「これはまずい! 記憶たちが暴走している!」
ポポロンが慌てふためく。ロッカーの扉ががたがたと震え、中から光が漏れ出している。
「俺のせいだ……」
エルベが自分を責める。
「まだ手放せていなかったんだ。だから記憶が……」
「違う!」
美銀がエルベの手を握る。
「私たちの想いが強すぎたのよ。封印なんかじゃ、収まりきらないくらい」
ロッカーの中から、様々な声が聞こえてくる。
「ねえ、もう一度だけ、一緒に歌おうよ」
「まだ伝えたいことがあるの」
「こわれかけの夢でも、まだ輝いてる」
記憶たちが封印を拒んでいる。青春があまりにも鮮烈すぎて、簡単に片付けられるものではなかった。
「ロッカーバースト現象だ」
ロッカーが厳しい顔をする。
「記憶の密度が限界を超えた時に起こる現象。このままでは……」
「どうなるんですか?」
「記憶が爆発して、この空間を飲み込む。そして君たちは、永遠に過去に囚われることになる」
エルベと美銀は顔を見合わせる。
「でも、逃げるわけにはいかねぇ!」
エルベが立ち上がる。
「これは俺たちの記憶なんだから」
「そうね。最後まで、ちゃんと向き合いましょう」
二人はロッカーに向かって歩き出す。震えるロッカーに手を置くと、記憶の世界に引き込まれていく。
そこは、三年間の思い出が渦巻くスパイラルの世界だった。
入学式の桜、初めての文化祭、雨の日の図書室、屋上での夢の話、そして数え切れない日常の欠片たち。
「全部が混ざってる」
美銀が呟く。
記憶たちは叫んでいる。
「まだ終わりたくない!」
「もっと一緒にいたい!」
「こわれかけでも、夢は夢なんだ!」
エルベは走り出す。記憶の嵐の中を、美銀と手を繋いで駆け抜けていく。
「俺たちが逃げちゃダメなんだ。記憶と向き合って、ちゃんとお別れを言わなきゃ」
疾走する二人。記憶のスパイラルが彼らを追いかける。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。