目を覚ますと、私は物置の様な場所に居た。
気を失ってから、それほど時間は経っていないみたいだ。
出口と思しき扉に駆け寄り、ドアノブを回そうとする。
しかし(何となく予想はしていたが)、扉は開かなかった。
どうやら、閉じ込められてしまったらしい。
そういえば、さっきの人は誰だったんだろう。
私をPKST団の内通者だって、勘違いしてたけど…。
突然扉が開き、1人の男性が入ってきた。
さっきの人だ。
警備員の格好ではなくなっているが、声で分かる。
不意に男性が、懐から何かを取り出した。
暗くてよく見えないが、私にはそれがナイフに見えた。
扉は開いている。
逃げられるはずなのに、私の脚は根が生えたかの様に動かない。
ナイフが振り下ろされる。
思わず、目をきつく閉じた瞬間。
ドン、という鈍い音がした。
そんな声が聞こえると同時に、誰かが私の手を掴んだ。
聞き覚えのある声に言われるがまま、私は駆け出した。
背後から、男性が叫ぶ声が聞こえていた。
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私は息を切らしながら言った。
呆れた様に言いながら、奈緒は私の手を離した。
兄さんは無事なんだ。
私達は、物陰に身を潜めた。
やがて、足音の主の姿が見えた。
さっきの人じゃないが、兄さんでもない。
黒いお面で顔を隠した、男の人だ。
それも1人じゃなく、2人。
その人達は真っ直ぐに、私達の居る方へと歩いてくる。
その人は、私達の隠れている物陰を見て言った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。