第5話

第3話 奈落 - 四人目 氷結治癒士
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2026/02/23 03:01 更新
三人で動くようになってから、わずかに生存確率が上がった。

岩本が前を見て、深澤が隙を突き、阿部が地形を読む。

それでも

奈落は、甘くない。
阿部亮平
…まずいな

阿部が低く言った。

視線の先、地面に黒い影がいくつも落ちている。

上だ。

岩本が顔を上げた瞬間、巨大な影が降ってきた。

翼。

空を飛ぶ魔物。

逃げ場がない。
岩本照
散れ!!


三人が別方向に飛ぶ。

直後、地面が抉れた。

衝撃で岩本の体が宙に浮く。
背中から叩きつけられ、息が止まる。

視界の端で、深澤が吹き飛ばされるのが見えた。

阿部も、岩に叩きつけられて動かない。

立てない。

魔物がゆっくりと歩いてくる。

まるで、おもちゃを見つけたみたいに。
岩本照
……くそ

岩本が剣を握ろうとした、その時。

冷たい空気が流れた。

一瞬で、温度が下がる。

そして、目の前の魔物の足元が__凍りついた。
阿部亮平
……え?


阿部が顔を上げる。

白い息。

地面を這う氷。

魔物の体を、みるみるうちに凍結させていく。

しかし、すぐ打ち砕かれた。

粉々に。

3人は何が起きたのかも分からず、自分の下に伸びた氷の滑り台によって1箇所に集められた

三人の視線が、同時に一点へ向く。

そこに立っていたのは、銀髪の男だった。

ぼさっとした髪、気怠そうな目。

片手をこちらに向けたまま、ため息をつく。

渡辺翔太
……何やってんの、お前ら
Snow Nine
翔太…!!
渡辺翔太
久しぶりだな


渡辺はゆっくり3人を見回す

三人の傷を見て、眉をひそめた。
渡辺翔太
ちょっと動くな


地面に手をつく。

瞬く間に、氷が広がった。

冷気が三人の体を包む。


次の瞬間

痛みが、消えた。

折れていた骨が戻り、裂けた皮膚が塞がる。

深澤が目を見開く。
深澤辰哉
え、なにこれ
渡辺翔太
凍らせて、時間巻き戻してるだけ
深澤辰哉
いや、だけって!!

さらっと言う渡辺に、阿部が呆れた顔をする。
阿部亮平
さらっと言うなよ、とんでもないことしてるぞそれ
深澤辰哉
阿部ちゃんもだったけどね!?
岩本照
いつの間に、できるようになった?
渡辺翔太
…ここ来て、できるようになった
深澤辰哉
すげぇ…


渡辺は肩をすくめる。
渡辺翔太
死なせねぇから。俺がいる限り
Snow Nine
かっけぇ…!
渡辺翔太
やめろ!!

3人の賞賛に照れる渡辺。

奈落の地獄の中で、初めて安心できる言葉だった。

それと同時に魔物は咆哮をあげる
渡辺翔太
逃げるぞ!
その言葉を合図に一斉に走りだした。渡辺は氷の壁を作り、岩本は深澤、阿部を抱え走り続けた。



あたりは静寂に包まれた。

どのくらい走ったのかは分からない。

ようやく魔物から離れた地で四人は顔を見合わせる。

役立たずと呼ばれた人族が、奈落で再会していく。

まだ希望はない。

でも

確実に、生き延びる力が増えている。

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