緑谷くんは意外って思いっきり呟いてる(笑)
勇気も虚しく轟くんの態度は火に油を注ぐだけのようだった、、
爆豪、年中キレてるね
うん、逆に凄い
逆にね
ガラガラガラ、、
爆豪の逆ギレが始まる寸前で相澤先生が教室に入ってきた
あんなに騒がしかった教室が一瞬で静まり返っている
凄、相澤先生高校生の扱い方分かってるなぁ〜、、
そっかー、期末ねぇ、、
テストはまぁ、大丈夫でしょ、、
実技試験は何が来るのか分からないからなぁ
ま、個性に頼りすぎない肉弾戦意識のトレーニング増やされるだろうし頑張ろ
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放課後
お茶子ちゃんが溜め息を付きながら参考書をゆっくりめくっていた
最強は言い過ぎ、、
でもさ、私の個性は強力だからこそ活用するのにそれ相応の努力も必要なんだよね
例えるなら手が40本あっても上手く動かせなきゃ足でまといになる、、みたいな?
努力が見えるとその人対策の仕方も分かりやすい
ま、上鳴はうぇーいだし、、いっか!!(極論)
お茶子ちゃんは前向きだな、、
かっこいい、、
ピピ、、
そうこうしてるうちにインカムが鳴った
そろそろか!
ヒュン!!
窓から乗り越え一瞬で空へ羽ばたいて行った
心配そうに緑谷が呟いた
少年たちは、、野心を宿していた
1人の天使を見つめ誰もが憧れる
くしゃみ、、、風邪でもひいたかな?
やべ、有給取れないんだよね今!?
いつもより人通りが少ない街を横目に
大通りを目指して羽ばたく
約2キロ先に騒ぎの音を羽がキャッチした
騒ぎの上空へ舞い上がり見下ろす、、
そこで暴れてるのは私の苦手な炎系の個性のヴィランだった
ホークスの個性”剛翼”と形質が似ている羽を持つテンは弱点も似ている
訓練によって1000℃まで耐えられる様にはなったがせいぜいロウソクやライター程度の温度だ
でも、そんな事言ってられない
炎系の男を最初に行動不能にする
苦手なものに対しては先手必勝だ
ドカッ!!!
ドスッ!!!
こちとら予定ツメツメツメツメツメツメツメに詰めてんだよ
ひったくり程度で遅れたら削れるのは睡眠時間だけじゃ済まないからッ!!(必死)
心の中で叫びつつ次々に羽で抑えて手刀を入れていく
来て30秒も経たずに敵は彼女の足元に転がされていた
既に敵は虫の息、先に到着していたサイドキックの元に駆け寄った
サイドキック達は恐らく炎の男のせいで無闇に近寄れなかったのだろう
普段はひったくり程度でテンが呼ばれることは無いからね
テンは足元に這いつくばっているサイドキックにしゃがみ目線を合わせる
そのサイドキックは完全に →○| ̄|_こういう土下座をしていた
その時、、
さっきまでいなかったヴィランが飛び出して一直線に飛びかかってきた
まずいまずいまずい!!
この位置だとサイドキックに直撃する!
それにこの人はまだ動けないし、この距離じゃ間に合わない!
盾になるしかない!!
翼を大きく広げサイドキックを覆うように守る
ダンッ!!!!!
次の瞬間私は地面に叩きつけられた
なんだコイツ、、、指1本動かせない!!!
あのサイドキックはこれでやられたのか、、
いや、にしても何故土下座?!
私普通に倒れただけなのに、、?
タイミング最悪、、
グズグズしてるからあの炎男が起きちゃった
ブワッッッッッッッッッッ!!!!
男が動けない翼を燃やし始めた
男は火力を上げながら燃やし続けた
テンの翼は燃え尽き背中や腕が焦げ始めている
ドカッ!!!!!!
その瞬間炎男が吹っ飛ばされとんでもない体勢で着地した
真っ白な子供の姿をした天使が蹴飛ばした男をまじまじと眺めていた
フッ……
無邪気に笑うと天使は霧の様にいなくなった
ドサッ
地面に寝転がり呟いた
翼は全焼、火傷も酷い、、最悪だ、、
バサッ!!!
上を見上げると黒い影とともに深紅の羽を携えたホークスが飛んでいた
気怠げにそう答えた、、
あの金縛りの個性が完全に解ききれてないためなんだか体が重い、、
そう言って真っ黒焦げの背中と腕を指した
よく見ると焼きすぎたハンバーグのような有様、、
髪も少し焼け落ちてしまったみたいだ
ホークスはこの怪我を見て血相を変え叫んだ
無理ない、普通の人なら焼死レベルの大火傷
バサッ!!!
羽音がして咄嗟に振り向くとなんとまた残党!!
、、どんだけだよ、、
残念な事に動けるホークスの羽は九州の戦いのせいで生え揃ってない
もう1人は黒焦げ、、
それを見たヴィランは高らかに笑い飛びさろうとした
フワッ!
テンはいつの間にかヴィランの真ん前に現れ
奴の頭にドロップキックをお見舞いした
ドカンッ!!!!!
そのヴィランの翼をわし掴みにしながら笑った、、
サイドキックと話してるとホークスが引き気味に見てきた
失礼なヤツだな、ホント、、⟵人の事言えないテンさん、、
私は脚力が強いのと、元々他の人とかかってる重力の大きさが違って軽い
その為素のジャンプ力が凄いんだよ★
(ミルコさんのお墨付き)
サイドキックが苦苦しげに言った
宇宙猫状態の私に対しホークスはケラケラとツボっていた
失礼な奴だ、、
"羽が無ければ殴りましょう!"って公安で習ったのに、、
いや、公安だからかぁー!!!?
サイドキックは相変わらず公衆の面前で美しい土下座を披露していた
でも流石に自分とこのサイドキックを土下座させたままは可哀想なのでデリートを呼んで
個性効果を消して貰った
バサッ!!
ホークスが赤い羽を広げ私を軽々と持ち上げた
ヒューー
私がいつも飛んでる所より低めの位置で飛んでいた
、、よしそろそろ
バサッ!!
ホークスの腕から抜けたテンは純白の白い翼を広げていた
所々抜けていたり短かったりする羽がいくつかある
短期間での"癒し"いわば修復は精度が落ちてしまう為中々使わないのだが羽が無くなったくらいでヒーロー活動休止する訳にはいかないので渋々使うこともある
本当は皮膚も直せるけど、ホークスは潜入中の為彼に何か伝える情報は敵に筒抜けって事だから
此方の手札はあまり見せないのが得策だと思う
だけど、、流石にこの大火傷で会議は、、
よし、後で包帯巻こう!!
この後包帯だらけのテンが会議に出てミイラだと騒がれ、サイドキック達に病院へ押し込まれたのはまた別の話、、
いつもなら青白い顔をしてしがみつくテンなのに飄々としているのを不思議に思った様
苦い顔でそう言うとホークスは笑った
私の独特な高所恐怖症を直すべく公安のお偉いさんがわざわざジェットコースター監視付きで40回も乗らせたからな、、(泣)
マジで解雇する、、アイツ顔覚えたかんなッ!
そうこうしてるうちに目的のビルまで着いた
流石ホークスたった30秒で送ってしまう速すぎる男、、
ホークスタクシー、高すぎて破産しちまうよ、、
ほい!と渡された本は
"超常解放"とデカデカと題名を飾っていた
ホークスはそう言うと先程までとは違う貼り付けた笑みを私に向けた
本の内容はともかく、"超常解放"て言わば 公的な個性の使用がヒーローのみ許されていて一般人が使うとヴィランと呼ばれるなんておかしくね?
だからヒーロー滅ぼしましょうって事でしょ
それをヒーロー、ましてやルールで雁字搦めの公安ヒーローに言うなんて喧嘩売ってるのと同じじゃない?
一応聞いてみる
ニコニコで返された、、
は?
なるほど、食中毒かなんかでおかしくなってるわけでは無いと!
なら十中八九潜入先の事だ、、
"超常解放戦線"今、昔のデストロの唱えた思想を元とした組織が公安で睨まれてる
この組織はヴィラン連合が軸となっていて厄介だ
いつの間にか本を押し付けられていた
さっきとは打って変わって真剣な表情で本を手渡してきた
絶対受け取れって顔だね、、だけど
あ、意味わからんって顔してる(笑)
そりゃ公安から頭に入れとけってなんか30冊も押し付けられたんだから、、
事務所に置いとくのもなんだし部屋に置いてあるけどさ
粗大ゴミだよね、普通に要らん
ホークスの持っていた本をヒョイと取り上げ
笑った
だって貰ってほしそうな顔してるんだもん
なんかあるって事だよね?
ニコニコスマイルでホークスに笑いかける
声色はとても明るいがにこりともせずに苦々しい顔をしながら本を睨みつけた
言ってることと表情が真反対だ、、
ホークスには監視がついてる、、
布教してるのも信頼を得るためだろう
ならちょっとはヒーロー側に賛同する人が居なきゃ怪しまれるよね、、?
それだけ言い残してホークスはどこかへ飛んでいってしまった
進んで潜入なんてする柄じゃ無いだろうしあの会長のご命令だろ
いや、でもバレてる気するんだよね
ただの勘でしかないけど、、
もうすっかり日が沈んだ街に向かって呟いた
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会議室
その冷たい会議室には会長と公安の面々が揃っていた
どの人も厳しい同じ顔をして私をジロジロと見た
真顔で何を言い出すかと思えばインターンに参加せよ、と、、
なるほどつまりテン事務所を有名事務所にして何がなんでもインターン受け入れしろと
あ、機密っぽい?
そう言ってはぐらかした
ヤダね、この人如何に利用するかしか頭に無いのかしら??
林間合宿行けなくなったし、、最悪
私が去ろうとすると見知らぬ男が立ち上がった
なんだ、ガキだからって不満があんのか、、
男は不満そうに私を睨みつけた
おそらく"ガキが調子乗るな"的な感じだろう
それに会長に楯突いてるクソガキだから気に入らないらしい
男は堪え切れず指をさして大声を出した
公安たるもの感情的になってはいけない、
入る時に教わったはずなのに、、
この人後で無事だといいけど
会長の冷たい声が室内で響いた
男は悔しそうな顔でこちらを睨みつけ座った
ここから1秒でも早く離れたくて
挨拶だけして足早に外へ出た
ガチャ、、
どんなに有能だったとしても世間で年齢と言うのは大きな壁となっているらしい
警察や役所と関わっていると嫌でも"子供だから、ガキの癖"にって言われる事が多くなる
自分より年下の人間が上に上がってくるのが気に入らないようで公安内の昇進で揉めた事は数え切れない程あった
そんな事を毒づきながらも呑気にしている暇も無いので窓に足をかける
子供の天使の目にはギラギラとした炎が映されていた
アンケート
最新話を元に追いついて二次創作してもいいですか?
良いよ!
84%
新しい展開用意しろ!
16%
投票数: 70票
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!