第17話

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2021/07/04 12:29



『送ってくれてありがとう』



ジョングクはあなたのホテルの部屋の前まで送りに来た



「こちらこそ、会ってくれてありがとう」


『韓国には来たけど、まさかジョングクに会えると思わなかったから嬉しかったよ』




ヌナ何言ってんだよ
会えないわけない

韓国に来てくれたんだったら、無理矢理でも顔見に行くよ



「あなたに会いに時間作るに決まってるんじゃん」


『へへへ。ありがとう』

あなたは照れるように笑う



『じゃあまたね』


あなたは手を差し出す
ジョングクは握り返す


お別れの合図


その瞬間奥のエレベーターの方から人の話し声が聞こえた

あなたはすぐさま反応して手を離す



『じゃあ気をつけてね!見つからないように!』


あなたは俺と一緒に見られるとまずいと思ったみたいで
すぐに部屋に入ろうとドアを閉めようとする



「…待って」



ジョングクは手を伸ばして閉まりかけたドアを阻止する

そして、そのまま押し入るように部屋の中に入る


『!!!』



あなたは大きな目を更に大きくして驚く

そして、押し込んだ勢いであなたを抱きしめた







〜〜〜〜






急な出来事で頭の中がついていけない

今何が起こっているのだろうか



ジョングクと名残惜しいけど
お別れの握手をしていたら

人の気配がしたので焦って
部屋のドアを閉めようとして

ジョングクがそれを止めて
部屋に入ってきて…



そして抱きしめられてる…


さっきのハグとは全然違う

力強く包み込むような



5つも歳が下だというのに
相変わらず身体は鍛えられていて

女子にしては大きめな私の身体をすっぽりと包んだ



『…っ!』


突然のことすぎて声が出ない




「あなた…まだ離れたくない」


ジョングクの腕の力が強くなる



「せっかく会えたのに、こんなすぐ帰るなんてできない…」


『ジョングギ…』




ジョングクはあなたの肩を優しく掴んで身体を離す


目と目が合う
その目は真剣そのもの




「好きだ」
















〜〜〜〜














「今ごろジョングクはあなたさんとデート中か〜」


ジンの家に訪れていたジミンとナムジュンはデリバリーしたチキンを食べていた



「そう思うとジョングクも大人になったよなぁ」


「本当だよ。ジンヒョンはいつになったら恋人を作るの?順番でいうとヒョンから行かないと俺たち結婚もできないよ〜(笑)」


ジミンはチキンを頬張りながら冗談を言う




「ア〜!ほんとそういうこと言うよね!まだ結婚する気もないくせに」

ジンは呆れたように笑っていう



「もうそれを言うなら俺たちみんなマンネに追い抜かれてるよ」

ナムジュンは真剣な顔で言う



確かに…




「ジョングクを少年の時から見ているけど、好きな女性が出来たなんてこと確かなかったよな?」

ジンはいう


「そんな暇も出会いもなかったからね。若いうちにデビューしたから」

ジミンは少し遠い目をする



「恋愛初心者のジョングク…好きな人を前に暴走してないといいけど…」

ナムジュンも同じように遠い目をしてチキンを食べた














〜〜〜〜










時が止まったような現実味のないことが起きている

目の前の好きな人が私を見ていた



「好きなんだ…。こんな気持ち初めてなんだ」



映画のワンシーンみたいだけど緊張感がすごく伝わる


さっきまでどもっていたジョングクは死ぬほどかっこよくて
こういうシーンでしっかり伝えてくるのが
さすがBTSのジョングクだと感じさせられた




『ジョングギ…』


やばい…

涙が溢れそうだ




あなたの目には涙がジワジワ溜まりだす


「あなた…?」




信じられない

好きな人に好きって言われるのって
こんなに嬉しくて感動してしまうものだったかな


久しぶりのこの感情に
叶わない片思いをしようと決心したこの時に



こんな言葉を伝えてくれるなんて…




「なんで泣いてるの?あなた…嫌だった?困っちゃった?」


ジョングクは不安そうな顔であなたの顔を覗くように見る




そんな顔で見つめないで…

嫌なわけない…




次の瞬間、廊下を歩く人の声があなたの耳に届く



「ねぇ、さっき20階のレストランにBTSのジョングクが来ていたらしいよ」


「チンチャ!?レストランのスタッフは羨ましいわ〜。私たちホテルマンの方が意外と会えないのよね〜」




さっきの人の気配の人達らしい
このホテルの従業員の女性スタッフたちが話しながら歩いているみたい



「一体誰と来てたんだろう?」


「そこまでは教えてくれなかったのよね〜」


「えー!そこは聞いとかなきゃ!」


「女性だったらショックだわー」


「私も〜!」



女性スタッフが笑いながら
あなたの部屋のドアを前を通り過ぎている


いくらスタッフ同士の会話でもこんな大声でするなんて

しかもプライバシーに関することなのに…




ジョングクもその会話が聞こえてたみたいで苦笑いする


「人の噂話は怖いな…w」



ジョングクは笑ってみせるけど

私にとっては笑えない



信用があるホテルだからと個室まで用意してくれていたのに

もうこうやって目撃情報は出回るのが今、目の前でわかったのだ



さっきまで幸せの境地にいたのに現実を突きつけられた




何を期待したんだろうか




私はジョングクがすごく好き


でもこれ以上の関係を私が願ったら
ジョングクにもBTSにも迷惑がかかる



私は何を浮かれていたんだろうか




あなたの目から涙がついに溢れる


「オ…!」


ジョングクは焦ってあなたの涙を拭う



『…ジョングギ』



「ん?」






『…ありがとう。』



あなたの涙は止まらない


ジョングクはあなたの言葉に喜んでくれていると感じて笑う




「あなた…」






『でも…ごめんなさい』



「え…?」



『私はジョングクの事好きじゃない』









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