『吸血鬼ぃ?!エッマジで翼生えてんじゃん!』
「甲斐田。 お前白銀の何か持ってるか?」
『白銀?いや、持ってないです・・・あ、いや精製すればいけるかも。弦月!』
『もう作った。』
「それで心臓潰して、首を落とせ。そうすりゃどの吸血鬼でも死ぬ。」
『えっ殺すんですか?!』
驚いた声を出すのはその場に居た者で唯一現世の人間である加賀美だった。
『まぁ、殺さないと暴れますし。長尾!』
『あいよ!』
ザシュッという斬撃の音と、ゴトッという、首が落ちた音がする。
『灰になった?!えっラノベ・・・!』
「吸血鬼は白銀製の武器じゃないと死なねぇ。十字架とかニンニクとか、御伽噺で言われているようなやつは全部嘘だ。もっかい言うぞ。白銀以外では死なねぇ。甲斐田。その武器全員分作れるか?」
『えっと、時間さえあれば。護符ならかなり持ってますし。』
『作って配りますか?』
「ん。そうしてくれ。」
普段比較的おちゃらけた雰囲気の葛葉が珍しく真面目に指示を出している。
ようやく全員が、これが生死の関わることだと理解した。
『転送しますね。 葛葉さんはいりますか?』
「俺と叶は持ってるからいい。」
「え?」
叶は困惑する。
昔ならまだしも、今、平和な現世で武器は必要ないから持っていない筈だが。
「・・・お前の使ってた武器は、全部俺が持ってる。死んだ後、全部回収したから。」
「なぁに、くーちゃん僕の形見とっててくれたの?」
「その呼び方ヤメロ渡さねぇぞ」
「はいはいありがとうね。」
葛葉は簡易ポータルを開き、中から銃を一丁と、小刀を一つ出した。どちらも叶が昔使っていた物だ。
「懐かしいなぁ。また使うとは思ってなかったけど」
「そりゃ俺もだよ。取っとくもんだな」
使うと思っていなかった、と言いつつも、何年も昔に使っていた武器はどちらもとても丁寧に手入れされていた。 どれだけ葛葉が大事に持っていたかが現れていた。
『街中のカメラのハッキングできたよ。 今から送る地図に敵のいる所マークしてるから。』
『うぉお、さすがハッカー。』
添付されたサイトに飛んで、地図を開くと、複数の赤い点が都市に散らばっていた。 中でも、スカイツリーの所には赤い点が集結していた。
『ゲームだと、この赤い点塗れのスカイツリーにラスボスいますよねー。実際魔王もそんなでしたし。戦ってないけど。』
そう言ったのはエクス・アルビオだった。
『事務所の中には敵が居ないっぽいですね。事務所を拠点にして行動する方がいいかもしれません。』
冷静にそういったのは第1期生の月ノ美兎だった。
『ENの人達と合流しましたー!えっと、闇ノシュウさん、アイクさん、ヴォックスさん、メロコさん、ルカさん、サニーさん、アルバーンさんが居ます!』
『怪我人は今の所無いです!』
『皆さん今全員屋内なんでまだマシですけど、屋内に入られるまで時間の問題だと思います。なので、できるだけ固まって行動して事務所まで行きましょう。』
『非戦闘員の私達は武器があっても戦えませんからね・・・。近くに戦う人がいたらその人と一緒に行くようにしましょう。私は近くにローレンさんが居るっぽいので、合流しましょう』
『まじっすか。了解っス。あ、アクシアが航空機出すっぽいんで待って下さい。』
『おぉ、かっこいい。』
『むぎはガク君達と合流するよぉー』
『そうですね。社長、貴方戦えないとか言ってましたけど僕達一応四神になれるんですよ。忘れてません?衣装が配布されてないからって言っても公式から出されたやつなんで使えますよ』
『えっ、あ、本当だ!凄い!!』
『あ、俺もや!見て見てあきにゃ!まゆゆ!』
『うわぁぁカッコ良!!!』
『いや社長ガンダムみたいなのもあったでしょ』
『確かに!えっ、私強いかもしれない!!』
『取り敢えず非戦闘員は待機で、戦闘可能な人はその人達を回収しながら動きましょう。』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!