私は路地裏の麦酒缶に腰を下ろした。
ここは魔都ヨコハマ……らしい。周りの群衆どもが話してたから情報の精度は知らんけど。
そして研究所を襲った炎は「龍頭抗争」というまあ物騒な裏社会の戦いの戦火らしい。これも周りの群衆たちの話から知った。
ぽつりと呟いたら麵麭が降ってくる!……なんていう幸福なことは起こらず(起こるわけがない)私は深い深いため息をついた。
考えてみれば、研究所から抜け出してきた私が悪いわけだ。
私は研究所で実験体として人体実験されてきた普通の十三歳だ。
研究所は割と実験体にもホワイトで(←マジかよ)文字の読み書きと簡単な計算、あと一般常識ぐらいは教えてもらっていた。
ただめちゃくちゃ痛かったし苦しかったけどね。ホワイトとはなんぞや。
竜頭闘争のあの戦火で研究所の民が避難することになり、私だけ勝手に逃げ出し、このヨコハマまで逃げたのが現在の発端だ。
そうだろう。自由なんぞいういかにも責任が伴いそうなものを、たかが十三歳の小娘が背負えるわけがない。
寒いし腹も減った。そして地味に尻が痛い!!!!!!!!!麦酒瓶なんぞに座らなかったらよかったちきしょー!
よし。研究所に帰ろう。
出鱈目に走ったから道もわからんし、職員さんが「この場所は政府の重要機密だ」とか話してたけど、あれは気にしねーことにしよう。きっと帰れるさ。麵麭屑撒いておいたから(ヘンゼルとグレーテルかい!)
そう決心し立ち上がると、上から男子が降ってきた。
これあれか!?落ちもの系ラブコメってやつか?って思ったのも束の間、ラピュタの「親方!空から女の子が!」のノリで、帽子を押さえたままふわふわ降りてくる。メアリーポピンズかハウルか?
待って誰々!?研究所の職員?研究所の民にこんな空飛べるやつっていたっけ?
しかも兄?え?にいちゃん?
……私に兄弟っていたんだ……
おうそれは嬉しい。
なんか奢ってくだせぇ中也兄さん。
割とイケメンな中也兄さんとは違くて、私はフツメン。百人いたらそのうち十人ぐらいいそうな顔だ。
こわいおにいさんかよ

ということで、私は中也兄さんと住むことになった。
中也兄さんはこわいおにいさんではなかった。いいにいさんだった。
しかし私は知らなかった。
今後「こわいおにいさん」が私の人生にはそこそこ出てくると言うことを……












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。