第65話

【仁瑠衣🔞】オメガじゃないのに
4,579
2025/02/26 15:03 更新
仁side
自室から漏れ出る、脳に響く甘い香り。なんだか頭がクラクラして、顔に熱が集まってくる。ふと、自身の呼吸がいつもより少し荒くなっていることに気付き、少しでも抑えるためにと静かに息を止める。頭のどこかで、冷静であれとアラートが鳴り響く。

いつもと比べれば、それはそれは調子の悪い状態なのだろう。歪みかけた視界を立て直し、微かに聞こえてくる音に耳を澄ます。そして聞き慣れたその声の正体が分かった時にはもう、俺はノックすらせず、ドアノブに手をかけていた。
仁
瑠衣……?
その名を呼んで、中に入る。香りがガンと強くなり、鼻腔から脳を焼いていく。甘ったるい、しかし本能的に惹かれてしまう、不思議な香り。その源…もぞもぞと動く大きな塊は、どうやら俺の衣類でできているようだった。
瑠衣
瑠衣
ん゙ん…っ……
その塊の中から聞こえたのは、甘く、少し掠れた声。俺の問いかけに反応するように精一杯絞り出された声は、強い香りに包まれて、そのまま部屋に消えていく。
仁
…おい、どうした
瑠衣
瑠衣
っ…なんでもねぇから、あっちいけッ、…
なんでもない、という嘘を見破ることくらい、恐らく誰にだってできるだろう。俺の部屋に入ってきている点、明らかに様子がおかしい点、未だに顔を見せないよう意地を張っている点…いくらなんでも、状況がいつもとは違いすぎる。

……にも関わらず、素直に言わない瑠衣に、ほんの少しだけ芽生えた悪戯心。
仁
へぇ
瑠衣
瑠衣
なッ、
その心を抑えることはしなかった。少し強引に、その塊に手をかける。1番上にあったその布をぐいと引っ張ると、見覚えのある服が目に入る。
仁
これは俺のパーカーだが。
瑠衣
瑠衣
あっ、
仁
これは…Tシャツか。
瑠衣
瑠衣
ぅ、…
瑠衣を包み込んでいる俺の衣類を1つ1つ取り上げ、瑠衣の姿を確認する。
仁
ボトムスもハンドタオルも…何を、
瑠衣
瑠衣
は、…っ……//
しかし、そこで瑠衣が見せた顔に、俺は射止められたように言葉を失ってしまった。切なそうな顔でこちらを見上げたと思えば、その目には大粒の涙。衣類を退かしたことによって、敏感に反応する身体も、漏れ出てしまう声も、荒い息遣いも、ダイレクトに耳に響いてくる。
仁
ッ、…
なんだかこちらがおかしくなりそうで、別の所へ視線を移す。きゅっと握られたその手には、またもや俺の服。

…これは所謂、巣作りというやつ、だろうか。

ーーーそれは、つまり。
仁
…瑠衣
お前、もしかして。

ーーー常に栄えるTOKYO CITYには、優秀な人材…αが多く集う。一方、αの母数が増えたことにより、Ωへの暴力的・性的な被害は当たり前に増加していった。これを少しでも防ぐために、この辺りでは第2の性に関する検査を受けることが義務づけられており、Ωには無償で抑制剤を配布することになっている。ネストに入る際もその情報は必須とされ、第2の性は所属するハウス内で共有しておくように言われている。

……瑠衣は、βだった筈だ。
しかし、この状況は、Ωに見られるヒートと呼ばれるものではなかろうか。
仁
……お前、
瑠衣
瑠衣
ッちがう!!!
まさかと思って口を開くと、言い終わる前に強く否定されてしまった。少し驚いて、それ以上言葉が出せなくなる。そんな俺に、瑠衣は真っ赤な顔を向けて畳み掛ける。
瑠衣
瑠衣
お、オレは、おめがじゃねぇ、
瑠衣
瑠衣
なのにッ…//
瑠衣の言葉は、そこで途切れてしまった。しかし、その言葉の先が、瑠衣の口から出されることはない。固く結ばれた唇は、よく見たら微かに震えている。
仁
…心当たりは
瑠衣
瑠衣
分かんねぇッ…
仁
……そうか。
1つ、また1つと、俺の服を瑠衣の上から退かしていく。遠くに置こうとすると切なそうな瞳を向けられるため、身体の横に退けるだけに留めてやる。そうして漸く見えた瑠衣の身体は、猫のようにくるりと丸まり、きゅっと何かを握っている。これは…俺のタンクトップか。
固く結ばれた口が、何かを言うことはない。それでも、これだけは離すまいと、その手には力が込められていた。
仁
……はぁ…
Ωの性を考えれば分かる事だ。巣作りをするために好むのは、αの香りが強いもの。スカジャンを俺が着てしまっている今、最も俺の香りが強かったのが、タンクトップだったのだろう。
仁
…とりあえず、“それ”
瑠衣
瑠衣
ッ、
瑠衣の下半身を指し、軽く盛り上がっているその部分にゆっくりと近付いていく。瑠衣自身、自分はΩではない、と主張しているのだ。今自分がヒートに陥っている状態に近いということに、本人も気付いているのだろう。

ならば、話は早い。
仁
ほら、触るぞ
瑠衣
瑠衣
や、嫌だッ……
仁
嫌じゃねぇ
瑠衣
瑠衣
ちが、オレは、おめがじゃない、からッ…
タンクトップは手にしたまま、俺の腕をぎゅっと握ってくる。手に込められる力はいつも以上に弱々しいが、諦めて離すこともない。今日は、少しばかり頑なだ。今にも泣きそうな顔をして、耳まで真っ赤に染めた顔で言っても、説得力の欠片もないと言うのに。
瑠衣
瑠衣
だい、じょぶッ…
そんな事を言ってくる。こいつは本当に、どれだけ甘えるのが下手なのだろう。
仁
我慢しても、瑠衣が辛いだけだぞ
瑠衣
瑠衣
っ…でも、だって…
仁
…なんだ?
わざとらしく、甘い声色で問いかける。ピクリと反応する瑠衣を見ると、こちらが我慢できなくなりそうだ。ただでさえ、自身の理性を抑えるのに必死なのに。

…なのに、こいつは。
瑠衣
瑠衣
っ……こわいッ…
仁
は、…
いつもは、強がりで、前向きで、弱音など殆ど吐かない。そんな瑠衣が、まさか怖いなどと言うなんて。甘え下手だとは思っていた、が、いざこのように言われると、それはそれで。
仁
………悪い
瑠衣
瑠衣
っ、あ、ちがッ、
焦る瑠衣とは反対に、俺はどこか冷静だった。…いや、脳がなんとなく澄んだような気がするだけで、どこも冷静ではない。

ただ俺の中のどこかで、何かがぷつんと切れた音がした。
仁
瑠衣のペースでやるな。
瑠衣
瑠衣
…………へ、
相当怖いのだろう。相当限界なのだろう。今や頬を真っ赤に染めながら、それでも自身のものには触れることなく、弱々しく俺の袖を握っている。だとしたら、可愛がってやらないと酷というやつだ。自分の中の加虐心が、優しさを上回る。今日はなんだか、優しくしてやれないような気がした。










瑠衣side
瑠衣
瑠衣
んッ、ふ…ぅ……//
片手には仁のタンクトップ、もう片方の手には先程脱ぎ捨てられたスカジャン。頭の下に回された仁の腕に抱き寄せられながら、与えられる快感に身を捩る。ゆるゆると上下する仁の手に、我慢できずに声が漏れる。クラクラするくらいに強い、仁の匂い。それに囲まれる充足感と、脳を焼くような快感。今まで味わったことの無いその刺激を、身体は勝手に求めてしまう。
瑠衣
瑠衣
んっ……く、っ…はぁッ……ッ、//♡
大好きな香りに包まれて、ものすごく気持ち良くて、もう何も考えられない。布が擦れる音にすら身体が反応し、腰のあたりがぞくぞくする。
瑠衣
瑠衣
んッ!っ、ふぁッ……//
そうして無意識に反った背を、仁の指先がなぞるように触れてくる。ずっと、ずっとずっと、気持ち良い。気持ち良いのが、止まってくれない。
瑠衣
瑠衣
〜っ、ふぁッ…ぁ、んんッ!!////
びくびくと身体が痙攣する。シーツを汚す、白濁したそれの生温かさが、少しだけオレを冷静にする。オレ、今、仁の手で。
瑠衣
瑠衣
はぁ、はぁッ……//
こんなに脳は働いていないのに、甘えるように仁の目を見てしまう。そうして、その目に映る光景に、ごくりと唾を飲む。なんで、こんなに、物足りないんだ。もっと…もっと、触れてほしい。沢山、甘やかして、それで。…こっちも、気持ちは良い、けど、欲しいのは…求めてしまうのは。
瑠衣
瑠衣
ッ、
自身の後孔が、切なくなってきゅぅ…と締まる。

なんだ、この感覚。
瑠衣
瑠衣
、…ぅ……//
触って、なんて言ったら、幻滅されてしまうだろうか。息を整えながら、切なさにきゅっと唇を噛む。なんだよ、これ。オレの身体、どうなってんだよ。
仁
は……瑠衣、…//
瑠衣
瑠衣
んぅッ?!////
耳元で聞こえた、大好きな人の声。低くてかっこよくて、熱を帯びたその声に、またも身体が反応してしまう。その声の主は、オレの胸を弄びながら、首筋へと移動していく。そうして首筋に沿わされた舌の動きに合わせて、またオレの腰が浮く。悔しい。なんで、こんなに。
ちゅぅッ…
瑠衣
瑠衣
ッ、//
そんなことを考えていると、吸い付くような音がして、更に快感が走る。

もう、嫌だ。

早く、仁がほしい。
仁
……おい、瑠衣?
瑠衣
瑠衣
ん、ぇ……?//
そんなことを、思ってしまったのが、いけなかったのだろうか。
仁
離さねぇと、良くしてやれねぇぞ
瑠衣
瑠衣
…………?
仁
これ
オレの元へと顔を埋める仁は、離れる様子がない。それもその筈だ。オレの腕はいつの間にか仁の背に回され、その身体をぎゅっと抱きしめるような形になっている。
瑠衣
瑠衣
…っ、!!?////
仁
……っふ、なんだその顔は笑
瑠衣
瑠衣
な、べッ…別にッ…!!
別に、なんだろう。だって、オレは仁がほしくて、仁にもっと気持ち良くしてほしくて、後ろも…触ってほしくて、…沢山沢山、甘やかしてほしくて。
瑠衣
瑠衣
っ…そ、の……
仁
なんだ?
言わなきゃ、ダメなことは分かってる。こいつが、こういうところを察してくれるような優しい奴じゃないなんて、今更だ。
瑠衣
瑠衣
っ、ぅ…ゔ〜……////
仁
瑠衣…?
それにオレも、もう耐えられない。我慢できない。
瑠衣
瑠衣
ッ…1回しか、言わねぇからッ……//
横になったまま、自分の手で片足を持ち上げ、脚を開く。もう片方の手で隠すようにしながらそこに触れると、既に柔らかくなっていた。
瑠衣
瑠衣
(っ、なんでッ……////)
いつもだったらこうはならないのに。

でも、本能には、抗えない。

くちゅりと音を鳴らしながら、指先をずらす。そのままゆっくりと指を開き、その場所を露わにする。仁、ここまで、やったんだから、いい加減に。
瑠衣
瑠衣
…こ、っち…も、さわって……
仁
な……//
目が潤んで、視界がぼやける。それでも、見上げた先には仁がいて、その目はこちらを向いている…それだけは、しっかりと理解できた。

見られてる。今、仁に。
仁
……あぁ、
そうして短く返事をした仁は、ゆっくりとオレに近づいて、その場所に顔を埋めてきた。
瑠衣
瑠衣
っ、え、じん…まっ、
仁
待たない
瑠衣
瑠衣
ひッ…ぁ、やッ…おまッ、んっ//
違う。触って、とは、言ったけど。
瑠衣
瑠衣
ちが、ねぇッ、////
仁
ん…?
瑠衣
瑠衣
ッん、ぁ//♡
舌で、やってなんて、言ってない。
仁
ほほはここか
瑠衣
瑠衣
ふぁッ…//、っん♡
今までこんなことされたことなくて、こんなとこ舐められたことがなくて、羞恥心が押し寄せる。顔にどんどん熱が集まっていくのに、気持ち良さは容赦なく蓄積していく。
仁
…これ……
瑠衣
瑠衣
ひぅ、…//
そんなとこで、喋らないでほしい。仁のことを見たくても、あまりの恥ずかしさに見ることさえままならない。その景色でさえいやらしすぎて、もうどうにかなりそうなのに。
仁
…指、入りそうだな。
瑠衣
瑠衣
ん、ぇ…?
今、なんて。

そんなことを思った時には、もう遅くて。
瑠衣
瑠衣
んぁ、あッ?!////
仁の指先があてがわれ、つぷ…とオレの中へと入ってくる。一度侵入を許した指はもう止まってはくれなくて、わざと内側をなぞるようにして、抽挿が繰り返されていく。
瑠衣
瑠衣
んんっ…あ、ひぅッ…//
なんか、変だ、やっぱり。Ωって、こんな感じなのだろうか。仁に触れられたところが、熱くて、きゅうってして、意識がそこにしか向けられなくなる。押し寄せる快感の波に、素直に飲まれてしまいたい。
瑠衣
瑠衣
ふ、ぁんッ、やぁあっ//
仁
…嫌、か?
瑠衣
瑠衣
ッ、ん!//
耳元で囁かれて、もうおかしくなりそうだった。とろりとした目で見つめた先には、にやりと笑う仁がいて。
仁
もっと、か?
瑠衣
瑠衣
っ、うっせぇ、
仁
ふは、そうか。
瑠衣
瑠衣
んッ…//♡
仁は基本的に不器用だ。だからなのか、前戯はオレが1人でするよりも激しくて、すぐに達してしまいそうになる。いつもからかいたくなるその短所にまで、今や翻弄されてしまっている、とか、こんなのって。

あぁ、もうそろそろ、我慢できない。
瑠衣
瑠衣
っ、〜〜ん、ふぁ、あぁっ!////
仁
びくびくと身体が痙攣する。気持ち良い。はぁはぁと肩で息をついて、息を整える。ゆったりと引き抜かれる仁の指に、また腰が動いてしまうのが恥ずかしい。呼吸を整えながら仁を見上げると、優しくキスを落とされる。甘くて優しいその唇が、なんだか今は少し物足りないくらい、仁がほしかった。仁のものに、してほしい。

なのに。
瑠衣
瑠衣
ッ、え、
すぐ近くに感じていた温もりが、すっと離れていく。

やだ。待って。
瑠衣
瑠衣
ッなぁ、仁っ…//
行かないで。

そう、言いたかったのに。
仁
そこにいろ。
その一言に、伸ばしかけた手が止まる。仁は引き出しの前で立ち止まると、その奥から小さな箱を取り出した。中から1つ袋を取り出し、ぴり、と破りながら、こちらに戻ってくる。
仁
……良いんだな?
そう言うと、仁はするりとボトムスに手をかける。鋭く立ち上がった仁のそれに、先程取り出したものを付けていく。そんな景色に、どういう訳か、オレは釘付けだった。
瑠衣
瑠衣
っ、うんッ…//♡
横になったまま、近づいてくる仁を待つ。きっと、もっと、沢山、欲しいものをくれるのだろう。これからされるであろうことに期待を膨らませて、オレはごくりと唾を飲み込んだ。










杖道side
瑠衣の様子がおかしいから調べてくれ、と仁から連絡があったのは、昨日の朝だった。その後、ネストに要請し、届いた薬を飲ませたのが昨日の夜。どうやら瑠衣は、薬の影響で一時的にΩになっていたようだ。一晩経って、瑠衣の様態もすっかり回復したようだった。
仁
なんだ、治ったのか
瑠衣
瑠衣
なんだってなんだよ!
仁
いや…
仁が目を逸らす。大方、「Ωであれば、番にできたのに。」…とでも、思っているのだろう。勿論、そんなことをしなくとも、瑠衣が仁の恋人であることには変わりない。その上、瑠衣の調子が戻って嬉しいのも事実だろうから、本人としては少し複雑な気持ちなのだろう。

なんせ、初めてなのだから。

仁が、Ωのフェロモンによって発情したのは。

αには、Ωのフェロモン耐性を強化する薬が支給されている。仁はそれを摂取している上、元々の女嫌いも幸いしてか、ヒート状態のΩが近くにいても影響を受けてこなかった。それこそ、運命の番でなければ振り回されることはないのではと思うくらい、耐性があったのだ。

にも関わらず、薬の効果で一時的にΩとなった瑠衣には、敵わなかった。

つまり、それは。

この2人は、所謂運命で。
杖道
杖道
(本当に、微笑ましい。)
恐らく、瑠衣はいつもより仁が意地悪だった、くらいにしか思っていないだろう。なんなら、そんなことを考える余裕はなかったかもしれない。しかし仁は気付いた筈だ。瑠衣に対する抑えられない悪戯心は、瑠衣自身から出ているフェロモンが原因であることに。本能的に、瑠衣への気持ちを抑えられなくなっていたことに。

ふと、瑠衣の項に、ちらとキスマークが見える。もしも本当に瑠衣がΩになってしまっていたらと、仁なりに気を遣ったのだろう。噛み付きたい本能を抑え、何度も同じところに唇を落とした痕。仁の独占欲を垣間見たその時、面白くなさそうな目の仁が口を開いた。
仁
…なんだ、オッサン
杖道
杖道
なんでもない。
杖道
杖道
ただ、また振り回されているなと思っただけだ。
瑠衣
瑠衣
だよな!?
瑠衣
瑠衣
やっぱオッサンもそう思うだろ?!
杖道
杖道
え?いや…
瑠衣
瑠衣
お前のせいで昨日1日潰れたんだからな!
瑠衣
瑠衣
仁のバカ!!
仁
うるせぇ、世話してやっただろ
仁
…あとオッサンも。
瑠衣
瑠衣
は?どゆこと?
杖道
杖道
…はぁ、全く。
余計なことは言うな、か。

…やれやれだ。

とはいえ、瑠衣が無意識に振り回しているようでは、何を言おうと意味はない。今日もまた、満更ではなさそうな仁のため息が、事務所の空気に溶けていった。

プリ小説オーディオドラマ