第2話

はじまりの教室
25
2025/08/12 13:25 更新
春の光が、校舎の大きな窓から差し込んでいる。

制服の襟元をそっと整えながら、私は深呼吸をした。



雄英高校ヒーロー科。

全国から選び抜かれた生徒が集まる場所。

その教室の扉の前で、私は立ち止まっていた。



──きっと、みんなすごい人ばかりだ。

──私なんかが、ここにいていいのだろうか。

そんな不安が、喉元までせり上がってくる。

でも、握った拳は自然と力が入っていた。


あなた
いこう…


小さく呟いて、教室の扉を開ける。

途端に、目の前に広がったのは、
賑やかな色とりどりの光景だった。

ざわめき、笑い声、緊張の気配、期待の色。

それらが一気に押し寄せてきて、
視界の端が淡く滲んだ。

私は視線を下げ、
なるべく目立たないように、後方の席へと足を運ぶ。


上鳴電気
ん?俺、上鳴電気!よろしくな!

隣の席から声をかけてきたのは、明るい金髪の少年──上鳴電気だった。

彼の声は、柔らかなオレンジ色をしていて、
少しだけ緊張がほぐれる。

あなた
あ……雨宮、雫。よろしく、お願いします


にこっと笑う彼の隣で、ピンク色のスパイラルがはじけた。

そう、私の個性──共感覚(シナスタジア)は、こうして周囲の声や気配を「色」として捉える。

それが時に、感情の波となって押し寄せてくる。



この日、私は様々な“色”に出会った。


無邪気で元気な黄色。芦戸三奈。

おっとりとした緑色。麗日お茶子。

落ち着きのある青みがかった声。飯田天哉。


そして──


爆豪勝己
チッ……なんでクソデクと同じクラスなんだよ…

鋭く刺すような赤。

クラスの前列で、不満げに机に足をかけていたのは、
爆豪勝己だった。



そんな中、教室の扉が再び開き、
黒髪の男が静かに入ってきた。



無造作な長髪、目元に隈。
気だるげなその雰囲気に、教室の空気が一変する。


相澤消太
……静かにしろ。俺が担任の、相澤だ

その瞬間、クラス全体の“色”が、引き締まった。


ここから、ヒーローとしての人生が始まる──

そう感じたのは、きっと私だけじゃない。


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