「さあ、思い出を一つずつ、そっと中に入れるんだ」
ポポロンの指導の下、エルベはカセットテープをロッカーに入れる。テープが光に触れた瞬間、美銀の笑い声が空間に響いた。
「きゃはは!エルベったら、真面目な顔しちゃって!」
録音された過去の美銀の声。三年前のあの日、二人は屋上で将来の夢を語り合っていた。
「俺、音楽を作る人になりたいんだ。でも、こわれかけの夢かもしれない……」
「こわれかけでも良いじゃない。こわれかけだからこそ、美しいのよ」
その記憶がロッカーの中でゆらゆらと漂う。
美銀も日記帳を入れる。ページが開いて、文字が宙に舞い上がった。
『今日、エルベと初めて話した。緊張して変なこと言っちゃった』
『文化祭の準備、楽しかったな。エルベの歌声、もっと聞いていたかった』
『卒業まであと100日。まだまだ時間があると思ってた』
「美銀……」
エルベは知らなかった。美銀がこんなにもたくさんの想いを日記に綴っていたなんて。
「恥ずかしいでしょ? でも、これも私の大切な記憶。全部、ロッカーに預けて、すっきりした気持ちで卒業したいの」
二人の記憶がロッカーの中で混ざり合う。教室での何気ない会話、廊下ですれ違った瞬間、一緒に見上げた夕焼け空。
「ぽぽい! 封印完了だよ!」
ポポロンが手を叩くと、ロッカーの扉が閉まり始める。
“ガチャリ”
鍵が閉まる音。それは決別の音であり、同時に新しい始まりの合図でもあった。
「これで、俺たちは自由になれるんだな」
エルベがつぶやく。
だが、その時。
ロッカーが震え始めた。
「あれ? これは……」
ポポロンの顔が青ざめる。
中から、小さな声が聞こえてくる。
「助けて……」
「待ってて……」
それは、封印されたはずの記憶たちの叫び声だった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。