あなた sitenn
荷物の中に入れていたスマホとモバイルバッテリーを手に持ち 、はぁ…と重いため息をつく 。
困ったものだ…この時代に留まってから一ヶ月はとうに過ぎている 。
前に 、スマホが使えないか試してみたが…案の定 、圏外で使えなくなっていた 。
もしかしたら他にも使えるものがあるかもしれないと思い 、今に至る 。
完全に忘れかけていた存在を思い出し 、ニコリとそちらに微笑む 。
ソレは 、太い木にめり込んでいる特級呪霊 。
先程吹き飛ばしたが 、戦う気力が無さそうだったので放置した 。
おもんな 。
そうボソッと呟き 、斬撃を放つ 。
斬撃は逸れることなく呪霊に命中 。
呪霊は声も出さず 、ハラハラと消えて行ってしまった 。
諏訪 さんに呪術界のことを教えてから数日は過ぎた 。
この調子じゃ 、食料どころか 時行 の命も危うい 。
……それに…
日に日に強さが増しているため 、早いところ祓ってしまいたい 。
だが…
私が国を滅ぼせる力を持っている 、ということを明かしてしまったためか 、 諏訪 さんが私を 時行 に近寄らせようとしないのだ 。
諏訪 さんが言う“ 神眼 ”を使って未来を見れば済む話 。
しかし 、未来が変わるかもしれないとうるさいのだ 。
その言動は 、私を警戒しているということに値する 。
うん 、そういうことにしとこ 。
兄貴のようにはなりたくないが 、ポジティブなところは 、少しばかり見直さなければならない 。
廃屋へ戻ろうとすると 、少し離れた所に呪いの気配がした 。
時行 のものでもない 。
強さから見積もって 、所詮一級相当……
ついでに祓っとくか 、と軽い気持ちでそんなことを考え 、気配のする丘へと足をゆっくり進めた 。
……その行動が吉と出るか 、凶と出るか否か…………
丘へ行くと 、嬉しそうな子供達と保護者のような 諏訪 さん 、そして 時行 の背後に首と胴が離れ離れになった死体が 。
何をしていたのかは分からないが 、お目当ての呪霊が見当たらない 。
「 時行 様の最初の獲物でございまする〜! 」と元気に言う 諏訪 さんを軽く受け流し 、辺りを見渡す 。
視界には 時行 と…取り憑いている呪霊 。
嬉しそうにはしゃぐ 亜也子 に 、一人冷静な 弧次郎 、ニコニコとその二人を見つめる 雫 。
そして刀を持ってフラフラと立っている、首が無い死体……
刀を持ったソレは 、ゆらりゆらりと 時行 の方へ歩み寄る 。
私がそう大声で言い放つと 、 時行 は反射的に後ろを振り返った 。
私は急いで 時行 の方へ走り出す 。
ちゃんと急いで来て 、辺りを偵察していればこんなことには……!
そんなことを後悔しても 、今更何も起きない 。
刀を振りかざすソレと 、恐怖で動けない 時行 の間に入って攻撃を防ごうと 、めいいっぱい足で地面を蹴飛ばす 。
___私の視界には 、刀を振りかざしたソレと 、噴射するように飛び散る紅色の液体が映った 。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。