授業が早めに終わり、これからみんな部活を見学しにいくらしい。
赤葦くんは、テキパキと準備を済ませてまっていてくれた。
「ゆっくりで良いよ」
とあくまでもマイペースに言う彼に申し訳なく思いながら慌てて準備を済ませた。
『赤葦、くん…少し待ってて。ぼっくん待つから。』
「絶対待ってないと…だめ?」
『だめ。ぼっくんしょぼくれちゃう』
それで、先輩やぼっくんの同級生の方々に迷惑なんてかけられない。
「……。」
赤葦くんは、少し目を伏せて下を向く。
『なんか、ごめんね…今度は"二人"で行こう』
二人、という言葉に反応して少し赤葦くんは顔を上げた。
後ろからドタドタと足音が聞こえる。
「ヘイヘイヘーイ!!!!!」
この声は
『ぼっくん!!!ちょ…静かに……ハァ』
止めるのも面倒くさくなって頭を抱える。
「あのひと…がもしかして"ぼっくん"?」
拍子抜けしたようにパチクリと目を瞬かせる赤葦くんに微笑んでいう。
『そうだよ。木兎光太郎って言う名前。おさな』
またもや言葉を遮られた。
そのままぼっくんは
私の手を強く引いて走り出そうとした。
突如の行動にびっくりした私が赤葦くんを掴んで引きずるという。
なんとも言えない絵面が出来てしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。