第20話

宝と悪戯
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2021/12/28 03:33
ぺいんと
らっだぁ⁉︎
兄さんの傍に膝を付き、傷を覗き込む。
ナイフの刃は、兄さんの背中に深々と埋め込まれていた。
陽毬
兄さんしっかりしてッ‼︎兄さんッ‼︎
半狂乱になって叫びながら、ナイフの柄に手をかける。
鬱先生
抜いたらアカン!出血量が増える!
陽毬
でも‼︎
道化師
…ハハハ、形勢逆転だな
道化師は取り落とした銃を拾いなおし、ニヤリと笑った。
道化師
人質用に、一人だけ生かしておこうと思ったが…やめだ
道化師
この場で全員、皆殺しにしてやる
ぺいんと
クソ…ッ‼︎
ぺいんとさん達が、私達を庇う様に前に出た。
道化師
無駄だ、お前らはもう終わりなんだよ‼︎
道化師の嗤い声が響いた。















???
終わりなのはお前だ
道化師
何…グッ⁈
突然、道化師の身体が浮き上がった。
背後から誰かが、道化師の襟を掴んで持ち上げている。
知らない男の人だ。
警察官の様な服装で、帽子を目深に被っている。
次の瞬間、道化師は床に叩きつけられた。
鈍い音がして、道化師はぐったりと意識を失った。
ぺいんと
…え…?
死神
何で、ここに…?
男の人は、ジロリとPKST団の人達を見た。
???
お前達が騒ぎを起こすからだ。まったく、俺も病み上がりだというのに…
クロノア
…来てらっしゃったんですか?
クロノア
「ステイサム」さん
ステイサムと呼ばれたその人は、フンと鼻を鳴らした。
ステイサム
相変わらずだな、9番
クロノア
いえいえ
ステイサムさんは、私と兄さんの方に歩いてきた。
陽毬
に、兄さんが刺されて…!どうすれば…!
ステイサム
騒ぐな、落ち着け
ステイサムさんは無造作に兄さんをひっくり返し、傷の位置を確認した。
ステイサム
…刃渡りの短いナイフの上、急所には掠りもしていない
ステイサム
これで死ぬのは、余程の馬鹿者くらいだ
らっだぁ
え?
その途端、兄さんが顔を上げた。
らっだぁ
そういえば…生きれる気がしてきた
ばどきょー
お前はァ‼︎
緑色
心配サセトイテ‼︎
陽毬
…バカっ‼︎
らっだぁ
っ、ごめん皆…陽毬も
兄さんが手を伸ばし、嗚咽を堪える私の頭を撫でる。
こんな風にしてもらえたのは、もう何年ぶりだろう。
ステイサム
…お前、コイツの妹か?
ステイサムさんが私を見下ろしている。
陽毬
は、はいっ
ステイサム
そうか…
ステイサムさんは帽子を被り直し、静かな声色で言った。
ステイサム
…兄弟は、大切にしろ
平坦だが、重々しく。
また、どこか哀しさを含んだ響きだった。
何も言えず、ただ頷く私。
ステイサム
…救急車は呼ぶ。だが、到着には時間がかかるはずだ
後は好きにしろ、と続けるステイサムさん。
ぺいんと
ステイサムさん…
ステイサム
何だ
ぺいんと
あの、ありが…
ステイサム
礼は言ってくれるなよ、8番
ステイサム
それから…
ステイサムさんは私達に背を向けた。
ステイサム
これで貸し借り無しだ
ぺいんとさんは少し黙った後、笑って頷いた。
ステイサムさんはもう一度帽子を被り直し、展示室から去っていった。
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らっだぁ
…陽毬
陽毬
何?
らっだぁ
さっき、ごめんな
陽毬
私も、ごめんなさい
兄さんは「仲直りしようか」と、また私の頭を撫でた。
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シャオロン
なあ、今こんなこと言うのも何やけど…
ショッピ
あの人、「救急車来るまでに少しかかる」って言ってましたよね?
我々怪盗団の人達は、私や奈緒と顔を見合わせた。
コネシマ
…やるか!
ゾム
やるしかないな!
シャオロン
ってことで、陽毬!
シャオロンさんが、私をひょいと抱え上げる。
陽毬
わっ
シャオロン
どーんとやったれ!
らっだぁ
ちょっと!陽毬と近い‼︎
奈緒
まぁまぁまぁ、お兄さん
奈緒
妹の恋路は、応援してあげましょうや
らっだぁ
はぁ⁈
賑やかな声を聞きながら、私は「アルカナ:フォーチュン」を見つめた。
神秘的な雰囲気だったそれは、今では私を歓迎するかの様に見えて。
私は小さく深呼吸してから、筆を取った。
胸が高鳴るのを、ずっと感じていたのを覚えている。

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