朝の空気が少し冷たくなってきた。
ベランダに出たあなたが「もう秋だね」と呟くと、
ゴヌが背後から毛布をそっと肩にかけた。
「風、冷たいだろ。風邪ひくなよ」
「ありがとう……優しいね」
「いつもこうしてたいだけ」
そのまま、背中越しに感じる体温が心地よくて、
あなたは小さく笑った。
⸻
昼下がり。
二人は手をつないで街へ出かける。
並んで歩く道の両脇には、色づいたイチョウや紅葉が揺れていた。
「見て、綺麗……」
「本当だ。あなたの方が綺麗だけど」
「……だからそういうの、さらっと言わないで」
「本音なんだけど?」
ふざけるように笑い合いながら、
小さなカフェに入って、窓際の席に座る。
カプチーノの泡が少し唇についたあなたを見て、
ゴヌが指でそっと拭う。
「……ついてる」
「ん、ありがと──」
「ついでに一口、飲ませて」
そう言ってマグカップを受け取り、同じ場所に唇をつける。
思わず視線が絡み、
静かな秋の午後に、ふたりだけの空気が生まれる。
⸻
帰り道、並んで歩く手が自然に強く握られた。
「寒くなってきたな」
「うん。でも、こうしてると平気」
「……じゃあ、ずっとこのままでいいな」
頬を染めながら、あなたは小さく頷いた。
⸻
夜。
部屋に戻ると、二人で夕飯を作る。
かぼちゃスープの甘い香りが漂い、
テーブルには焼きたてのパンとサラダ。
「うん、美味しい!」
「でしょ?秋は食欲の季節だからな」
「……なんか幸せ」
食後、ブランケットを分け合いながら、
映画を観る時間。
画面の光が二人の顔を柔らかく照らす。
ゴヌの肩にもたれると、
彼の指先がそっと髪を撫でた。
「最近、あなたといる時間が本当に落ち着く」
「私も。……ずっとこうしてたい」
「なら、約束。来年の秋も、一緒に見に行こう」
「約束だよ」
指切りを交わし、ふたりは微笑み合った。
外では、秋風が静かに木の葉を揺らしていた。
その音がまるで、ふたりの未来を祝福しているようだった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!