────前回のあらすじ
異能特務課の坂口安吾は盗まれた100年戦争の書物を探すために、東奔西走していた。
そのような彼の前に武装探偵社員の太宰治が、現れて意味深な言葉を残す。
一方で────
祐里佳から100年戦争の書物が盗まれたと聞き、大胆な行動に出る。
話が終わった後、由香はノアと実に話をしようと言うが。
由香side
キッチンから作ってきたホットミルクを二人の前に差し出した。緊張しているようだが、私は別に二人を咎めようとは思っていない。
顔面蒼白になって何を言っているのだろうか。
ノアちゃんは手を震わせているし、実ちゃんだって虚ろな目をして俯いてる。
異力眼のことを話し合ったあの日。深雪ちゃんが私にとある「名探偵さん」の話をしてくれた。
全てを知っていながらも、聞かない。我が儘で子供みたいだけど、立派な大人だって。
あんな優しい目をした深雪ちゃん、久しぶりに見た。
だから、こうして私の話を聞いてくれているんだろう。
二人の過去が誰かに知られたくないのは分かる。
二人を引き取って、迎え入れて、光を見せたのは私だ。
泣きそうな声だった。気付いてたのかな…私が祐里佳ちゃんから話を聞いて、暗い顔をしてたって。
いい加減分かってください、と言いながら実ちゃんは顔をしかめた。
可愛いのに。なんて言ったら、怒られるだろうな。
可愛い末っ子だと思っていた子達が物騒な言葉を吐いて夜だとも忘れて、大声を上げてしまった。
しかし、冷たい木心ちゃんの辛辣さに目覚めさせられた。
那月side
翌日。由香さんから書類が入っている茶色の封筒を受け取って、星さんと共にある場所に来ていた。
上を見上げれば高い高いビル。此処は横浜の港を牛耳る組織·ポートマフィアの本部ビル。
他人から見れば自殺行為だが、私達は書類を渡しに来ただけ。何も怖くはない。
星さんの言葉が終わると同時に、何処からか銃声が聞こえた。すぐ横を銃弾が通り過ぎる。
ポートマフィア遊撃部隊の樋口一葉さん。異能力はないと聞いているが、銃の腕は確かだった。
樋口さんは嫌なようだったが、芥川さんの鋭い視線に負けたのか渋々銃を下ろしてくれた。
星さんがマフィアの危険異能力者と知り合いなのは予想外だったけど、それなら話が速い。
早めに終わらせて帰りたい。
芥川さんはマフィアの有力な戦力だけど、幹部などではない。そういうのが難しいのは、予想していた。
だから────
あの時の青年がまさか、ポートマフィアの一員だなんて。
祐里佳さんの財閥の力を使って、裏を探らせてもらった。
そして中原さんのスマホにメッセージを送信した。
──『明日、マフィア本部に訪問するので事前に首領さんに報告をお願いします。』とね。
癒乃side
来ない方が良かったかも。由香ちゃん…助けて。
深雪ちゃんから負のオーラが溢れてるのに、江戸川さんはずっと騒がしいし。
探偵社のソファーで太宰さんに迫られていた私を、国木田さんが助けてくれた。
そもそも私と深雪ちゃんは由香ちゃんに頼まれて、探偵社の事務所に書類を渡しに来ただけなんだけど。
あの莫迦に頼まれただけと、深雪ちゃんは吐き捨てる。
確かに。由香ちゃんなら、マインドアイで心を読めるからあり得る話だけど。
私達はそうではない。確り手渡しをする。
まだ学生なのか、セーラー服を着た女の子が近くにやって来た。綺麗か…私は綺麗なんかじゃないのに。
早く社長さんに渡して帰ろう。
マフィアの方も上手く首領さんに、渡せたのかな?
NOside
場面は変わりマフィア本部の最上階──首領の部屋。
那月は自分の目の前の光景に、唖然としていた。
横浜の港を縄張りにする凶悪な犯罪組織·ポートマフィア。その心臓たる首領が土下座をしている?
しかも、幼女の前で?フリフリのワンピースを持って?
中也の言葉が終わると同時に、部屋の中が真っ暗になって少しも経たないうちに薄い明かりが点いた。
棘のあるように聞こえる那月の言葉に、内心で中也は焦っていた。
それが顔に出ていたのか、星が彼を落ち着かせる。
最悪の場合、首領の機嫌を損なえて殺されるかもしれないが鴎外は可愛いと、ただ流していた。
呑気にふわふわと、お疲れ様です!と、言う星を見て中也は溜め息を吐く。
緊張感がないのか、それとも慣れているのか。
一方、探偵社では。
静かな雰囲気がその場を支配していた。
なんと言うか、社長である諭吉の威圧が凄いというか。もしくは、喋らないだけかもしれない。
乱歩の子供のような発言に、深雪の眉間の皺が更に深くなるのを癒乃は見ていた。
乱歩は深雪が怖いほど、不機嫌になっていることに気付いてないのだろうか。
彼なら無視をしていても、可笑しくないけれど。
頭脳明晰で誰も追い付けない推理力を持つ乱歩が、そんなことを言うなんて。
深雪は少し、認められたような気がして機嫌が良くなる。
────不意に彼らの言葉が重なる。
──『一体、何者なのか。』
那月は意味深な笑みを残して。
星は屈託のない純粋な笑顔で。
癒乃は寂しそうな微笑を浮かべ。
深雪は孤独のような顔を残す。
そして、少女達は自分達の居場所へと帰っていく。
────これでまた、一日が終わったと思いながら。




















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。