第4話

兄弟って、なんなん?
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2025/08/07 07:00 更新
朝の光が、静かにカーテン越しに差し込んでいた。
それは、“7人兄弟”として迎える初めての朝だった。

藤原丈一郎は、まだ誰も起きていないリビングで、静かにトーストを焼いていた。
キッチンは昨日から用意されていた最低限の家電と、福祉課から届いた食材でいっぱいだったが、それでもぎこちなさが残る空間だった。

(……まずは、ちゃんと朝ごはん作らな)

隣の部屋には、見知らぬ兄弟たちが寝ている。
それだけで、普段より何倍も神経を使っていた。

そのとき――ガチャ、と乱暴にドアが開いた。

「なに勝手にやってんだよ」

西畑大吾だった。パジャマ姿のまま、寝起きのくせに目だけは鋭かった。

「……朝ごはん作ってるだけやん。誰かがやらな回らへんし」

「俺の家事スケジュール、勝手に崩さないでくれ。うちの弟ら、朝はパンじゃなくてごはん派なんや」

「知らんがな。パンしか届いてへんかったやろ」

「だったら言えばいいやろ?」

火花が散るような空気が流れた。

丈一郎と大吾――
“長男”同士のプライドが、さっそくぶつかっていた。

「……俺の弟らの生活ペースは俺が守る」

「それ言うなら、こっちもや。俺の弟守るんが俺の役目や」

お互い、一歩も引かない。

そのとき、寝室のほうからバタバタと足音が近づいてきた。
勢いよく入ってきたのは、駿佑と恭平。

「おなかすいたー!」

「パンのにおいするー!」

2人の笑顔に、一瞬だけ張り詰めた空気がゆるむ。
しかしそのあと、もう一人の“爆弾”が起きてきた。

「なんやねん、この布団の配置!狭すぎるやろ!」

和也だった。寝ぐせ頭でキレながらリビングに突っ込んできた。

「俺と大吾、寝る場所逆やったんか? てか、誰の歯ブラシがどれか分からんし!」

「俺も分からんかった……」と、謙杜が小さくつぶやいた。

そして、泣き声が聞こえた。
スタッフが連れてきていた流星が、突然声を上げて泣き出したのだ。

「あっ、流星……!」
大吾がすぐに向かおうとするが、丈一郎が先に動いた。

抱き上げて、背中をぽんぽんと軽く叩く。

「……大丈夫や。おなかすいたんやな、ちょっと待っててな」

その姿に、大吾はぴたりと足を止めた。

(なんやこいつ……普通に……慣れてる……?)

そのとき、ふいに大吾の中で何かがほどけたような気がした。

「……ミルクは、哺乳瓶ここにある。温度はぬるめの方がええねん」

「了解。任せるわ」

初めて交わされた、素直な言葉だった。

誰かの泣き声、誰かの怒鳴り声、誰かの笑い声――
めちゃくちゃで、騒がしくて、うまくいかない初日の朝。

だけどそれは、「家族の朝」としては、きっと自然だった。

丈一郎は、ふと笑った。

「……これ、毎日続くんかなあ」

「続くやろ。俺らが止めへん限りは」

と、大吾もぽつりと返した。

目が合って、ふたりは無言のままうなずいた。

――兄弟ってなんなん?

血じゃない。
育った家も違う。
だけど、こうして共に目覚めて、食卓を囲んで、泣いて笑って、ケンカして。

たぶんそれが、「選んだ家族」ってやつなんだろう。

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