翌朝。
朝靄が残る中、二人は黄の街の大きな門をくぐった。
日差しを浴びながら、街道を並んで歩く。
シルクがふと、ンダホの背中に括り付けられた箒を見上げた。
ンダホが顔をしかめて笑う。
そんな他愛のない会話で場が和んでいたその時、街道脇の鬱蒼とした森が不自然にざわついた。
シルクの目つきが瞬時に鋭くなる。
草むらをなぎ払い、姿を現したのは巨大な牙を持つ中級モンスターだった。
低い唸り声を上げ、待って二人を品定めするようにじりじりと距離を詰めてくる。
シルクは腰の剣を静かに抜き放った。
その頼もしい背中へ、ンダホが慌てて声を張る。
シルクはニッと口角を上げた。
その一言に、ンダホの顔から怯えが消え、キュッと表情が引き締まる。
咆哮とともにモンスターが地を蹴った。
シルクは正面から愚直に迎え撃つ。
刃を交え、巨体の突進を絶妙な力加減で側方へと受け流す。
ンダホが掲げた箒から放たれた緑の光線が、地面を穿つ。
瞬間、太い蔦が何本も伸び上がり、モンスターの脚を頑丈に縛り上げた。
動きがピタリと止まる。
シルクの脚が爆発的な踏み込みを見せた。
一瞬の隙。
剣先が描いた閃光は、モンスターの胸元で輝く『核』を正確に穿っていた。
一閃。
ピキリと亀裂が入った核は砕け散り、モンスターの巨体は淡い光の粒となって風に溶けて消えた。
森に静寂が戻る。
シルクは息を整え、剣を鞘へと納めた。
ンダホは自分の手をじっと見つめたあと、おずおずとシルクを見上げる。
シルクは振り返り、一切の迷いなく言い切った。
ンダホの顔に、嬉しさと誇らしさが入り混じった笑みが広がる。
シルクはその肩をポンと力強く叩いた。
太陽の光が差し込む森の中に、弾けるような笑顔が咲いた。
モンスターを退け再び街道へと戻った二人は、港町を目指して足を進める。
初戦闘の緊張がほぐれたせいか、お互いの口も軽くなっていた。
ンダホが背中の箒をポンと叩く。
胸を張るンダホに、シルクはクスッと笑う。
くだらないやり取りで笑い合いながら歩く街道。
夕暮れが近づくにつれ、風の中にほんのりと「潮の香り」が混ざりはじめた。
シルクが足を止め、鼻をくすぐる風に視線を向ける。
街道の緩やかな坂道を登りきると、二人の視界が一気にひらけた。
一望する水平線。
オレンジ色に染まる夕暮れの海と、港にひしめく無数の船の帆。
波の音が、心地よく二人のもとまで届いてくる。
ンダホが歓声を上げる。
シルクもまた、広大な海を見つめながら目を輝かせた。
ここから船に乗り、海を渡れば、次の目的地である「青の街」だ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。