『せーのッ!!!』
教室から飛び出す茜の後を追うように六花が出てくる。
茜の手には折れた血まみれの竹刀が握られており、六花の手には教室の掃除用具の箒が握られている。
まず茜が1匹の頭を刺す。
声に気づいたゾンビ達はこちらへ近づいてくるが六花がゾンビの足を払い、転ばす。
茜が転んだゾンビの頭を割る。
これの繰り返し。
六花が何匹かを転ばす。
茜が転ばされたゾンビや歩けないゾンビ達の頭を潰す。
グチャグチャと続く音に耳を塞ぐ未来と日夜と、箒を持った嬉姫と慧莉を教室へ残し、
他のメンバーは死んだ……いや、動かなくなったゾンビ達を、箒で道を作るようにどかす。
気持ち悪い音がなる。
茜がゾンビの頭を潰す音。
グチャグチャになったものをどかす音。
全部全部、平和な日々なら出会わない音。
茜と六花は別方向へ走って行った。
*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*
階段を椅子と机でどかした。
廊下は血まみれだった。
【物】についてはチリ取りなどで出来るだけ窓から捨てた。
気持ち悪かった。
グロテスクで、真っ赤で、ドロドロしていて。
その日は、掃除をなるべくしたら夜になってしまっていた。
普通の生活なら自分の家で寝るはずだった。
普通の生活なら学校には見回りの先生が居るはずで、見つかったら帰される……帰れるはずだった。
普通の生活なら、親と会えた。
普通の生活なら、明日に期待して、ゆっくり、眠るはずだった。
普通じゃないから、今日は明日になんて期待出来ない。
親には会えない。
学校に居るのも、多分私達だけ。
寝るところに血があったら困ると言うことで、階段前じゃない英語科、数学室で寝る事になった。
教室にあったゴミ袋達をガムテープで止めただけの敷物。
その上に座って壁に寄りかかったり、ひざに寝かせたりしてジャージをはおる。
………亡くなった友達の分も手を合わせて黙祷。
借りるしかなかった。
万が一の事を考え、扉に鍵を掛ける。
扉の前に1つだけ机を置いて、教室の端っこにビニールを敷く。
…
生きていくため。
生きたいから
助けが来ない…
そんな事は考えず、もしかしたら生きているかもと…
淡い期待をいだく。
無駄だと知りながら。
思い出すだけでつらい。
友達がグチャグチャになっているとこ。
友達が襲われていたところ。
助ける事を諦めて殺めてしまったことも。
私と嬉姫のコップ式の水筒のお茶を全員分に分けて少しずつ飲む。
…
*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。