第10話

【 玖 】
1,326
2025/04/12 14:00 更新


  あなた sitenn


亜也子
 一緒に稽古をしてくれませんか!? 


  諏訪 さんが授けてくれた部屋で深い眠りにつき 、目が覚めた翌日の早朝 。
 
 着替えを終え 、少し体を動かそうと思い戸を開いた途端 、目の前に 亜也子 が 。
 
 無論 、突然のことに驚いて腰を抜かした 。


あなた
 …えっと…… 
いつからそこにいたの?
 
亜也子
 つい先程です 。 
 
弧次郎
 …驚かせて申し訳ありません 。 


  亜也子 の背後からついでかのように「 あ 、おはようございます 。 」と言い添える 弧次郎 。
 
 …昨日まで私を警戒していた子供が 、こんなにキラキラとした瞳でこちらを見つめてくる変わりように 、思わず首を傾ける 。


あなた
 自分で言うのもなんだけど… 
もう私を警戒しないの?
 
あなた
 見慣れない衣を着ていて 、 
黒い目隠しをしている白髪はくはつの女 。
 
あなた
 2人にとっては 、 
だいぶ不審者だと思うんだけど…?


 2人だけでなく 、他の人も含めてそうだ 。
 
 この時代の日本には洋服など無く 、男女問わず和服を身に着けている 。
 
 まず 、ズボンという概念どころか 、チャック…ファスナーすらもない世の中 。
 
 異国で作られたかのような黒く珍しい材質の服を着ていたら 、誰しも私を観察し 、不審に思うだろう 。
 
 …まぁ 、 諏訪 さんは外見では無く 、私の力に警戒していたみたいだし 、偏見を持たない人もいるもんだ 。


亜也子
 そりゃ… 
最初は怖い人だな〜って 。
 
弧次郎
 目隠しを着けていると 、 
今にも襲って来そうで怖かったんすよ 。
 
弧次郎
 白髪はくはつに 、黒いころも
おまけに謎の袋ときたら 、
流石に警戒せざるを得ないです 。


 ははは 、と呆れ気味に言う 弧次郎 の横から 、物凄い勢いで首を縦に振る 亜也子 。


亜也子
 でも 、 
以前 あなた 様の瞳を見せていただいた
時から確信しておりました!
 
亜也子
 貴女様の淡い瞳と同じように 、 
心優しいお方であられるのだと……!


 …この子の言うことに 、嘘は無さそうだ 。
 
 だとすると 、私へのあの眼差しや距離感は……遠慮だったのか 。


弧次郎
 第一 、 
こちらは主君あるじの命を救って頂いた身 。
 
弧次郎
 若を庇っていた貴女を 、 
警戒する理由などありません 。


 柔らかい表情でそう言う 弧次郎 。
 
 ……この子達も 、偉いよなぁ〜…
 
 幼いながらにして主君あるじつかえ 、一生忠誠を誓う 。
 
 この時代にいると 、うちのクソ兄貴が馬鹿みたいだ 。
 
 …どんなに抜けてる所があっても 、兄貴は“ 最強 ”としてたたえられていた 。
 
 どんなに馬鹿なことをしていても 、私は兄貴の“ 努力 ”の量と“ 才能 ”を知っている 。
 
 知っているからこそ 、追いつくことも 、隣に立つことも叶わない 。
 
 “ 六眼 ”と“ 無下限呪術 ”を生まれ持っただけで運がいいが 、私には兄貴ほど恵まれてはいなかった……


あなた
 …2人とも素直だなぁ〜! 
 
亜也子
 わっ 、! 
 
弧次郎
 ちょ…っ 


 ほら 、すぐ何かと思考が兄貴に結びつけるように進んでしまう 。
 
 私の悪い癖だ…比べては絶望し 、比べられては嫌気がさす 。
 
 これ以上考えると更に自分が惨めに弱くなってしまう気がして 、気を紛らわすように2人の頭をわしゃわしゃと撫でる 。


あなた
( 私は 、ちゃんと振る舞えてる…… )














あなた
( ……ちゃんと… 
 “ 五条悟天才血筋 ”として……? )


  諏訪 さんからの励ましがどんどんとマイナスな思考へと吸い込まれて行く 。
 
 っ…ダメダメ 、ネガティブ思考になってしまう 。
 
 メンタルは強く 、ポジティブに! 


あなた
 よし 、じゃあ稽古しようか! 


 明るく見せるように 、大袈裟に声を上げる 。














 …こんなやり取りを見ていた少女が1人いた 。
 
 子供は鋭く 、勘がいい 。


( ……… )


 探るような視線に気づかず 、私は 亜也子 に手を引かれてその場を後にした 。


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