春の光が、校舎の大きな窓から差し込んでいる。
制服の襟元をそっと整えながら、私は深呼吸をした。
雄英高校ヒーロー科。
全国から選び抜かれた生徒が集まる場所。
その教室の扉の前で、私は立ち止まっていた。
──きっと、みんなすごい人ばかりだ。
──私なんかが、ここにいていいのだろうか。
そんな不安が、喉元までせり上がってくる。
でも、握った拳は自然と力が入っていた。
小さく呟いて、教室の扉を開ける。
途端に、目の前に広がったのは、
賑やかな色とりどりの光景だった。
ざわめき、笑い声、緊張の気配、期待の色。
それらが一気に押し寄せてきて、
視界の端が淡く滲んだ。
私は視線を下げ、
なるべく目立たないように、後方の席へと足を運ぶ。
隣の席から声をかけてきたのは、明るい金髪の少年──上鳴電気だった。
彼の声は、柔らかなオレンジ色をしていて、
少しだけ緊張がほぐれる。
にこっと笑う彼の隣で、ピンク色のスパイラルがはじけた。
そう、私の個性──共感覚(シナスタジア)は、こうして周囲の声や気配を「色」として捉える。
それが時に、感情の波となって押し寄せてくる。
この日、私は様々な“色”に出会った。
無邪気で元気な黄色。芦戸三奈。
おっとりとした緑色。麗日お茶子。
落ち着きのある青みがかった声。飯田天哉。
そして──
鋭く刺すような赤。
クラスの前列で、不満げに机に足をかけていたのは、
爆豪勝己だった。
そんな中、教室の扉が再び開き、
黒髪の男が静かに入ってきた。
無造作な長髪、目元に隈。
気だるげなその雰囲気に、教室の空気が一変する。
その瞬間、クラス全体の“色”が、引き締まった。
ここから、ヒーローとしての人生が始まる──
そう感じたのは、きっと私だけじゃない。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。