第5話

集合
11
2021/02/06 04:37
家を出ると、あの人は暇そうに待っていた。

「おかえり。用事は済んだかい?」
「はい。」
「んじゃあ、少し待ちなさい。すぐ終わる。」
「わかりました。」

ガチャン。重い扉が閉じるのを見届けた。
静寂が広がる。僕は冷えた廊下で待っている。
ガチャ。扉が開いた。
奇妙な仮面がこちらを覗いた。
「終わったよ。帰ろう。」

嫌いだったけど、いざ離れると寂しくなる。
「(さよなら)」
「…あらら。随分外は暗いねぇ。歩くと遅いから飛ぶよ。」
「え?」
「…เหจวเขขจาลมชาจบอเจ」

目の前が暗くなった。サーとTVの砂嵐みたいな音が流れる。
そしてすぐに明るくなった。
チカチカする。

「ついたよ。びっくりした?」
「え、まあ。」
「さぁ!ようこそ。我が家へ…!」
パッと灯がついて行く。蝋燭。壁に燭台がいくつかある。
いつかの本で読んだ洋館のようだ。
火の灯し方はまるで魔法だった。これも能力の一つなのか。
ここは広間、エントランスみたいな感じ。
扉がいくつかある。左右には長い廊下だ。
後ろにはエレベーター。海外の映画で見るやつだ。
「ここは…?」
「私の家だよ。まあ、店の地下だけどね。」
「すごく…綺麗ですね。」
シャンデリアがキラキラと宝石みたいに輝いている。
見たことのない観葉植物とか置物がたくさん置いてあった。
「君の部屋は地下2階の空き部屋だよ。
もう一つ下がる必要があるからエレベーターに乗ろう。」

「お、帰ってたんですね。」
「(あの店員さんだ)」
「ああ。ただいま。そうだ“皆んな”にここに集まるように言ってくれないか?」
「了解。」
皆んな…?
そういえば“子供達“がいると言っていたのを思い出した。
「ここには何人いるんです?」
「うーん、ここに住んでるのは3人。君を入れて4人目だよ。」
「なるほど…全員で何人です?」
「7人くらいかなぁ…失ったりしたものも多いからな。」
「なんか失礼しました…」
「いえいえ〜」

「呼んできました。おい、早く来い。」
『はぁ…なによ。急に呼び出して。良いところだったのに。』
と愚痴愚痴言いながら髪の長い女の子が歩いて来た。
部屋着だった。
[ふわぁ…眠い。]
次にガタイの良い男の人。
さっきまで寝てたみたいだった。

「(なんかいっぱいきた…)」
「皆んな突然ごめんよ。家族が増えたんだ!歓迎会と行こうじゃないか!」
『ぇ、また?増やしちゃったの?』
[新入りか…]
「……。」
「さぁ、自己紹介しなさい。」

「あ、えっと。アイト・E・メシアオウスです。
よろしくお願いします。」
『初めまして。私はメーラ・ラルウァス。』
[俺は… ナンフレット・ブランローザよろしくな。]
「初めまして…じゃないな。クラヌ・リヴモルトだ。」

「私もしておいた方がいいかな?
ルシフェル・T・オグル 気軽に呼んでおくれ。」
聞いたことあるような無いような名前だった。
なんだかカッコいい。

クラヌ「メモでもしておくか?」
メーラ『こら、いじめるな。』
クラヌ「オグルさん。結局こいつ守ってなんになるんですか。」
「言っただろう。戦力になると。」
「俺は反対です。」
[…俺もだ。]
『正直、歓迎はしないかな。信用ならないの。』
「…わかっている。前もそうだったなお前達。
でもこの子はあいつとは違う。」
『“契約”させるんでしょ?』
「あぁ。そうだとも。」
「また墓穴掘るんですか。」
[クラヌ、口を慎め。]
「ッ…。」
どうやら揉めているようだった。
そうだよな。所詮外部の人間なんだ。
すぐに受け入れられないのは当たり前だな。

「…皆様に歓迎されないのは分かってます。
突然現れて、家族になるって…。すいません。」
「嗚呼、君は謝らなくていいんだ。謝るのはこっちだよ。
急に家族を亡くし、そして新たな家族の一員に。
こんな無茶な話はないだろう。すまないな。」
「いいんです。これが僕の使命なんです。」
クラヌ「チッ……。寝る。」
足早に去っていってしまった。
どうやら嫌われている。
『あいつ、頑固なのよ。気にしないで。
まだあんたのこと信用出来ないけど、期待はしているから。』
そう言って彼女は帰っていった。
[詳しいことはよくわからないが…。事情があるのだろう。
ここに来る奴らは皆んな訳ありだ。気張っていけ。]
スタスタと歩いていってしまった。

オグル「…反抗期かな。」
「聞いてたんですけど契約って?」
「その話は後だ。さぁ、部屋へ行こう。」
エレベーターのボタンを押す。
扉がスライドして開く。乗り込むとグーンと下がっていった。
-----------------------------------------------------------------------------------------
クラヌ「チッ…なんで同じ過ちをしようとするんだ。」
イライラしながらベッドに沈む。
強引に目を閉じた。


続く

プリ小説オーディオドラマ