あなた sitenn
諏訪 さんが授けてくれた部屋で深い眠りにつき 、目が覚めた翌日の早朝 。
着替えを終え 、少し体を動かそうと思い戸を開いた途端 、目の前に 亜也子 が 。
無論 、突然のことに驚いて腰を抜かした 。
亜也子 の背後からついでかのように「 あ 、おはようございます 。 」と言い添える 弧次郎 。
…昨日まで私を警戒していた子供が 、こんなにキラキラとした瞳でこちらを見つめてくる変わりように 、思わず首を傾ける 。
2人だけでなく 、他の人も含めてそうだ 。
この時代の日本には洋服など無く 、男女問わず和服を身に着けている 。
まず 、ズボンという概念どころか 、チャック…ファスナーすらもない世の中 。
異国で作られたかのような黒く珍しい材質の服を着ていたら 、誰しも私を観察し 、不審に思うだろう 。
…まぁ 、 諏訪 さんは外見では無く 、私の力に警戒していたみたいだし 、偏見を持たない人もいるもんだ 。
ははは 、と呆れ気味に言う 弧次郎 の横から 、物凄い勢いで首を縦に振る 亜也子 。
…この子の言うことに 、嘘は無さそうだ 。
だとすると 、私へのあの眼差しや距離感は……遠慮だったのか 。
柔らかい表情でそう言う 弧次郎 。
……この子達も 、偉いよなぁ〜…
幼いながらにして主君に仕え 、一生忠誠を誓う 。
この時代にいると 、うちのクソ兄貴が馬鹿みたいだ 。
…どんなに抜けてる所があっても 、兄貴は“ 最強 ”として称えられていた 。
どんなに馬鹿なことをしていても 、私は兄貴の“ 努力 ”の量と“ 才能 ”を知っている 。
知っているからこそ 、追いつくことも 、隣に立つことも叶わない 。
“ 六眼 ”と“ 無下限呪術 ”を生まれ持っただけで運がいいが 、私には兄貴ほど恵まれてはいなかった……
ほら 、すぐ何かと思考が兄貴に結びつけるように進んでしまう 。
私の悪い癖だ…比べては絶望し 、比べられては嫌気がさす 。
これ以上考えると更に自分が惨めになってしまう気がして 、気を紛らわすように2人の頭をわしゃわしゃと撫でる 。
諏訪 さんからの励ましがどんどんとマイナスな思考へと吸い込まれて行く 。
っ…ダメダメ 、ネガティブ思考になってしまう 。
メンタルは強く 、ポジティブに!
明るく見せるように 、大袈裟に声を上げる 。
…こんなやり取りを見ていた少女が1人いた 。
子供は鋭く 、勘がいい 。
探るような視線に気づかず 、私は 亜也子 に手を引かれてその場を後にした 。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。