あの時と同じ。
周りは黒煙が渦巻くような真っ黒な世界。
暑さも寒さも感じない。
この世界には、あの美少年と私だけ。
ずっと待っていたのです。
私はあなたの救世主じゃないよ。
いいえ。
その瞳、間違いありません。
瞳だけじゃん!
我らはあなたに救われたのです。
我らをこれからも導いてほしい。
無理だって!
別人なんだってば!
やっと取り戻すことができた。
だから、話を聞けよ!
いつも全然聞かねーな!
…なぜわかってくれないのですか。
こっちのセリフ。
美少年が、苛立ったように私の腕を強く掴む。
その時、どこからか私を呼ぶ声が聞こえた。
この声…
汐恩くん…?
…あやつらのせいですか。
何?
あやつらが居なくなれば、我らと一緒に来てくれますか。
…あの人たちに何かあれば、私は生きてないと思って。
何故!?
どうして我らを残して死のうとするのですか!
何か勘違いしてるみたいだけど、私の生きる場所はあの人たちの居る場所なの。
もし、あの人たちが居なかったとしても、あなた達とは居られない。
あなたは裏切られた!
見捨てられたのです!
我らはずっと待っていたのに…。
そんなこと私に言われても。
私はあの人たちを信じてるの。
いずれ裏切られるんだとしても、今の私のこの選択は変わらない。
成体の表情から怒りが少しずつ抜け、違う感情が見えてくる。
悲哀?いや、これは…後悔?
…あなたが火刑に処されるところを見ました。
見た?
…え、火あぶりにされるのを?
はい…。
あなたが死んでいくのに、何もできない。
それがどれだけ苦しいかわかりますか。
喉から血が出るほど叫んでも、目の前の景色は何も変わらない。変わってくれない。
あなたが生きていてくれるなら、どんな事だってしたのに。いっそ、私が代わりたかった。
我らを救ったあなたを見捨てて苦しめておいて、奴らはのうのうと生き続けていたのです。
許せなかった…!
苦しそうな彼を見て、胸が痛んだ。
そうか、彼は私を救いたかったんだ。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。