それは、夕食後の何気ない時間だった。
テレビではバラエティ番組が流れ、リビングには笑い声が響いていた。
駿佑と流星は床でブロック遊び。謙杜は食器を洗いながら鼻歌を歌っている。
丈一郎と大吾は、それを見守るようにソファでくつろいでいた。
そんな中、突然、恭平が口を開いた。
「なあ……“自分の部屋”って、無理なんかな?」
その言葉に、一瞬だけ空気が止まった。
「え?急にどうしたん?」
丈一郎が軽く笑いながら聞く。
「いや、ただ……ひとりになれる場所、ちょっとだけほしいなって思って」
恭平の声は、どこか寂しげだった。
「わかる。オレもたまに、そう思うときある」
謙杜がうなずいた。
「ずっと誰かと一緒にいるの、ちょっと疲れるよな」
和也もぽつりとつぶやく。
「でも、ここ3LDKやろ?無理やん」
駿佑が現実的な一言を投げる。
「いや、部屋じゃなくてもええねん。
カーテンで仕切ったり、押入れでも何でもええから、“自分だけの時間”がほしいねん」
恭平のそのひと言に、丈一郎も大吾も、返す言葉を探して黙り込んだ。
兄弟になって、家族になって、にぎやかで、楽しくて――
だけど、誰だって「一人になりたい瞬間」はある。
「……それ、わかるわ」
大吾がぽつりと口を開いた。
「俺も昔、弟らがどんどん増えていって、自分の場所がなくなる気がして、不安やった」
「……それって、家族やのに、わがままって思われへん?」
「ちゃう。わがままやない。それも“守りたい自分”の一部やと思うで」
丈一郎が立ち上がった。
「ほな、考えよか。“ひとりの時間”をつくる方法。7人いても、できるやり方を」
「おお、DIYやな!」
駿佑が目を輝かせる。
「押入れ、俺が一番乗りで使ってええ?」
謙杜が手を挙げる。
「ちょ、俺が先に言ったんやから、俺優先な?」
と、恭平。
「あほか、じゃんけんや!」
和也の号令で、いきなり始まる押入れ争奪戦。
笑い声が戻ってきたリビング。
丈一郎と大吾は目を合わせて、小さくうなずいた。
「家族って、ずっと一緒にいることやと思ってたけど――」
「“離れる時間”も、大事なんやな」
それは「バラバラになりたい」じゃなくて、
「一緒にいるための余白がほしい」ってこと。
兄弟7人、それぞれが、自分の居場所を見つけようとしている。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。