今まで師範の前で崩したことのなかった正座を
潰して 、 打ち覆いを被った二人を見つめる .
どの道間に合わなかった 、 きみは悪くない .
と医者は言った . それでも自分を責めてしまう .
あれだけ親切にしてくれた .
美味しいご飯を食べさせてくれて
暖かいお風呂にいれてくれて
安心できる寝床を与えてくれて .
私の幸せな生活は 、 二人に支えられていたのに .
嫌な夢から覚めた時の感覚 .
確かにあったはずなのに信じられなくて 、
でも心のどこかで認めている恐怖 .
これからどうしよう . 狛治と二人で ……
…その前に狛治になんて説明しようか 、
井戸に毒を入れられて死にました .
なんて納得できるわけがない .
天井まで昇っていた太陽が傾いてくる時まで
二人をただ座って見つめていた .
返事は無い . 触れた手は冷たくて動かない .
首周りには深紅の血液が滲んでいる .
なんで …… なんで?
狛治と祝言を上げるんじゃなかったの?
夫婦になるんじゃなかったの?
あんなに笑顔で喜んで 、 幸せそうだったじゃん .
私から狛治を奪ったくせに .
狛治の青白くて冷や汗の滲んだ顔を見れば
現実なんだと今更ながらに実感した .
湧き上がってくる感情が薄らと目に膜を張る .
泣いちゃダメだ . 一番泣きたいのは
狛治なんだから 、 私がしっかりしなきゃ .
しばらく時間を置いて言葉を返された .
恋雪が 、 最愛の人が亡くなったんだ .
辛くないわけがない .
恋雪が生きていればまだ狛治も救われたのかな .
狛治は見開いた目をこちらに向けた .
限界だった . 昼頃 、 一緒にいたあの空間 .
一緒に過ごしていたはずなのに 、
一番死んでも影響のなかった私だけ
生き残ってしまった .
お世辞でも冗談でも 、 今この瞬間 .
いや 、 ずっと前から狛治に救われていた .
好きだよ 、 大好き .
狛治は恋雪のこと好きでいいから 、
私は狛治のことを好きでいさせて .
辛いのに 、 辛いはずなのに 、
気を遣って話してくれる優しいとことか 、
本当に大切な人にだけ見せる顔とか 、
そういうところが .















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。