第14話

何故
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2022/06/11 11:45
陽毬
……う…痛…
目を覚ますと、私は物置の様な場所に居た。
気を失ってから、それほど時間は経っていないみたいだ。
陽毬
と、とにかく出なきゃ…
出口と思しき扉に駆け寄り、ドアノブを回そうとする。
しかし(何となく予想はしていたが)、扉は開かなかった。
どうやら、閉じ込められてしまったらしい。
陽毬
どうしよう…通信機、取られちゃったし…
そういえば、さっきの人は誰だったんだろう。
私をPKST団の内通者だって、勘違いしてたけど…。
陽毬
兄さん…あの人に何かされてないかな
???
安心しろ、まだ何もしてない
陽毬
⁉︎
突然扉が開き、1人の男性が入ってきた。
さっきの人だ。
警備員の格好ではなくなっているが、声で分かる。
陽毬
あなたは、誰…なんですか
???
お前には関係ない
???
お前…PKST団の内通者じゃないんだな
???
お前の通信機、別の奴らに繋がったぞ
陽毬
だからさっきも、違うって…!
不意に男性が、懐から何かを取り出した。
暗くてよく見えないが、私にはそれがナイフに見えた。
???
「逃してもらえる」とでも思ったか?
???
残念だったな。さっさとお家に帰っていれば、まだ長生き出来たのに…
扉は開いている。
逃げられるはずなのに、私の脚は根が生えたかの様に動かない。
???
じゃあな
ナイフが振り下ろされる。
思わず、目をきつく閉じた瞬間。
ドン、という鈍い音がした。
???
うっ⁈何…
そんな声が聞こえると同時に、誰かが私の手を掴んだ。
???
走れ‼︎
聞き覚えのある声に言われるがまま、私は駆け出した。
???
待て‼︎
背後から、男性が叫ぶ声が聞こえていた。
………………………………………………………………
???
撒いたか…?
陽毬
な、何で…
陽毬
何でここに居るの…?
私は息を切らしながら言った。














陽毬
奈緒…
奈緒
いやいや、それはこっちのセリフだぞ?
呆れた様に言いながら、奈緒は私の手を離した。
奈緒
ついさっきも、らっでぃ先生に会ったばっかりだし
陽毬
え、兄さんに会ったの?
奈緒
ああ、よくわからんが…焦ってたな
兄さんは無事なんだ。
陽毬
ねぇ奈緒、本当に何でここに居るの?
奈緒
うーん…アタシは…
奈緒
しっ、待て。誰か来る
私達は、物陰に身を潜めた。
やがて、足音の主の姿が見えた。
さっきの人じゃないが、兄さんでもない。
黒いお面で顔を隠した、男の人だ。
それも1人じゃなく、2人。
その人達は真っ直ぐに、私達の居る方へと歩いてくる。
???
…隠れなくても大丈夫だよ。俺達は敵じゃないから
その人は、私達の隠れている物陰を見て言った。
???
無事みたいだね…陽毬ちゃん

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