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第55話

お知らせ + BADEND
750
2020/04/28 07:53
「鬼舞辻無惨のお嫁様」

作者が行き詰まったため、しばし暇を頂きます…

楽しみにしてくださっている方、申し訳ありません。

もう少しだけ…もう少しだけお時間を下さい…

かわりにこっそり書いてた「人 守 鬼」のbadend書きます。

これでご勘弁を…












無限城に行くとき、

あなたちゃんが誰にも会わなかったら。



※タイトル詐欺

_______________________

お館様のお屋敷の方で火が上がるのが見えた。

どうやらもう来たらしい。

私の分身は上手くやってのけただろうか。

とにかく行くしかない。




あなた「ぎゃっ」

お屋敷の跡地に着いたと思ったら、

いきなり地面がなくなった。

私はぐるぐる回転しながら中に落ちた。

もう少し受け身の練習をしておくべきだった。

私は無限城で1人になってしまった。

方向音痴なりに走り回った。

炭治郎と義勇さんと錆兎さんが

猗窩座と戦っていたので参戦した。

なかなかきつかったが無事に勝利。

炭治郎と義勇さんと錆兎さんに別れを告げて、

1人無傷なので走った。


次にしのぶさんと伊之助くんとカナヲちゃん、真菰さんが

童磨と戦っていたのでお手伝い。

なんとか勝てたけど、動けなくなっちゃったしのぶさんと

真菰さんを伊之助とカナヲに頼んで私は先を急いだ。

まだ、1番会いたい人に会えてないから。



ズコッ

あなた「ひっ…」

ヒュッと喉から変な音が出た。

足に何かが引っ掛かったから。

あなた「手っ…腕…」

人間の、腕。

自分の腕が飛んでいくことには慣れていた。

だけど、他人の腕にはどうも耐性がない。

そして…

あなた「これ、は…」

見慣れた、隊服の袖。

恐らく、変な音が出た原因はもっぱらこっちだ。

よく見慣れた、着物の袖みたいな腕。

この隊服来ている人なんて、

私は、2人しか知らない。

あなた「…時透さん…の…」

黒死牟「…お前は」

いきなり前から声をかけられた。

ガバッと顔をあげた。

認めたくない現実が目に飛び込んでくる。

無一郎「あなた…?」

あなた「…時透く、ん…」

手も足もない。

血塗れ。

どうか、作り物だと言ってください。

この鼻につくきつい鉄の臭いは嘘だと。

彼はどこか別のところで元気でいると、

誰か、私にそう言ってください。

嫌だ…

あなた「お前っ…」

黒死牟「上弦の…零の…娘ではないか…

    お前も…こっちに来るといい…

    お前も…強くしてやろう…」

あなた「…せ」

黒死牟「なんだ」

あなた「かえぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 _私の、大事な人を、返してくれ_








あなた「はぁ…はぁ…はぁ…」

気が付いた時には…私も鬼も血塗れだった。

誰の血?私の?

私、痛い?

イタイ…?

黒死牟「まさか…これほどまで…強いとは…」

あなた「…黙れ、とっととくたばれ」

私の目の前に落ちる

汚ならしい鬼の頚を

ありったけの力で蹴り飛ばす。

あなた「もど、もどらなきゃ…

     戻らないと…」

痛い、重たい、体を、足を引きずる。

愛しい人の元に、戻りたい。

あなた「はあっ…」

ドシンッ

何かに引っ掛かってまた転んでしまった。

…もう1本の腕だ。

私のでは、ない。

あなた「む、無一郎、くん…」

早く…早く繋げてあげなきゃ…

それができるのは…鬼の私だけなのに…

落ちている私のではない腕を

拾い上げて抱き締めて、私はまた足に鞭を打った。

あなた「無一郎くん…起きて…無一郎くん…」

体のあちこちが悲鳴をあげていた。

そんなのもう、関係ない。

私より、彼の方がよっぽど痛かっただろうから。

助けてあげなきゃ。

元に戻してあげなきゃ…。

彼の体を、死ぬ気で揺らした。

だけど…

あなた「…ごめんね…遅くなって…ごめんね…」

もう、それは不可能だと、

彼の体が語っていた。

冷たくて…生気が全くなかった。

あなた「…氷みたい」

さすがに、

事切れた人間を蘇らせることは出来るわけがない。

私は神様じゃない。

ただの、鬼だから。

あなた「いやだ…起きて…

     私…貴方のことが好きなの…

     初めて、好きだって気が付いたの…

     ねえ!これが愛なんでしょ!?

     教えてよ!私馬鹿だからわからないの!

     貴方がいなくなっちゃうの、堪らなく苦しいの!

     ずっと一緒にいたいの!

     ほら!貴方に貰った帯留め…お守りなの…

     桜も見たいの!花火も見てみたいの!

     約束したじゃない!

     お願い、起きて…起きてよ…」

彼の体にすがり付いて泣くことしかできなかった。

わかってたよ、無駄なことくらい。

泣いたってどうしようもないことくらい。

でも、泣くしか出来ないじゃない。

本能のままに、私は泣き叫んだ。




…ふと、初めての感情が沸いてきた。

私の目の前には何がある?

…血だ…肉だ

あなた「美味しそう…?」

なんだろう。

今まで、

人間の血を見ようが肉を見ようが

美味しそうだなんて思わなかったのに。

なんでだろう…

あなた「…わからないや」

私は自分の右手を見つめた。

私の手の中には、愛しかった人の腕。

私があげた組紐…着けてくれてたんだね。

あなた「…大好きだよ、ありがとう」

















____________________

??side

有一郎「あなた…?」

悲鳴嶼「南無…なんということだ…」

実弥「こりゃ、どういうことなんだよォ…」

玄弥「あなた?」

あなた「うっ…うう…うぐっ…」

俺らが駆けつけたときには、

時透(弟)の刀を握りしめて泣き叫ぶあなたがいた。

有一郎「おい!あなた!無一郎はどこだ!」

実弥「落ち着け時透」

あなた「ううっ…し、死んじゃったぁぁ…」

有一郎「何やってんだよお前!

    ふざけるんじゃねえ!」

バシッ

時透(兄)があなたを蹴り飛ばした。

刀を握りしめたままあなたはぶっ飛んでしまった。

悲鳴嶼「落ち着け…時透…
   
    悲しいのは…よく分かる…南無阿弥陀仏…」

有一郎「うるせぇ!俺はあなたを殺す!

    許せねぇ!」

玄弥「お、落ち着いてくださいよ、時透さん…

   ここで仲間割れしないでくださいよ…」

実弥「…あなた、時透の死体はどこ行った」

一瞬空気がピキッと凍りついた。

死んだ

それは事実かもしれないが

死体が何処にも見当たらない。

あなた「…上弦に…食われました…」

あなたは姿勢をなんとか直して、

涙を拭いて立ち上がった。

あなた「私だけ残ってしまってごめんなさい…」

有一郎「……」

静かに、長い時間が流れた。

有一郎「取り乱した…すまん…

    俺の弟は…どうだった…?」

時透(兄)がようやく口を開いた。

あなた「…すごく、格好よかったです

     鬼殺隊の、柱の名に恥じないほど。」

あなたは涙と鼻水でグシャグシャの顔で

無理矢理笑顔を作った。

あなた「最期は…笑顔で送るべきですよね」

有一郎「そうだな…」

時透(兄)も無理矢理な笑顔を作った。

そうだ…まだ俺たちの戦いは終わってない。

実弥「じゃあ、そろそろ行くかァっ!?」

ザシュッ

有一郎「い、いたっ…」

実弥「なんだァ!?」

玄弥「!?」

悲鳴嶼「なんと…」

あなた「行くのは私だけです」

皆、足を切られた。

千切れたわけではないが、

立ち上がることは不可能だろう。

立ち上がったら…即大量出血で動けなくなるだろう。

斬っちゃいけないギリギリを攻めるように斬られている。

あなた「ごめんなさい。さよなら」

あなたはニヤリと笑う。

さっきの涙も鼻水も嘘のように乾いていた。

あなたは踵を返して何処かに歩いていく。

有一郎「待て!この鬼!」

実弥「許せねェ」

まるで俺たちの声は聞こえない。

とでも言うようにスタスタと歩いていく。

さっきあなたニヤリと笑ったとき、

頬に時透(弟)と同じ形の、真っ赤な痣が

一瞬だけ見えた。

あれは…?

去り行くあなたの髪には、浅葱色の組紐が輝いていた。














甘露寺「あなたちゃん!危ないわ!

    逃げっ!?」

あなた「逃げるのは貴女ですよ、危ないから」

止めに入った甘露寺蜜璃を投げ飛ばし、


冨岡「…やめっ!?」

あなた「やめません、貴方こそ気を付けてくださいよ」

止めに来た冨岡義勇を蹴り飛ばし、


栗花落「危ないよ?」

あなた「私のこといいわ、自分を守りなさい」

警告してくれた栗花落カナヲを退け、


伊黒「あぶなっ!?」

あなた「黙ってろ蛇、無駄死にするな」

庇ってくれた伊黒小芭内を逆に庇い、


善逸「あなたちゃん!ダメだよぉぉぉぉ!」

あなた「タンポポが喋るな、自分を守れ」

助けに入った我妻善逸を殴り飛ばし、


伊之助「おい!子分!あぶっ!?」

あなた「所詮野性動物のくせに、油断すんな」

よそ見していた嘴平伊之助に足をかけ、


炭治郎「あなた!ダメだ!」

あなた「…元気で、みんなのことよろしく」

助太刀してくれた竈門炭治郎を遠くに放り投げた。







無惨「…なんだ?」

鬼殺隊の奴等がどんどん減っていく。

殺している自覚はないのに。

いや、

無惨「お前は…」

あなた「久しぶりね、無惨」

無惨「月雅の娘か…」

バシバシと無惨の攻撃を弾きながら近づいてくる女、あなた。

無惨「なんだっ!?」

ガシッ

『霞の呼吸 漆ノ型 朧』

ザシュッ

あなた「…もーらった…」

無惨「こ、呼吸を…何故だっ…」

無惨の前髪を掴み、

頚を切り落とした。

そのまま大事そうに頚を抱えるあなた。

あなた「なんでかなぁ……」

無惨の体は

「頚を返せ」

とでも言うようにあなたに攻撃をしている。

だが、

あなたはもうそんなこと、どうでもよかったらしい。

片手で攻撃をさばき、

もう片手では無惨の頚をしっかり掴んでいる。

無惨「やめろ、離せっ」

あなた「喋るなよ」 

ガシッ、バシッ、バキッ、グジャッ

無惨の体を

蹴り、殴り、切り刻んだ。

…他人の刀で。

あなた「もういいか…」

炭治郎「…!?あなた!やめろ!」

善逸「早まらないで!」

あなた「もう…遅いんだ。」

遠くから何かを察した人たちが叫ぶ。

もう、戻れないから。いいよ。

あなた「…いただきます」

無惨「貴様…!?なにをっ!?」

ガブッ

グジャッ ビギッ バリバリッ メキメキッ グジャァ

甘露寺「あなたちゃん!貴女何してっ!?」

伊黒「やめろ、あなた…」

冨岡「そんなもの(食うんじゃない)…」

伊之助「あなたっ!何してんだ!」

カナヲ「…気持ち悪い」

あなた「来るなぁ!」

私は腹の底から叫ぶ。

私が、狂ったように無惨の頭を貪り始めたから

止めにこようとするの。みんな。

止めてくれるな。

私は…私は…

あなた「ははは…」

炭治郎「あなた…?」

あなた「はははハははハハはははははハハは…」

無惨「やめ…やめ、ろ…」

あなた「あんたは…不味いね

     あんたは、ね」

グジャグジャ グジュッ ジュルルルッ

あなた「はぁ…」

無惨の頭を…食べきってしまった。

あなた「不味かった…」

ぺっと口の中に残ったモノを吐き出す。

…歯かな?気持ち悪。

あなた「見てぇ!日の出だよ!

     日の出ぇぇぇぇ!」

背後から日がさしてくる。

横に転がっている無惨の体も、

力なく横たわり、灰になり始める。

まあ、体だけ逃げられても叶わないから、

私が踏んずけてるっていうのもあるけど。

あなた「…そろそろいかないとね」

私はぱっと顔をあげる。

皆がヒッと息を飲むのが聞こえた気がする。

私の顔はきっと、凄まじいことになっているだろう。

血みどろで

鬼の骨の髄まで貪り食った

本物の、鬼の顔。

あなた「不死川さぁぁぁん!ごめんなさぁい!

     嘘つきましたぁ!」

不死川さんいるかしら?

竈門炭治朗、我妻善逸、嘴平伊之助、

栗花落カナヲ、不死川玄弥、

冨岡義勇、甘露寺蜜璃、悲鳴嶼行冥、胡蝶しのぶ、

時透有一郎、伊黒小芭内、鱗滝真菰、鱗滝錆兎、

あっ、獪岳もいるじゃん。

いつの間に集まってくれたんだろうね?

視界に入るのはこれくらいかしら?

あとは知らない人かな?

いないかもしれない。

別にいいけど。

あなた「ごめんなさぁぁい!

     食べちゃいましたぁ!

     2人もぉ!」

そういうと私は自分のではない刀を頚に当てる。

人を喰った私は、生きてちゃいけないんだ。

もし私が死ぬのなら、

頚を斬られる日が来たのなら。

本当は君に斬られたかったな。

時透無一郎くん。

あなた「…ごめんなさい」

私は愛しい彼の刀を頚にあて、目を閉じた。

あなた「さようなら、みんな

     さようなら、あなた」

そして、私の体と頭はさようならした。
























あなた「…ここは」

真っ暗で、何にもないところ。

地獄に落ちるのかな。

悲しいな。

仕方ないな。

あなた「ふぅ…」

ため息を1つついた。

悔いはない。

地獄に落ちる覚悟は出来ている。

それ相応のことはした。

あなた「さあ、行くか」

私の後ろには大きな穴が空いていた。

…ここの下が地獄かしら?

そんな気がする。

あなた「行ってみようか」

1歩その穴に足を踏み出した。

体は、その穴に吸い込まれるように落ちる、はずだった。

ギュッ

あなた「…うん?」

誰かに腕を捕まれてしまった。

道を間違えただろうか?

恐る恐る顔をあげる。

あなた「無一郎…?」

無一郎「あなた…」

私の腕を掴んでいる。

私の足はとっくに宙に投げ出され、

腕だけを支えられている。

私の目の前には、

私が会いたくて、会いたくて、堪らなかった人。

あなた「…どうして?」

目から涙が溢れてくる。

私は…許されないことをしたのに…

なぜ彼は、前と変わらない笑顔をくれるの?

無一郎「大丈夫だよ、僕は怒ってないよ

    ありがとう、頑張ってくれて」

私の腕を掴む彼の手に、力がこもった。

あなた「…ダメ…だって私…食べちゃった…」

彼の血は…あまりにも甘い匂いがしていた。

私の、よくわからない欲をくすぐる匂いだった。

無一郎「…うん、いいよ」

とんでもない答えを返してきた。

あなた「なんでっ…」

無一郎「…だって僕のためでしょ?」

あなた「えっ…」

違う。

違う。

違う。

違う。

私は本能に負けただけ。

汚い。穢らわしい。

私の、人喰い鬼の本能に。

私の欲望を満たすために喰らった、それだけだ。

しかも、バレるのが怖くて、

貴方を余すところなく

血の一滴までくらい尽くしてしまった。

…許さないで。

無一郎「全部わかってるから。

    もういいんだよ」

あなた「よくないっ…」

無一郎「食べられた本人がいいって言ってんじゃん

    じゃあさ、」

あなた「はい」

無一郎「許してあげるから、

    僕と一緒に行こう?

    天国に」

あなた「…いいのかな」

無一郎「いいんだよ?

   僕が許すって言えば許されるの。

   君は君なりに精一杯頑張ったんだし。

   それに他に悪いことしてないんだし。

   だから、一緒に天国に行こう、ね?」

あなた「…はいっ」

もしも許されるのであれば。

私も彼と一緒にいたい。

行こう。

そう決めた。

無一郎「よかった、じゃあ、引き上げっ!?」

ガシッ、

あなた「あっ…」

無惨「いいか、あなた

   お前は醜い醜い人喰い鬼だ。

   罪なき人間を食ったお前は地獄行きだ。」

あなた「はなっ…離してよ…」

私の、足を無惨が掴んでいる。

無一郎「うっ…」

このままじゃ、彼も落ちちゃう。

彼を、地獄に連れていくわけにはいかない。

あなた「無一郎くん」

無一郎「あなた…諦めないでよっ」

彼の腕も声も震えてた。

あなた「私、貴方に会えて幸せだったよ。

     すごく楽しかったし。

     色んなもの貰ったし。

     何回も助けて貰ったし。

     …大好きだよ。

     だから…ここでお別れだよ。

     私は、あっちで罪を償ってくるから、ね?

     もし…生まれ変われたら、

     また私、会いに行ってもいいかしら?」

無一郎「やめて、やめてよあなた…

    そんなこと、言わないで…

    一緒に行こうよ…」

あなた「お願い。約束して」

無一郎「わかった!わかったから!

    絶対俺が会いに行くからっ!

    好きだよ、あなたっ」

あなた「ありがとう、無一郎…

     そう言ってもらえるだけで私、幸せだなぁ…

     でもね…

     次は、私も、鬼もいない世界で」

無一郎「あなたっ!」

あなた「幸せになってね」

パッと彼の手を振り払った。

きっともう、会えないんだから。

無一郎「あなたーーーーー!」

飛び降りてこようとしないで。

一緒に来ないで。

バシッ

無一郎「痛っ!?」

私の投げた桜の帯留めが彼の額を確かに捉えた。

私のコントロールはさすがね。

あなた「さよなら」

私は無惨とともに、

深い深い、地獄に落ちていく。

いや、待っているのは地獄なのかな…

もしかしたらもっと酷いところかも。

それでも、いいや。

私は

あなた「私、幸せだったし…







      それに


















     美味しかったよ、無一郎くん」




嗚呼、やはりもう戻れない。

私はもうマトモじゃない。

ニヤリと微笑み闇に溶けていく私を、

見ていたのものはいなかった。













badend《本能…?》

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